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更新:2023年5月18日 
 事例

隣接するA土地及びB土地を賃借し,A土地に住居を建築して所有しているが,B土地は公道へ出るための通路として使用しているだけでB土地上には建物は存しない(建築予定もない)場合,B土地につき借地借家法が適用されるか。

 解説

1.借地借家法とは
借地借家法は,それまで借地に関する借地法(大正10年4月8日法律第49号)と借家に関する借家法(大正10年4月8日法律第50号)とで別々の法律であったものを合体する形で,平成4年8月1日に施行されました。

旧借地法及び旧借家法の多くの条文は借地借家法に引き継がれていますが,特に借地に関しては,現在の借地借家法と異なる部分がいくつもあります(例えば,旧借地法では,堅固な建物と非堅固な建物とで借地権の存続期間が異なり,また,建物朽廃による借地権消滅制度がありました)。

借地借家法は,同法が平成4年8月1日に施行される前に締結された賃貸借契約に関しても原則として遡及適用されますが(借地借家法附則4条本文),特に借地の場合,借地借家法の「施行前に設定された借地権」に関しては法定更新や再築に関する規定等(旧借地法4条~7条)の重要なものにつき,旧借地法が依然として適用されます(借地借家法附則5条~7条等)。

なお,借地借家法附則5条~7条等の「施行前に設定された借地権」とは,同法の施行前に借地契約が締結されかつ借地権の効力が発生している場合をいい,例えば,借地契約の締結は同法の施行前でも同契約で賃貸期間の始期を平成4年8月1日以降と定めた場合は含まれないので(稻本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法(第4版)』〔日本評論社 2019年〕389頁),このような場合は旧借地法は適用されず,借地借家法が適用されます。

他方で,借地借家法の施行前に借地契約が締結されかつ借地権の効力が発生している限り,同法の施行後に①何回も契約更新された場合②新たに借地契約書を作成し直した場合③相続や譲渡等で当事者が変更した場合でも,依然として同法附則6条「施行前に設定された借地権」であることに変わりはないと解されており,また,当事者間で「新法(借地借家法)施行後の更新は新法に従う」というような合意をしても無効と解されていますので,更新・再築等に関しては旧借地法が適用されます(稻本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法(第4版)』〔日本評論社 2019年〕399頁「本法施行後における契約更新後の再築についても旧借地法が事実上適用される」,田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法』〔日本評論社 2014年〕294頁参照)。

いずれにしても,特に借地に関しては,契約期間が長期に及び,令和になった現在でも多くのケースで旧借地法が適用される場面がありますので,当該借地契約の最初の締結日に注意する必要があります。

【借地借家法附則4条】
この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、附則第二条の規定による廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。

【借地借家法附則5条】
この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関しては、なお従前の例による。

【借地借家法附則6条】
この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。

【借地借家法附則7条】
1 この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の滅失後の建物の築造による借地権の期間の延長に関しては、なお従前の例による。

2 第八条の規定は、この法律の施行前に設定された借地権については、適用しない

2.借地(建物所有目的)の要件
借地借家法は「建物の所有を目的とする地上権及び賃借権」又は「建物の賃貸借」に適用されます(借地借家法1条)。前者は「借地権」(同法2条1号),後者は「借家権」などと呼ばれます。

このうち,借地権すなわち「建物の所有を目的とする」については,「借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し,これを所有することにある場合を指し,借地人がその地上に建物を築造し,所有しようとする場合であっても,それが借地使用の主たる目的ではなく,その従たる目的にすぎないときは,右に該当しない」と解されています(【最高裁昭和42年12月5日判決】)。

この判例では,「社会の通念に照らして考えれば,その主たる目的は、反対の特約がある等特段の事情のないかぎり、右土地自体をゴルフ練習場として直接利用することにあったと解すべきであって,たとえ当初から右土地上に業としてゴルフ練習場を経営するのに必要な事務所用等の建物を築造・所有することを計画していたとしても、それは土地自体をゴルフ練習場に利用するための従たる目的にすぎなかった」とし,ゴルフ練習場用地としての土地賃貸借契約につき借地借家法(旧借地法)の適用を否定しました。

もっとも,「反対の特約がある等特段の事情のないかぎり」との限定も付されておりますので,当事者間で当該建物が不可欠かつ主眼であることを別途合意していたような場合には,借地借家法が適用される余地があります。

