HOMENEWS交通アクセスEnglish
不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
〒102-0083 東京都千代田区麹町4-3-4
宮ビル4階・5階(受付)
電話 03-3265-9601
FAX 03-3265-9602

info@tago-law.com
事務所紹介弁護士紹介取扱業務ご依頼方法と費用不動産相談
賃貸相談 売買相談
敷金(保証金)返還義務
転貸借の効力
賃料増額・減額の請求
更新拒絶の正当事由と立退料
法定更新時の更新料
借地借家法の適否
賃借人の原状回復義務の範囲
賃貸人の修繕義務の範囲
連帯保証人の責任の範囲
仲介業者の責任と説明義務
残置物処分の適法性
明渡義務の完了時期
債務不履行解除の可否
所有者変更と賃借人の承諾の要否


 借地借家法の適否
*以下は,多湖・岩田・田村法律事務所としての法的見解を簡略的に紹介したものです。個々の事案に応じて結論は様々ですので,当該事件の解決にとっていかなる方法が最も相応しいかについては,その都度,弁護士にご相談下さい。

【事 例】 社宅契約との区別
社宅契約における「職員でなくなった場合には社宅の使用権限を失い2週間以内に退去しなければならない」との条項の有効性。
【解 説】 <多湖・岩田・田村法律事務所/平成25年1月版>
<1> 借地借家法は平成4年に制定された法律で,ひと言でいえば「借主を保護する法律」といえます。例えば,期間の定めのない賃貸借契約の場合,貸主からの解約予告は民法では3か月前に行なうこととされていますが(民法617条1項2号),借地借家法では6か月前にしなければならないとか(借地借家法27条1項),正当事由がなければ解約を主張できないなど(借地借家法28条),借主にとって非常に有利な条文が設けられています。逆にいえば,貸主は,一旦貸してしまうと,しばしば,これを返してもらうのに苦労するわけです(この点については「更新拒絶の正当事由と立退料」参照)。
<2> 借地借家法は,賃貸借契約に適用される法律ですので,雇用契約,使用貸借契約(無償貸与契約),業務委託契約などには,借地借家法は適用されません。そこで,当該契約が「賃貸借契約」なのか否かが問題となることがあります。
頭書事例は,雇用契約の一体として,会社がマンションを社宅として各従業員に貸すという社宅契約ですが,これに借地借家法の適用があるならば,解雇等で職員の身分を失った場合でも,当該従業員を退去させる場合には6か月前の解約予告や正当事由が必要となります。
<3> これについて,【千葉地裁平成3年12月19日判決】は,以下のように判示しました。
(1)宿舎及び寮への居住の指定を受けた者が支払う所定の使用料金を一般人が右宿舎及び寮と同一の立地条件にある同一の構造,規模,設備等で同一の程度の建物を賃借する場合における賃料と対比すると,右使用料金は右賃料の数分の一である。

(2)右の事実によれば,被告らが支払う本件各宿舎の使用料金は,本件各宿舎の使用・収益の対価である賃料ではなく,公共企業体である国鉄の職員等及び主としてその収入により生計を維持する者として国鉄が所有しかつ管理する厚生施設を利用する料金に過ぎないというべきであるから,被告らが本件各宿舎を利用する法律関係をもって賃貸借とすることはできない

