HOMENEWSアクセスEnglish
不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
電話 03-3265-9601
info@tago-law.com
概要 弁護士 取扱業務 依頼費用
多湖・岩田・田村法律事務所エントランス
借地借家法
敷金
中途解約
転貸借
賃料増減額請求
正当事由と立退料
更新料
原状回復
修繕義務
連帯保証人
仲介業者の責任
残置物処分
明渡完了時期
明渡遅延違約金
債務不履行解除
所有者変更
売買相談

賃料増額・減額の請求
*本項は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。
【事例】賃料増額・減額の方法と適正賃料の算定基準
貸主の賃料請求に対し,借主が賃料減額を主張し,以後,一方的に減額した賃料しか支払わない場合の法律関係。

【解説】平成29年8月改訂版
【1】租税その他の公課の増減,土地・建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍類似の土地・建物の賃料等に比較して不相当となったときは,貸主・借主は相手方に対し土地・建物の賃料の増額・減額を請求することが認められており(借地借家法11条1項本文及び32条1項本文),かかる請求は一種の形成権(当事者双方の合意ではなく一方的な意思表示により効力が発生する権利)と解されています(【最高裁昭和32年9月3日判決】【最高裁昭和43年6月27日判決】等)。
【2】従って,相手方(増額の場合は借主,減額の場合は貸主)に増額・減額の請求(意思表示)が到達した日の分(翌日分からではありません)から即日,賃料増額・減額の効果が生じます(【最高裁昭和45年6月4日判決】。但し,あえて到達日より後の日を増減額の基準時として増額・減額の請求をした場合は当該基準時から賃料増額・減額の効果が生じます)。
【3】もちろん,借主から減額請求がなされても貸主がこれに異議を唱えれば,賃料減額の効果は直ちには生じず,調停や裁判で減額が「正当」(≠相当)と認められるまでは,借主は「相当と認める額」を貸主に支払う必要がありますが(借地借家法11条3項,32条3項),後に調停や裁判で減額が「正当」(≠相当)と認められた場合には,貸主は,超過分(受領額−減額後の賃料)に受領の時から年1割の利息を付してこれを借主に返還しなければなりません(同法11条3項,32条3項)。
【4】なお,賃料増減額請求については,調停前置主義により,貸主・借主はいきなり裁判をすることはできず,必ず先に調停を申し立てる必要がありますが(民事調停法24条の2),訴訟上,賃料減額請求権行使の事実は,未払賃料請求に対する「抗弁」となり得るとされていますので(『要件事実マニュアル(下)』102頁・ぎょうせい,『民事訴訟における要件事実 第2巻』73頁・司法研修所,『借地借家訴訟の実務』263頁・新日本法規出版等参照),貸主の提起する未払賃料請求訴訟において,借主が反論(抗弁)として賃料減額請求を主張すると,減額の可否についても同一訴訟内で審理され,これが正当と認められれば,賃料減額請求時に遡って賃料が減額されます。
【5】では,ここでいう「相当と認める額」とは何を意味するのでしょうか。