【借地借家法1条】
この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。

【借地借家法2条】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

二 借地権者 借地権を有する者をいう。

三 借地権設定者 借地権者に対して借地権を設定している者をいう。

四 転借地権 建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているものをいう。

五 転借地権者 転借地権を有する者をいう。

【最高裁昭和42年12月5日判決】
借地法一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、これを所有しようとする場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、右に該当しないと解するのが相当である。
ところで、本件土地の貸借については、それが賃貸借であるといえるか否かの点にも問題がないわけではないが、その点はさておき、仮にそれが賃貸借であるとしても、その目的は当事者間に争いがないように右土地をゴルフ練習場として使用することにあったというのであるから、これを社会の通念に照らして考えれば、その主たる目的は、反対の特約がある等特段の事情のないかぎり、右土地自体をゴルフ練習場として直接利用することにあったと解すべきであって、たとえその借地人たる被上告人が当初から右土地上に業としてゴルフ練習場を経営するのに必要な原判決判示のような事務所用等の建物を築造・所有することを計画していたとしても、それは右土地自体をゴルフ練習場に利用するための従たる目的にすぎなかったものといわなければならない。

3.所有建物との不可分性
しかしながら,B土地自体には建物を所有していなくても,B土地賃貸借契約締結当初から隣接するA土地上に所有する建物に出入りするために不可欠な通路用地としてA土地と同一の賃貸人(所有者)から賃借した場合には,当該通路用地たるB土地上に建物を所有する予定が無くても,隣接するA土地と一体として「建物所有目的の賃貸借契約」といえ借地借家法が適用されると解されます(【東京地裁平成16年3月25日判決】参照)。

また,A土地上に建物を建築するにあたり,B土地が当該建物の敷地として容積率や建ぺい率の基礎にされていた場合など,隣接するA土地上に所有する建物の建築に不可欠な敷地(そうでなければ容積率や建ぺい率を満たさず違法建築になってしまう)として賃借した場合にも,隣接するA土地と一体として,「建物所有目的の賃貸借契約」といえ借地借家法が適用されると解されます(【東京地裁平成27年5月25日判決】参照)。

ただし,上記は,A土地・B土地ともに当初から同一の当事者間で賃貸借契約が締結された場合に妥当するものであり,A土地とB土地の賃貸人(所有者)が異なる場合には,たとえ建物の存続・便益のために不可欠な土地であっても両者を一体の賃貸借契約と解することは困難であり,B土地所有者との間で特段の合意ない限り,B土地には借地借家法は適用されない(建物所有目的とはいえない)と考えられます(【東京地裁平成2年5月31日判決】参照)。

【東京地裁平成2年5月31日判決】
借地法一条にいわゆる「建物所有ヲ目的トスル」賃借権とは、土地の賃借の主たる目的が当該土地上に建物を所有することにあるものをいうのであり、ある賃貸借契約が建物所有を目的とするものであるというためには、例えば、建物の敷地の用地とそれに至る通路用地について各別に締結された同一当事者間の二個以上の賃貸借契約のように、本来一個の賃貸借契約と解すべき場合又はそれに準じて取り扱うべき場合にあってはともかく、それが別個、独立の賃貸借契約である限りにおいては、当該賃貸借契約の主たる目的が当該賃貸借契約の目的たる土地上に建物を所有することにあるのでなければならないのであって、自己の所有地上又は他の賃貸借契約に基づく賃借地上に建築された建物の利用又はその便益のために締結された他の土地についての賃貸借契約までが建物所有を目的とする賃貸借契約であると解することは、著しく借地法の目的を逸脱する。

【東京地裁平成16年3月25日判決】
本件契約は、借主が本件土地1上に建物を複数建てて居住し、商売を営むために一体として利用することが予定されていたもので、本件土地2は、契約当初から本件土地1に含まれて建物所有目的で賃貸され、被告らの居住建物から公道へ出るためには本件土地2を通行使用する必要性が認められることからすると、法定更新につき、本件土地1から本件土地2を切り離して、本件土地2上に建物が存在するか否かや正当事由の存否を検討すること自体失当である。

【東京地裁平成27年5月25日判決】
本件マンションが本件土地にはみ出ているとしても,本件土地の賃貸は,当初から駐車場使用を目的としたものであったのは上記のとおりである上,本件マンションが本件土地上にはみ出している部分は上記のとおり本件土地全体からみればごく一部分であり,かつ,同部分を取り壊しても建物の強度には影響がない(本件土地上にはみだしていることになる本件マンションの一部の基礎と本件土地の駐車場部分の基礎コンクリートは一緒に打たれたことは認められるものの,構造的にも不可分一体のものとまでは認められない。)。
また,本件マンションの敷地として容積率や建ぺい率等の基礎とするために本件土地を賃貸したと認めるに足る事実もうかがわれない。そうすると,本件賃貸借契約をもって本件マンション所有を目的とするものということはできない。
また,本件土地にインフラ設備が埋設されていることをもっても,本件賃貸借契約が本件マンションの所有を目的とするものということはできない。

 結論

以上より,頭書事例の場合,A土地とB土地が隣接し,B土地賃貸借契約締結当初から,A土地上の建物に出入りするための不可欠の通路用地として,A土地と同一の賃貸人(所有者)からB土地を賃借した場合には,B土地自体に建物を所有しなくても,A土地の賃貸借と一体として建物所有目的の賃貸借とみなされ,B土地にも借地借家法が適用されるものと解されます。