(3)本件各宿舎について公舎基準規程の規律を受ける特殊な法律関係に基づく利用権を取得したに過ぎないというべきである。
<4> また,【最高裁昭和30年5月13日判決】は,「一般の家賃とは比較にならないいわゆる維持費にも足らない程度の低廉なものであつて,家屋使用の対価たる賃料と目し得るほどのものではないことが認められる。右認定の事実関係に徴すると,本件社宅の使用関係は通常の賃貸借関係とは異り,会社の従業員たることを前提とする特別の関係であつて,その関係は社宅使用者が会社の従業員たる身分を失えば当然終了するものと解するを相当とする」とした原審(【仙台高裁昭和28年6月10日判決】)の結論を維持しました。
<5> また,【最高裁昭和31年11月16日判決】は,世間並みの家賃相当額を使用料として支払っている等の事情から,賃貸借契約であるとして,「解雇されたときは雇傭契約終了のときから三ケ月後に,当然明渡をなす」との特約を借家法6条(現・借地借家法30条)により無効とした原審(【東京高裁昭和29年10月30日判決】)の結論を維持しました。
<6> 最近でも,【東京地裁平成28年2月9日判決】が,「本件各建物の賃料相当額は本件建物1につき月額9万1000円,本件建物2につき月額30万5559円であったところ,被告らはそれぞれ寮費として月額5万円を支払っていたにすぎないことからすると,いずれの建物についても,対価的な均衡を欠くものであって,賃貸借契約を締結していたということはできず,上記関係は,原告における従業員としての身分を前提とした使用貸借契約であったというべきである」と判示しています。
【結 論】
以上より,頭書事例の場合,社宅の賃料が近隣相場の数分の1(少なくとも2分の1以下)であれば,賃貸借契約とはいえず借地借家法は適用されませんので,事前に社宅基準規程や雇用契約書等で「職員でなくなった場合には社宅の使用権限を失い2週間以内に退去しなければならない」等と定めておけば,退職した従業員を早期にマンションから退去させることが可能であると思われます。
【補 足】
過去に,多湖・岩田・田村法律事務所でも,顧問先の従業員(期間雇用)が期間満了後も契約更新を主張して毎月の給与を請求し,さらに社宅(無償貸与)にも居座り続けたというケースで,雇用契約終了確認請求訴訟を提起する際,念のため社宅明渡請求併合して訴訟提起したことがあります。
この事件では,こちら側が勝訴しましたが,案の定,判決後も従業員は社宅を明け渡さなかったため,やむを得ず建物明渡強制執行を断行しました(もし,明渡請求を併合して訴訟提起していなければ,雇用契約に関する争いが決着したあと,さらに社宅明渡請求のためもう一度訴訟を提起しなければならなくなり,時間も労力も無駄に費やすところでした)。
社宅住まいの従業員と退職や解雇云々で揉めているときは,念のため社宅明渡請求訴訟についても検討しておくべきでしょう。
余談ですが,会社が,従業員個人と社宅契約を締結する場合,「通常の賃貸料の額(月額)」と当該従業員が負担する社宅費用との差額部分が「経済的利益」として課税対象とされますが,ここでいう「通常の賃貸料の額(月額)」は,
当該年度の家屋の固定資産税の課税標準額(いわゆる固定資産評価額)×0.2%+12円×家屋の総床面積÷3.3+当該年度の敷地の固定資産税の課税標準額(土地の場合は固定資産評価額と必ずしも一致しません)×0.22%
で算出します(所得税基本通達36-41,36-45)
従って,例えば家屋の課税標準額が1200万円,敷地の課税標準額が2000万円,家屋の床面積が50平米の場合,
1200万円×0.2%+12円×50÷3.3+2000万円×0.22%=6万8181円(通常の賃貸料の月額)
ということになります。
もちろん,この「通常の賃貸料」は借地借家法の適否には法的に直接には影響しませんので,「通常の賃貸料」を下回るからと言って当然に社宅契約になる(借地借家法が適用されなくなる)わけではありません。



【事 例】 使用貸借契約(無償貸与)との区別
賃料は年間の固定資産税相当額のみとの約定で土地付建物を貸与した場合における借地借家法の適用の有無。
【解 説】 <多湖・岩田・田村法律事務所/平成24年10月版>
<1> 頭書事例のように,借主の負担が,借り受けている土地建物にかかる固定資産税のみという場合,当該契約が賃貸借契約(民法601条)なのか,それとも無償貸与契約(民法593条)なのかが問題となります(賃貸借契約であれば借地借家法が適用されます)。
<2> まず,【最高裁昭和36年1月27日判決】は,「建物の占有者が建物の敷地の地代及び建物の固定資産税を支払つたとしても,右の如き地代及び固定資産税はいずれも建物の維持保存のために当然に支出ぜらるべき費用ではあるが,右は民法595条1項の『通常の必要費』に属するものというべきである」としています。
<3> そして,【最高裁昭和41年10月27日判決】は,「建物の借主がその建物等につき賦課される公租公課を負担しても,それが使用収益に対する対価の意味をもつものと認めるに足りる特別の事情のないかぎり,この負担は借主の貸主に対する関係を使用貸借と認める妨げとなるものではない」とし,【名古屋地裁平成2年10月31日判決】も,「賃貸借契約と認められるためには,右地代が本件土地の利用の対価としての性格を有していなければならないが,賃借目的土地に賦課される租税はその通常の必要費に過ぎず(民法595条1項参照)〜右地代が本件土地の利用の対価としての性格を有していたものとは認められない」とし,いずれも賃貸借契約とは認めず,使用貸借契約(無償貸与)であると判示しました。
【結 論】
以上より,頭書事例のような契約は賃貸借契約とは認められず,借地借家法は適用されません。