この点につき,【東京地裁平成10年5月28日判決】は,「右規定にいう『相当と認める額』とは,右規定の趣旨に鑑みると,社会通念上著しく合理性を欠くことのない限り,賃貸人において主観的に相当と判断した額で足りる」とし,【東京地裁平成6年10月20日判決】も,「右増減額請求における賃借人又は賃貸人が『相当と認める額』とは,社会通念上著しく合理性を欠かない限り賃借人又は賃貸人において主観的に相当と判断した額をいうのであって,その根拠,当否はその後の調停,裁判において判断されるものであるから,『相当と認める額』の根拠を示す必要はない。そして,『相当と認める額』の合理性については,賃料が本来当事者間の合意によって決せられることから,特段の事情がない限り,従前賃料額であれば合理性を有する」としており,いずれも,従前賃料額(減額請求前の現行賃料額)をもって「相当と認める額」と判示しています(なお,前掲【東京地裁平成10年5月28日判決】では,貸主・借主間の協議の過程で,減額請求を受けた貸主が従前賃料額より減額した譲歩案を示したことがあったとしても,「交渉の過程における一提案なのであるから,この提示によって貸主の主観的認識が変化したものと認めるべきではない」として,従前賃料額をもって「賃貸人において主観的に相当と判断した額」と判示)。
【6】また,【東京地裁平1年3月6日判決】も,「賃料減額請求がされた場合、当事者間に協議が調わないときは、減額を正当とする裁判が確定するまでは賃貸人は相当と認める賃料を請求することができるのであるから、賃借人は、自己の減額請求にかかる賃料額を相当であると考えても、その額を支払うことによって賃料債務を免れることはできず、反面、少なくとも従前の賃料額を支払っていれば債務不履行の責めを免れることができる」と判示しています。
【7】 したがって,貸主が異議を唱え,かつ調停や裁判で正式に賃料減額が「正当」と認められないうちに,借主が一方的に減額した賃料しか支払わなければ,債務不履行(賃料一部不払い)となり,これが一定額に達すれば,貸主は,原則として,賃貸借契約を債務不履行解除することができます(前掲【東京地裁平成6年10月20日判決】【東京地裁平成10年5月28日判決】も,債務不履行解除を認めました)。
【8】逆に,貸主が賃料増額請求をしてきた場合も,借主としては,調停や裁判で正式に賃料増額が「正当」と認められないうちは,従前賃料額と同額を支払っておけば,その金額が固定資産税すら下回るような著しく不相当な金額でない限り,原則として債務不履行(賃料不払い)とはなりませんが(地代増額請求の場合につき【最高裁平成5年2月18日判決】),「『相当と認める額』は現行賃料を下回るものであってはならない」(『借地借家訴訟の実務』284頁・新日本法規出版)ため,賃料増額請求を受けた借主が現行賃料を下回る賃料しか支払わなかった場合にはやはり債務不履行(賃料一部不払い)となり,これが一定額に達すれば,貸主は,原則として,賃貸借契約を債務不履行解除することができます。
【9】では,調停や裁判において,「正当な賃料」は,どのような基準で判断されるのでしょうか。
同法11条1項及び32条1項の各規定や過去の裁判例に照らし,正当賃料算定の基本的考慮要素としては,概ね以下の4点が挙げられます。
(1)租税その他の公課ないし負担の増減(土地においては固定資産税や都市計画税,建物においては減価償却費,維持修繕費,公租公課及び損害保険料及び土地に対する公租公課(借地権付き建物であれば地代相当額)の増減)

(2)土地・建物の価格変動等の経済事情の変動

(3)近傍類似の土地又は建物の賃貸相場(いわゆる「賃貸事例」)

(4)賃貸人・賃借人間の個別事情(いわゆる「サブリース」「オーダーメイド賃貸」等の事情。詳細は後述事例参照)
【10】なお,このうち(3)(賃貸事例)については,近傍において契約内容,経緯等を適正に比較し類似の「賃貸事例」を探し出すことは容易ではなく,探し出したとしても適切な補正を施すことはさらに困難なため,特に「継続地代の評価手法としての存在意義はほとんどない」と解されており(『実務解説借地借家法』430頁・青林書院),【東京地裁平成22年2月17日判決】等でも「規範性の乏しい(賃貸)事例に基づく比準賃料を継続賃料の算定の基準とすることは相当でない」と判示されています(もっとも,和解や調停においてはなお有力な材料になるとされているため(『現代民事裁判の課題6借地・借家・区分所有』新日本法規出版),和解案として,近傍の賃貸事例を数件ピックアップして相手方へ提示することには,一定の有益性はあるかと思われます)。
【11】実際の不動産鑑定においても,概ね上記(1)から(4)をベースに,「差額配分法」「利回り法」「スライド法」「賃貸事例比較法」等の算定方法により,正当な賃料を算定します(それぞれの算定方法については不動産鑑定の専門知識を要し非常に複雑な計算を伴うためここでは詳しくは触れません。なお,多湖・岩田・田村法律事務所でも,賃料増減額の交渉をする際に予め適正賃料の簡易な査定は行っておりますが,調停や裁判で書証として提出する場合には,原則として外部提携先の「不動産鑑定士」へ鑑定依頼しております)。
このうち,「差額配分法」が最も説得力の優る算定方法とされ,実務においても,とりわけ「営業用の建物の賃貸借契約」の場合は,「差額配分法」が最も重視される傾向にあるといえるでしょう(【東京地裁平成22年2月17日判決】等)。
【結論】
以上より,借主による減額請求後も,貸主は,借主に対し異議を述べた上,従前賃料と同額の賃料を請求することができます。
それにも拘らず,借主が一方的に減額した賃料しか支払わないときは,債務不履行(賃料一部不払い)となり,貸主は賃貸借契約を解除することができます。
但し,借主が賃料確認調停ないし訴訟を提起し,減額された賃料をもって「正当」と認められた場合は,その効果は,賃料減額請求時に遡り,貸主は,超過分(受領額−減額後の賃料)に受領の時から年1割の利息を付してこれを借主に返還しなければなりません。
【補足】
実務上,借家においては,家賃のほかに,エレベーターの定期点検費用や非常階段の電気代,エントランスの清掃代等を「共益費」と称して毎月定額で支払うのが一般的です。
では,このような共益費についても家賃と同様,借地借家法32条1項により,増減額請求は可能なのでしょうか。