 補足

4.露天駐車場に借地借家法が適用されるケース
一般に露天駐車場には,借地借家法は適用されません。賃借の主たる目的が「建物所有目的」とはいえないからです。

そうすると,法定更新(借地借家法5条,28条)もないため,契約期間が満了すれば,駐車場を無条件で明け渡さなければならないのが原則となります。

それでは,例えば,倉庫業者が建物を倉庫として賃借し,同時に同一の賃貸人から当該倉庫に隣接する土地を運搬用トラックの駐車場として賃借したといような場合はどうでしょうか。

言うまでもなく,倉庫部分については建物の賃貸借(借家)として,借地借家法が適用されるため,契約期間が満了しても正当事由が無い限り,賃貸人は倉庫の明け渡しを請求できません。

ですが,いくら倉庫については明け渡しを免れても,駐車場は明け渡さなければならないとなると,倉庫業者にとって駐車場は必要不可欠の設備ですので,倉庫を賃借した目的も達成できなくなります。

そこで,このような場合には,倉庫の賃貸借契約に対する借地借家法の期間的拘束(正当事由が無い限り賃貸人側から解約できない効果)を駐車場の賃貸借契約にも及ぼし,倉庫についての賃貸借契約が有効に解約されない限り(正当事由が無い限り),駐車場の賃貸借契約も解約できないと考えられます(【東京地裁平成28年9月23日判決】【東京地裁令和4年12月8日判決】参照。なお,信義則(民法1条2項)により駐車場の賃貸借契約の解約を制限したものとして【東京地裁平成30年2月16日判決】)。

もっとも,上記は,同一の賃貸人から建物と駐車場を同時又は一体的に賃借した場合で,かつ駐車場がなければ建物を賃借した目的を十分に達成できないという関係に立つ場合に限られますので(【東京地裁平成31年2月13日判決】【東京地裁令和3年7月1日判決】等参照),このような関係にあるか否かは,契約締結の経緯や利用状況等事案に応じた慎重な判断が必要となります。

なお,仮に駐車場の賃貸借契約が借地借家法の期間的拘束に服する場合,駐車場の賃貸借契約は長期間継続する可能性があることから,事情変更による賃料の増額あるいは減額も認める必要があるため,借地借家法32条による賃料増減額請求も認められるものと解されます(【東京地裁平成2年11月29日判決】)。

【東京地裁平成2年11月29日判決】
(本件駐車場使用契約は本件各建物の賃貸借が存続する間は存続するとの期間の定めがなされたものである旨認定した別訴判決を前提に)「本件各駐車場の賃貸借契約は、本件各建物の賃貸借契約と、右判決のとおりの関係に立つこととなり、建物の賃貸借契約と一体としての期間的拘束を受けることになるから、借家法七条一項【※現借地借家法32条1項】の規定を準用し、同条所定の事情が存するときは、賃料の増額請求ができるものと解するのが相当である」と判示。
※【 】内は筆者加筆。

【東京地裁平成28年9月23日判決】
本件第1契約の対象である本件第1不動産には建物が含まれることからすると,本件第1契約における賃貸人による中途解約を許容する旨の定めについては,借地借家法の定めに照らして,正当事由のある場合に限り,賃貸人による中途解約を認める趣旨の特約と解するのが相当である。
本件第2契約及び本件第3契約にも,同様の定めがあるところ,本件第2契約及び本件第3契約の対象である本件第2不動産及び本件第3不動産は,主として本件パチンコ店の駐車場に係るものであると認めることができるのであって,本件第2契約及び本件第3契約は,本件第1契約と不可分の関係にあるものということができる。
そうすると,原告と被告との間においては,本件第2契約及び本件第3契約における中途解約を許容する旨の定めについては,建物所有を目的としない土地賃貸借契約であるため借地借家法の適用を受けることがないとしても,本件第1契約との関連性を踏まえて,同様に,正当事由のある場合に限り,賃貸人による中途解約を認める趣旨の特約と解するのが相当である。

【東京地裁平成30年2月16日判決】
本件事務所契約について解約申入れがあったとしても,正当事由を認めるに足りないから,効力を有しないというべきである。
<中略>
本件駐車場契約に借地借家法の適用はないから,民法617条により,原告はいつでも解約の申入れをできることになる。
<中略>
もっとも,被告は,本件建物で自動車修理・販売などを行っていることから,敷地に自動車を置く場所があることが営業上極めて有益であり,社会経済上も望ましいと認められる。
他方,原告としては,本件建物の明渡しを求めることができない以上,本件土地のみの明渡しを求める実益は乏しいと言わざるを得ない。
かかる場合に,本件駐車場契約について解約申入れを行っても,それは信義則に反すると言わざるを得ず,効力を有しないというべきである。