【事 例】 業務委託契約との区別
ビルのオーナーであるA(委託者)が飲食店経営者B(受託者)に対し,ビル一階部分を使用してレストランを開店するよう委託し,「BはAに対し毎月の店の売上の中から20万円を支払い,残りを委託料(Bの報酬)として取得できる」「光熱費その他の経費はBが負担する」「店の名称,従業員の採否,店内のレイアウト等はBが決定する」との「業務委託契約」を締結した場合,借地借家法の適用はあるか。
【解 説】 <多湖・岩田・田村法律事務所/平成24年10月版>
<1> 実務上,借地借家法の適用を免れようとして,実質は賃貸借契約であるにも拘わらず,形式的に委託者と受託者との間で「業務委託契約」を締結した形にして,借地借家法の適用を免れようとすることがありますが,仮に,形式上は(契約書の題名は)「業務委託契約」であっても実質的に「賃貸借契約」と評価される場合には,なお借地借家法が適用されます。
<2> すなわち,受託者の業務内容について委託者が受託者を指揮監督する関係にあるなど,依然として委託者が当該店舗の使用につきイニシアティブを有しているといえる場合には,業務委託といえますが,受託者が当該店舗の収入,支出について自己の計算,責任でこれを行い,委託者においてこれを指揮監督する関係に全くない場合には,受託者が独立して当該店舗を使用,収益していると判断され,委託者は受託者に対して賃貸したものとみなされます。
<3> この点,【東京地裁平成7年8月28日判決】は,(1)受託者が行う美容院店舗の名称については,受託者が決定し,委託者が全く関与しないものとされていること,(2)受託者が毎月定額の運営費を委託者に支払うものとされていること,(3)店舗の毎月の光熱費については所有者が受託者に対し請求し受託者がその責任において支払うものとされていること,等から同契約の実質は賃貸借契約であると判断しています。
<4> 他方,【東京地裁平成15年10月29日判決】は,(1)受託者が建物を賃借して自ら営業するとすれば,飲食店の営業許可も必要になるところ,その営業許可を受けているのは,委託者であって受託者ではないこと,(2)委託者が自ら営業を続けていた場合であっても月額20万円以上の収入を得ることができたと認められること,等から同契約の実質は業務委託契約であると判示しています。
【結 論】
以上より,頭書事例では,BがAに支払う毎月の金額が売上に連動せず定額(20万円)であること,経費一切はBが負担するとされていること,人事経営もBの判断に任されていること,等から,Aにはレストラン経営につきイニシアティブがあるとは言えず,BにおいてAの意向に左右されず独立してレストランを経営しているといえることから,AB間の「業務委託契約」は実質的には賃貸借契約といえ,借地借家法が適用される可能性が高いといえるでしょう。
なお,旧借家法下の判例ですが,【東京高裁昭和51年8月31日判決】は,「借主は貸主の要求あり次第直ちに明渡す」との条項は,「借主に不利な特約として効力を生じない」としつつも,解約申入の「正当事由の有無の判断に全く無関係なものとはいいがたい」旨判示しており,形式上,業務委託契約の形を採り,契約更新されないことが約定されていた場合,当該約定は賃借人に不利なものとして借地借家法30条により無効でも,更新拒絶の正当事由を基礎付ける一事情として斟酌される可能性はあるといえます。


