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不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
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瑕疵担保責任免除特約の有効性
*本項は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。
【事例】瑕疵担保責任免除特約の有効性
不動産販売業者が(宅建業者)が,所有する住宅街の土地(更地)について,「引渡後2年を経過した時は,買主は物件の瑕疵による契約解除及び損害賠償の請求ができない」との特約を定めて「住宅用地」として顧客に販売した。買主たる顧客は,この土地に住宅を新築して居住する予定であった。土地の引渡直後,新築工事施行中に地中障害物が発見され,買主はこれを除去するのに新築工事費とは別に500万円の出費を要したが,売主に対し損害賠償請求をしたのは,引き渡しから1年半後であった。この場合,売主は顧客に対し損害賠償義務を負うか。

【解説】多湖・岩田・田村法律事務所/平成31年3月版
【1】売買目的物に隠れた瑕疵(かし)があった場合,これにより買主に損害が生じれば,原則として,買主は売主に対し損害賠償請求をすることができますし,当該瑕疵により売買契約を締結した目的を達成できない場合には,契約自体を解除することができます(民法566条,570条)。したがって,頭書事例では,原則として,売主は,地中障害物の撤去費用を買主に対し支払う義務を負いますし,例えばこれが簡単に除去できない高濃度のヒ素や放射線等を含む物質であれば,「住宅用地」としての目的を達成できませんので,売買契約を解除され,売買代金を返還する義務を負います。
【2】このような売主の負う責任を「瑕疵担保責任」(かしたんぽせきにん)といいます。「瑕疵」(かし)とは,要するに「欠陥」のことですが,「瑕疵」に当たるか否かは,契約の目的との関係で相対的に決まります。例えば,土地を「住宅用地」としてではなく,「資材置場」として売却したような場合には,地中残置物は「瑕疵」とは認められない可能性があります。なお,これまでは「瑕疵」は「隠れた瑕疵」(旧民法570条)すなわち,買主が過失なく知らなかった(善意無過失の)ものに限られていましたが,新民法566条では「契約の内容に適合しない目的物」としか規定されていませんので,買主が売買契約時に瑕疵を知っていたとしても,売主は瑕疵担保責任(新民法では債務不履行責任となります)を免れません(もっとも,契約締結時点で買主が知っていた場合は,瑕疵を承諾し代金に織り込まれている(契約内容になっている)と解される可能性があり,「契約の内容に適合しない」とはいい難くなるため,実際上は担保責任を負う可能性は低いと思われます)。また,「瑕疵」という言葉も一般の方にはその意味が非常に分かりにくい表現であったため,新民法566条では,「契約の内容に適合しない」(=契約不適合)という文言に変わりました。
【3】買主が売主に対し「瑕疵担保責任」(新民法では契約不適合責任あるいは債務不履行責任)を追求するには,「契約の解除又は損害賠償の請求は,買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない」(旧民法566条3項)とされ,さらに宅建業法40条では,「566条3項に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き,同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない」とされていることから,実務上,宅建業者が中古住宅を売却する場合には,しばしば当初事例のような期間限定特約が見受けられます。なお,宅建業法40条は,売主が宅建業者以外の場合または買主が宅建業者の場合には適用されません(宅建業法78条2項)
【4】新民法566条では「買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないとき」は,その不適合を理由とする損害賠償や解除の請求はできないと規定しているのみで,旧民法566条3項のように「1年以内にしなければならない」とはされていません。これは何を意味するかというと,これまでは,1年以内に損害賠償請求か解除かを選択して意思表示までしなければならなかったのに対し(損害賠償請求につき【最高裁平成4年10月20日判決】,解除権行使につき【東京地裁平成21年10月1日判決】(消費者法ニュース82号267頁),金山直樹編『消滅時効法の現状と改正提言』107頁・商事法務参照),新民法では,「不適合」(=瑕疵)を売主に「通知」さえすれば良いことになったため,買主にとっては,より責任追及が容易になったと言えるでしょう。
【5】頭書事例のとおり,宅建業者と消費者との売買契約では,「引渡後2年を経過した時は,買主は物件の瑕疵による契約解除及び損害賠償の請求ができない」との条項が設けられるのが通常ですので,これだけだと,瑕疵(契約不適合)を発見してから1年経過していても,引渡後2年以内であれば,瑕疵担保責任の追及が可能とも解することができます(なお,【東京地裁平成21年10月1日判決】は,引渡後2年の特約があった事例で瑕疵を発見してから1年経過した場合は瑕疵担保責任追及できないと判示していますが,他方で,【さいたま地裁平成22年7月23日判決】は,「瑕疵担保責任の期間を,本件各土地の引渡日から2年間とする本件特約があるのであるから,民法570条の適用は排除されていると解すべき」とし,瑕疵を発見してから1年経過していても,引渡後2年以内であれば,瑕疵担保責任の追及が可能との解釈を採っています)。
【6】そこで,念のため,多湖・岩田・田村法律事務所では,これに加えて「引渡後2年経過前であっても,瑕疵を発見してから1年以内に通知しない時は,買主は物件の瑕疵による契約解除及び損害賠償の請求ができない」と規定しておくことで,後々のトラブルを可及的に防止できることを助言しています。
【結論】
以上より,頭書特約では,「瑕疵を発見してから1年経過していても,引渡後2年以内であれば,瑕疵担保責任の追及が可能」と解せますので,売主は,地中障害物撤去費用相当額の損害賠償請義務を負うと考えられます。


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