この点,【東京地裁平成6年10月20日判決】では,「共益費とは一般的には賃貸の目的建物が区分所有建物である場合に当該建物を含む建物を統一的に管理することに伴う費用(準委任契約に基づいて支払義務が生ずる金員)であると解されるから、当事者に合意が成立した後はそれと異なる新たな合意が成立するまで,右合意に係る金額が当事者を拘束する」と判示されています。

もっとも,名目が「共益費」であっても,実質的に家賃と同視できる場合は,借地借家法32条1項が適用されると考えられます。また,仮に賃料と同視できないとしても,「賃貸借契約における共益費とは,各賃借人の共同利用に供する建物の保存,管理,清掃衛生等,定期管理の費用をいうところ,これらは租税等の負担,建物の価格等とは直接関係せず,共益費の内容は,当事者間の合意によって定めることが可能であり,近傍同種の建物の共益費と単純に比較できるものではないことから,借地借家法32条1項を直接適用することはできないが,共益費の額を定めた要素に大きな変更があるような場合に限り,同項の趣旨にかんがみ,類推適用する余地がある」(【東京地裁平成25年6月14日判決】)と考えられております。

したがって,共益費の要素(例えば電気代)に大きな変更があったような場合には,賃料と同様,借地借家法に基づく増減額請求が可能と解されます。


【事例】賃料不減額特約の有効性
「賃貸契約期間中,借主は賃料減額請求をしてはならない」との条項の有効性。

【解説】多湖・岩田・田村法律事務所/平成24年10月版
【1】借地借家法16条や37条の明文上は,同法11条1項や32条1項は強行法規(当事者の特約があっても排除できない規定)とはされていませんが,解釈上,強行法規とされているため(同法11条1項につき【最高裁平成15年6月12日判決】【最高裁平成16年6月29日判決】等,同法32条1項につき【最高裁平成15年10月23日判決】【最高裁平成20年2月29日判決】等),仮に契約で「借主は賃料の減額請求をしない」旨の特約が結ばれたとしても,かかる特約は定期借家契約(公正証書等の書面により「契約の更新がないこととする旨」の約定を結んだ建物賃貸借契約)の場合(同法38条7項)以外は,特段の事情ない限り原則として無効となります(同法11条1項但書及び32条1項但書の反対解釈。)。
【2】それでは,賃貸借契約が転貸を前提に締結されている「サブリース」や借主の意向・注文に沿って建物を建築した上その建物を賃貸する「オーダーメイド賃貸」のような場合も,同法11条1項や32条1項の適用を一切排除できないのでしょうか。
これらは,貸主が借主から得られる賃料を見越して資金計画を立てているのが通常であるため(例えば借主からの賃料収入で回収できる範囲で借主の要望沿った建設費を支出したり,賃料収入をあてにして銀行からの建設費を借入れている等),減額されてしまうと,不測の事態が生じます(毎月の賃料収入が減額しても銀行への毎月の返済額は当然には減額されませんので,貸主は投下資本の回収ができずに倒産に追い込まれる危険があります)。
【3】この点,【大阪高裁平成17年10月25日判決】は,賃借人が賃貸人に対しビルの建設協力金を預託するなどして,賃貸人名義のビルを建設させた上でこれを賃借し,さらに転貸するという賃貸形式が採られていた事案(これもサブリースの一種といえます)につき,経済的には賃貸人と賃借人の共同の企業活動であるとの趣旨であるとしても,そのことから本件賃貸借契約の法的性格が左右されるものではなく,借地借家法32条の規定の適用がないことの根拠とすることはできないが,これらの諸事情は,「本件賃貸借契約による約定賃料の相当性(借地借家法32条の規定における「不当性」)や相当賃料額の算定において斟酌すべき重要な事情になる」と判示しました。
【4】また,【最高裁平成15年10月21日判決】も,賃貸人と賃借人との協議の結果を前提とした収支予測に基づき,賃貸人が銀行から181億円余りの融資を受けて,その所有する土地上に建物を建築し,これを賃借人が転貸事業を行うために賃借したという事案(これもサブリースの一種といえます)とにつき,以下のように判示しました。
(1)本件賃貸契約は,「いわゆるサブリース契約と称されるものの一つであると認められ」,賃借人の「転貸事業の一部を構成するもの」であり,本件契約における賃料額及び本件賃料自動増額特約等に係る約定は,賃貸人が賃借人の転貸事業のために多額の資本を投下する前提となったものであって,本件契約における重要な要素であったということができる。これらの事情は,本件契約の当事者が,当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから,「衡平の見地に照らし,借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額を判断する場合に,重要な事情として十分に考慮されるべきである」。