 業務委託性チェック表 <多湖・岩田・田村法律事務所/平成28年6月版>
〇⇒業務委託契約性を強める(=賃貸借契約性を弱める)
×⇒業務委託契約性を弱める(=賃貸借契約性を強める)
参考裁判例
契約書の表題が「委託契約」「委任契約」となっている。【最判昭和32年10月31日】
【東京地判平成21年4月7日】
通常賃貸借契約に付随する「権利金」や「敷金」等の授受がない。【大阪地判平成4年3月13日】
家主の取得する金員が売上金の割合をもって定められている。【大阪地判平成4年3月13日】
売場の設定・変更等において家主の強い権限が及んでいる。【大阪地判平成4年3月13日】
営業許可を受けているのが家主である。【東京地判平成15年10月29日】
家主が自ら営業した場合であっても同等以上の収益を得ることができたと認められる。【東京地判平成15年10月29日】
借主の業務が家主の指示・監督の下に行われている。【東京地判平成15年12月19日】
×家主が借主から保証金を取得している。【東京地判平成8年7月15日】
×借主の収益にかかわらず定期に固定金額が家主に支払われている。【最判昭和39年9月24日】
【東京地判平成7年8月28日】
【大阪高判平成9年1月17日】
【東京地判平成21年4月7日】
×借主が自身の名義と計算において経営を行っている。【大阪高判平成9年1月17日】
【東京地判平成21年4月7日】
×家主が業務上の指示等の権限を有しておらず,借主が家主の指示を受けることなく経営している。【東京地判昭和55年1月31日】
【東京地判昭和58年9月30日】
【東京地判平成8年7月15日】
×借主自身の意思と営業資金をもって経営の一切を行っている。【東京地判昭和55年1月31日】
×店舗の名称については借主が決定し家主が全く関与しないものとされている。【東京地判平成7年8月28日】
×店舗の毎月の光熱費については家主が借主に対し請求し借主がその責任において支払うものとされている。【東京地判平成7年8月28日】
*上記チェック表は過去の裁判例から一定の基準となる要素を列挙したものに過ぎず,これが絶対的な基準となるわけではありません。また,「〇が何個以上なら業務委託契約になる」というように一律に決められるわけではなく,あくまで一応の目安に過ぎません。



【事 例】 レンタルオフィスとの区別
毎月「利用料」と「追加サービス料」(バーチャル秘書サービス,電話応答サービス等)のみ発生し(電気代は利用料に含まれる),電話回線,インターネット回線,会議室,OA機器,給湯室等は他の部屋とシェアするシステムのいわゆる「レンタルオフィス」は,借地借家法の適用される「建物の賃貸借」と言えるか。
【解 説】 <多湖・岩田・田村法律事務所/平成30年6月版>
<1> 借地借家法は「建物の賃貸借」(借地借家法1条)に適用されるものですので,同法上の「建物」といえるためには,原則として概ね次の3つの要件をいずれも満たす必要があると考えられています(判例タイムズ677号「昭和62年度主要民事判例解説」100頁等)。

「建物」の構造上の独立性
建物の構造が「障壁等によって他の部分と区画され独占的支配が可能な構造・規模」を有するか否か(【最高裁昭和42年6月2日判決】)。
なお,「独占的支配(独立的支配とも)」とは,例えば出入口を別個に有しているか否かや施錠方法等で判断されます(【大阪高裁昭和31年5月21日判決】【神戸地裁昭和28年12月10日判決】)。

「建物」の使用が主眼であること
契約の主たる目的(主眼)が建物の価値(効用)の利用にあるか否か(【東京地裁昭和61年1月30日判決】
なお,「主眼」とは,それ自体有用かつ主眼達成のための必要不可欠な建物か否かで判断されます(【東京高裁昭和62年5月11日判決】