【東京地裁平成31年2月13日判決】
本件駐車場は,屋根こそあるものの,周壁を有しておらず,隣の駐車場と壁によって客観的に区別されているとはいえないし,また,本件建物の居住者であれば誰でも本件駐車場を通って本件建物を自由に出入りし得る状態にある以上,被告の独立的,排他的な支配が可能であるともいえない。
そうすると,本件駐車場は,本件建物の一部を構成するものではあるが,借地借家法の適用を受ける「建物」に該当するとはいえない
他方,前提事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告は本件駐車場契約の締結前に本件居室契約のみを締結し,同契約上,当初の賃借目的物に駐車場は含まれていなかったこと,被告がその後に締結した本件駐車場契約は,その賃料額や賃借期間は本件居室契約とは別個に定められ,その後の契約更新も本件居室契約とは別個に行われていたこと,本件建物の敷地内には屋根のない駐車場が複数存し,原告は,本件駐車場契約の解約申入れの際,被告に対し,本件駐車場の代替駐車場として上記屋根のない駐車場の利用(その月額賃料は自動車1万5000円,原付自転車2000円(いずれも消費税別))が可能である旨併せて提案していたこと,被告は,本件駐車場の賃料増額に常識的な範囲で応ずる意向を表明しているものの,その保有車両に強い愛着を示しており,原告の提案に係る屋根のない駐車場を利用することを拒否していること,以上の事実が認められる。
上記で認定した事実によれば,本件駐車場契約と本件居室契約は全く関連性がないわけではないものの,居室と駐車場の利用は可分なものであり,本件駐車場が利用できなければ本件居室における居住という本件居室契約の目的をおよそ達成することができないともいえないから,上記各契約が不可分一体の関係にあるとまではいえない。
本件建物の被告以外の居住者において,賃貸借契約の更新の際に居室部分と駐車場部分とを1通の契約書により合意更新したことがあるとしても,2通の契約書を作成する手間を省力化するための便宜的な措置にすぎないとも解されるから,上記判断を左右する事情であるとはいえない。
したがって,本件駐車場契約に借地借家法が準用又は類推適用されるものではないというべきである。

【東京地裁令和3年7月1日判決】
事務所賃貸借契約の締結に先立ち久保工から弁護士に交付された貸事務所の募集広告には「駐車場:3台」との記載があるだけであり,事務所賃貸借契約と駐車場使用契約とが一体であることや,密接不可分であることはうかがわれない
原告が駐車場使用契約を締結したのは,事務所賃貸借契約の締結の半年後のことであり,これら各契約は,契約書が別々に作成され,内容の関連性もみられず,賃貸人も異なる別個の契約であった
<中略>
事務所賃貸借契約と駐車場使用契約とは別個の契約であり,事務所賃貸借契約が継続しているか否かが,本件解約条項を含む駐車場使用契約の内容に影響を及ぼすと認めることはできない。
また,事務所賃貸借契約が継続する一方で,駐車場使用契約が解約された場合,本件駐車場を使用する弁護士の利便性が下がるとはいえるものの,このような状況は,公共交通機関やタクシーを利用し,あるいは近隣に別途駐車場を借りるなどして,容易に解決可能なことであり,原告に著しい不利益を被らせるものとは認め難い。
<中略>
本件駐車場は本件建物の一部であるものの,事務所賃貸借契約に適用されるべき借地借家法28条が駐車場使用契約にも類推適用されるとは認め難い

【東京地裁令和4年12月8日判決】
本件賃貸借契約は、本件建物と本件土地を対象とする一つの契約であり、賃料も建物と土地を合わせた対価として定められ、賃貸借の期間も共通であること、本件土地は一筆の土地であり、本件建物の底地及びそれ以外の本件土地部分からなること、本件土地には、西側隣地との間に原告に撤去された囲障があったこと、本件土地部分は玄関から公道までの通路、入居者のための駐車場、花壇として使用されていたこと、本件建物は、駐車場付きマンションとして入居者を募集し、入居者が希望する場合には本件土地部分の駐車場を賃貸していること、以上の事実が認められる。
このように、1つの契約でまとめて賃貸借契約の対象とされた土地と建物については、特段の事情がない限り、契約の終了についても、一体として判断をするのが相当である。
本件土地と本件建物については、その利用状況にも密接な関係があることは前述のとおりであり、本件土地は、共同住宅である本件建物の敷地として、本件建物と一体として賃貸借契約の目的とされたものであって、契約の終了を別個に考える特段の事情の存在は認められない。
そうすると、本件建物について本件賃貸借契約が継続している以上、本件土地に係る賃貸借契約のみを更新拒絶することは認められない

※本頁は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。


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