(2)減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり,本件契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約が付されるに至った事情,とりわけ,当該約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無,程度等),転貸事業における収支予測にかかわる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等),賃貸人の敷金及び銀行借入金の返済の予定にかかわる事情等をも十分に考慮すべきである。
【5】他方,【東京高裁平成15年2月13日判決】は,オーダーメイド賃貸の事案につき以下のように判示しました。
(1)「本件賃貸借契約は,貸主がその費用の大部分を負担して,借主の指定する仕様による建物を建築し,その残りの土地を駐車場として貸すとの契約であり,借主の注文にしたがい,その都合に合わせて用意された物件を賃貸するものである(比喩的に『オーダーメイド賃貸』とも呼ばれるようである。)。このような賃貸借契約では,通常の建物の賃貸借契約と異なり,当該建物が汎用性を欠くため,貸主において,その物件を他の賃借人に賃貸することは極めて困難である。そうすると,その賃貸借契約が期間の途中で終了した場合,賃貸人が,建築費等の投下資本を回収することは決して容易ではない。その賃料が予定された契約期間の途中で頻繁にあるいは大幅に減額された場合も同じである」。

(2)「このような事情があるから,本件賃貸借の賃料額及び本件賃料改定条項は,敷金や保証金の金額・返還方法の約定を含めて,賃借人が相当長期間にわたって本件建物を賃借して営業し,賃貸人が本件建物に投下した建築資金等を安定的に回収する必要性があることを前提に定められたものというべきである。そうすると,本件賃料改定条項の後段にいう『著しく不相当となったとき』とは,上記のような事情を考慮しても,なお,その約定賃料額を継続するのが当事者間の公平に反し,不相当といえるような経済事情の変動あるいは近隣との賃料格差が生じた場合をいうものと解するのが相当である」。

(3)「借地借家法32条1項本文は,建物賃料が不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者が賃料の増減を請求できる旨を定めており,上記のように『著しく不相当となったとき』に限定していない。しかし,上記のような本件賃貸借契約の特殊性,すなわち,貸主において汎用性を欠く建物を多額の費用で建築し,その投下資本を回収するリスクを負担していることを考慮すれば,それを通常の建物賃貸借の場合と同様に考えることはできない。借地借家法32条も,結局は,貸主・借主双方の事情を踏まえた公平の原則に基づくものであるから,本件のような『オーダーメイド賃貸』の場合に,その賃料改定条項を上記のような経済的実体に即して解釈したからといって,それが同条の趣旨に反することになるものではない」。
【6】これらの判例を見ても分かるように,サブリース契約やオーダーメイド賃貸のような特殊な賃貸借契約においても,借地借家法11条や32条の適用自体は否定されません。したがって,これを完全に排除する賃料不減額特約の類が契約書上定められていたとしても,なお減額請求は認められます。
しかしながら,減額請求の当否及び適正賃料額を判断する際には,各契約当事者間の特殊事情が加味されますので,サブリース契約やオーダーメイド賃貸では,通常の賃貸借契約よりも,賃料の減額は慎重に(厳格に)判断されているといって良いでしょう。
【結論】
以上より,頭書事例の条項は,借地借家法11条や32条を完全に排除する効力までは有しませんが(その意味では無効といえます),このような賃料不減額特約が定められた経緯(前提事情)等,契約当事者間の個別的事情は,賃料減額の当否や減額幅を判断する上で重要なメルクマールとなります(その意味では一応の有効性はあるとも評価できるでしょう)。


〒102-0083 東京都千代田区麹町4-3-4 宮ビル4階・5階
電話 03-3265-9601 FAX 03-3265-9602

Copyright © TAGO IWATA& TAMURA. All Rights Reserved.