「建物」の使用上の独立性
「独自の経営判断と計算おいて営業している」か否か(【東京地裁平成8年7月15日判決】
<2> まず,上記(「建物」の構造上の独立性)の観点に基づくと思われる裁判例としては,【東京高裁平成元年7月6日判決】(上告審である【最高裁平成4年2月6日判決】でも踏襲)が,「同法にいう建物とは,土地に定着し,周壁,屋根を有し,住居,営業などの用に供することのできる永続性のある建物を言い,必ずしも一戸独立の建物のみを指称するものではなく,当該賃貸借の部分が障壁その他によって他の部分と客観的に明白に区画され、独立的排他的な支配を可能ならしめる構造と規模を有するものであるときは,なおこれを同法の建物と言うに妨げないものと解するのが相当である。これを本件について見るに,右施設物は国鉄の高架下を利用して作られたものではあるが,なお土地に定着して,周壁を有し,鉄道高架を屋根としており,永続して営業の用に供することも可能であると認められるのみならず,本件店舗部分についても,隣の部分とはブロックにベニアを張って壁を作ることによって客観的に明確に区別されており,これに対して独立的排他的な支配を行うことは十分可能であると認めることができるから,本件店舗もなお借家法にいう「建物」に該当する」として,鉄道高架下の店舗につき,「建物」と認めました。
<3> 次に,上記(「建物」の使用が主眼であること)の観点に基づくと思われる裁判例としては,【東京高裁昭和62年5月11日判決】が,「本件建物部分のうちハイ・ガレージ部分は立体駐車場用の建物であり,自動車及び立体駐車場設備機械を格納し,これらを風雨,熱射,塵などから保護するものであって,それ自体有用なものであり,また,車路部分はハイ・ガレージ部分に自動車が出入りするために必要不可欠な施設であり,駐車場管理室も本件立体駐車場の営業管理上必要な施設であり,これらを賃借しなければ本件立体駐車場の営業は成り立たないこと,本件建物部分は独立した建物であり,その中に立体駐車場設備機械が存在しなくとも,立体駐車場用建物として賃貸借の対象となり得る」として,立体駐車場につき「建物」と認めました。
<4> また,上記(「建物」の使用上の独立性)の観点に基づくと思われる裁判例としては,【最高裁昭和30年2月18日判決】が,営業場はデパートの売場としての区別がされているに過ぎず,(デパート側が)店舗の統一を図るため商品の種類品質価格等の営業方針に干渉することができること,デパートたる外観を具備し,又はそのデパートの安全を図るため右売場の位置等についても適当の指示を与えることができること,営業場の設備は定着物でなく移動し得るものに限られ、且右造作等を設置する場合は必ず(デパート側の)許可を要し,営業方針に従わなければならないこと,営業方針は統一され、使用人の適否についてもデパート側の指示に従うべきと定めであること,包装用紙もこれを一定せしめデパート側で調製の上配布していること等の事情から,デパート1階の売場につき「店舗の一部を支配的に使用しているものとは解することができない」として借地借家法の適用を否定しました。
<5> それでは,頭書のレンタルオフィスのレンタルスペースについては,「建物の賃貸借」と言えるでしょうか。
この点について,【東京地裁平成26年11月11日判決】は,「建物の一部であっても,障壁その他によって他の部分と区画され,独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものは,借地借家法第3章にいう『建物』であると解される」ことを前提に,「本件区画は,面積3.5平方メートルと狭小とはいえ,四方を天井まで隙間のない障壁で囲まれ,共用スペースとは鍵付きのドアによって区画されており,ドアを開けなければ共用スペースから本件区画内部の様子をうかがうことはできない構造になっていることが認められるから,本件区画は障壁その他によって他の部分と区画された独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものであり,借地借家法第3章にいう『建物』に該当する」とした上,「本件契約の中核的な内容は,被告が本件区画を原告に使用収益させ,原告がその対価である利用料金を毎月被告に支払うというものであると解され,しかも,原告による本件区画の使用収益は,建物の独占的排他的な使用を内容とするものと認められるから,その法的性格は,建物の賃貸借契約にほかならないというべきである。本件契約第13条第1項には『賃借権は発生しないものとする』との定めがあるが,民法が定める特定の任意規定の適用を合意によって排斥するのであればともかく,目的物の使用収益を基本的な内容とする有償契約である以上,その法的性格は賃貸借にほかならないというべきであるし,少なくとも,借地借家法の強行法規定の適用を合意によって排斥することができないことはいうまでもない」と判示しました。
なお,バーチャル秘書サービス,電話応答サービス等の付加的サービスの法的性質については,「法的には本件契約と別個独立の契約か,そうでないとしても建物賃貸借契約としての本件契約に付加された付帯サービスにすぎないものであって,本件契約の基本的な法的性格の判断に影響を及ぼすものとはいえない」と判示しました。
【結 論】
以上より,頭書事例のようないわゆるレンタルオフィスについては,〃物の構造上の独立性があり(=各区画が壁で仕切られ,部屋ごとに施錠できる構造となっている),建物の使用が主眼であり(=レンタルスペースの使用が主眼であり,バーチャル秘書サービスや電話応対サービスなどは付従的なサービスに過ぎない),7物の使用上の独立性(独占的排他的使用)が認められている(=入室退室時間の指定や指定区画の入れ替えがほぼない,特に業種の制限もされておらず,賃貸人はオフィス利用者の経営方針に一切関与しない)という点からすると,「建物の賃貸借」といえ,借地借家法が適用されるものと解されます。
もっとも,賃料が近隣相場に比して極端に低額であるとか,数日単位の一時使用目的(借地借家法40条)であるなどの特殊事情がある場合には,借地借家法が適用されない場合もあり,「レンタルオフィス=借地借家法適用あり」というように単純に考えることはできませんので,多湖・岩田・田村法律事務所では,必ず契約書の契約条件や実際の利用実態等を詳細に検討したうえで判断しています。
【補 足】
家賃を滞納した場合,通常は遅延損害金が発生します(民法419条1項)。契約で特に定めていなければ,年5%の民事法定利率(民法404条)または(当事者の一方が会社の場合には)年6%の商事法定利率(商法514条)を付して支払わなければならないため,例えば,月10万円の家賃を1年間滞納した場合には,10万5000円または10万6000円を支払わなければなりません。この遅延損害金の利率を,契約で法定利率より高めに設定することも認められておりますが,余りに高過ぎる利率は,暴利となり,公序良俗に反し一定範囲で無効となります。

この点,賃借人が個人で,消費者契約法が適用される場合には,年14.6%までしか認められません(消費者契約法9条2号)。また,賃借人が会社で消費者契約法が適用されないケースでも【東京地裁平成24年5月9日判決】は,年29.2%を超える部分について公序良俗に反し無効と判示しました。これは,(貸金元本10万年未満の場合)上限を最大年20%とする利息制限法1条1号及び遅延損害金の上限をその1.46倍(すなわち20%×1.46=年29.2%)とする同法4条1項を考慮したものと思われます。

他方で,【東京地裁平成27年8月6日判決】は,同じく賃借人が会社で消費者契約法が適用されないケースで,遅延損害金が年60%とされていた約定利率を有効と判示しました。もっともこの事案は,単なる賃貸借契約ではなく,いわゆるレンタルオフィスとして,秘書・ITサービスの提供も含まれており,滞納の場合に賃貸人が負担する経費等の不利益が「通常の賃貸借の場合より大きい」という特殊性を考慮したものです。

従って,多湖・岩田・田村法律事務所でも,一般の賃貸借契約の場合には,賃借人が会社の場合でも,遅延損害金の利率は,最大でも年29.2%以内に留めておくよう助言しております。
【改正民法】
*公布:平成29年6月2日官報号外第116号(平成32年6月2日までに施行予定)
<404条>
1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年3パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。

5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

<419条1項>
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

<多湖・岩田・田村法律事務所コメント>
これまでは,民事法定利率は一律年5%でしたが,民法改正後は原則年3%となり(改正404条2項),3年毎に変動(同条3項)することになりました。但し,「その利息が生じた最初の時点」(同条1項),「債務者が遅滞の責任を負った最初に時点」(改正419条1項)が基準となるため,債務不履行時点=支払期限経過時点の法定利率が仮に年3%であれば,その後,不履行が解消されるまで(支払がされるまで)はずっと年3%のままとなります。なお,年6%とされていた商事法定利率の規定(商法514条)も削除され,民事法定利率に一元化されます。


Copyright © 2011 TAGO IWATA& TAMURA. All Rights Reserved.