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不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
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中途解約
*本項は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。
【事例】中途解約違約金の有効性
「借主が1年未満で解約した場合,違約金として賃料の3か月分を支払う」との条項の有効性。

【解説】多湖・岩田・田村法律事務所/平成28年10月版
【1】頭書事例の違約金条項は,借主が賃貸契約期間の途中で解約した場合に借主は何万円を貸主に支払うという,いわゆる「中途解約違約金」と呼ばれるもので,「損害賠償の額の予定」(民法420条)と同じ性質を有します。
このような中途解約違約金は,オーダーメイド賃貸のような場合には必ずといって良いほど見受けられるものです。
【2】中途解約違約金の目的は,主として,「貸主が次のテナントを確保するまでの間の賃料を借主に負担させるもの」と言って良いでしょう。すなわち,例えば3年間の賃貸借契約であれば,貸主は「3年間は賃料収入が得られる」との期待があるわけですが,解約されてしまうと,以降,次のテナント入居者が決まるまで賃料収入が得られなくなってしまいます(例えば賃料収入を見込んで資金計画を立てていた場合に予期せぬ損害を蒙ることになります)。違約金条項は,まさにこのような貸主の損害を補填するものです。
【3】違約金条項も消費者契約法9条1号(この場合は10条ではなく9条1号の問題となります)や民法90条により無効となるかどうかがしばしば問題となりますが,敷引特約は,主として,「長く借りていたことによる物件の老朽化に伴う経年劣化分(減価分)を敷金で補填する(償却する)」という趣旨ですが(したがって,賃貸期間が長ければより多額の敷引が認められるわけです),中途解約違約金は,むしろ,早く解約されてしまったことによる不測の損害に備えるというもので,ベクトルが逆なわけですから,敷引特約の有効性の判断と同様の基準(月額敷引比率等)は必ずしも妥当しません。結局は,「中途解約により発生することが予想される貸主の損害が一般的にどれくらいなのか」という,より実質的な判断が必要となります。
【4】この点,【東京地裁平成8年8月22日判決】では,借主が賃貸期間(4年)満了前に解約した場合に違約金を支払うこととされていたケースで,「次の賃借人を確保するまでに要した期間は,実際には数か月程度であり,1年以上の期間を要したことはない」とした上,「約3年2か月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は,賃借人である被告会社に著しく不利であり,賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから,その効力を全面的に認めることはできず,1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり,その余の部分は公序良俗に反して無効」と判示しています(但し,これは,借主が会社であったため消費者契約法9条の適用のない事案であったことに注意が必要です)。
また,敷引特約と中途解約違約金条項の併用が認められたケースでは,借主が中途解約した場合において,「敷引3か月+違約金4か月=計7か月」分の賃料を借主に負担させる特約も有効とされています(【東京簡裁平成20年11月19日判決】但し,これも借主が会社であり消費者契約法が適用されない事案であったことに注意)。
【5】 他方で,消費者契約法が適用されるケース(貸主が事業者で借主が個人消費者の場合)では,【東京簡裁平成21年8月7日判決】【東京簡裁平成21年2月20日判決】は,いずれも,「一般の居住用建物の賃貸借契約においては,途中解約の場合に支払うべき違約金額は賃料の,1か月(30日)分とする例が多数と認められ,次の入居者を獲得するまでの一般的所用期間としても相当と認められる」などとして,1か月の範囲でのみ違約金を認め,これを超える部分につき消費者契約法9条1号により無効と判示しました。
【結論】
以上より,頭書事例の条項は,原則として有効ですが,違約金額が著しく高額な場合は一定の範囲で無効とされます。
過去の裁判例等に照らし,違約金額は,借主が会社の場合は概ね月額賃料の6か月以内,借主が個人消費者で消費者契約法が適用される場合は概ね月額賃料の1か月以内に留めておけば安全圏(有効の可能性大)といえるでしょう。
【補足】
賃貸借契約書では,あらかじめ「賃借人は3か月前に予告することで賃貸借契約を中途解約することができる」等と定められている場合も多いと思われますが(このような条項は法律上有効です),逆に「賃貸人は3か月前に予告することで賃貸借契約を解除することができる」という条項は有効でしょうか。
この点につき,普通賃貸借の解約の場合には「正当事由」が必要になることから(借地借家法28条参照),正当事由を要件とする限りこれを有効とする見解(新基本法コンメンタール『借地借家法』233頁<日本評論社>ではこれを「通説」としているようです),定期借家の場合は,正当事由がなくかつ予告期間が6か月未満でも「真に自由な意思によって合意した以上,その合意通りの効力が認められるものと解さざるを得ない」とする見解(新基本法コンメンタール『借地借家法』233頁<日本評論社>)があります。
しかしながら,普通賃貸借において,予告期間を6か月としていた事案について,【東京地裁平成28年3月11日判決】は,「本件解約権留保条項においては,解約申入れの予告期限が6か月前までとされており,賃借人に対する予告期間の点において同法26条1項及び27条1項と同等の手当てがされているといえるから,賃貸人の解約権を認める部分も,解約申入れの要件となる賃貸人の『都合』について,同法28条所定の正当事由を要すると解する限度では、必ずしも賃借人に不利な特約となるものではない。したがって,本件解約権留保条項のうち賃貸人の解約権を認める部分については,賃貸人の『都合』として同法28条所定の正当事由を要するものと解すべきであり,その限度において効力を有するとみることが相当である。そうすると,賃貸人は,正当事由が存在する場合に限って,期間の定めにかかわらず,6か月前までに解約申入れをすることによって,本件賃貸借契約を終了させることができることになる(民法618,617条,借地借家法27条1項,28条参照)」と判示しています。
また,同じく普通賃貸借の事案で,【東京地裁昭和55年2月12日判決】も,「期間の定めのある建物の賃貸借契約において,期間内における解約権留保の特約が借家法六条により無効とされるか否かについては議論の存するところであるけれども,解約権留保それ自体は有効であるとしても,本件のように申入後直ちにこれを明け渡す旨の特約は同法三条に反し同法六条によって無効であるといわなければならない」と判示しています。
また,定期借家において,予告期間を3か月としていた事案について,【東京地裁平成25年8月20日判決】は,「定期建物賃貸借契約である本件契約において,賃貸人に中途解約権の留保を認める旨の特約を付しても,その特約は無効と解される(借地借家法30条)」と判示しました(同判例を素直に読むと,予告期間の長短に関わらず定期借家一般において賃貸人に中途解約権を留保する特約が無効であるかのように読めます)。
これらの裁判例に照らせば,少なくとも(普通賃貸借でも定期借家でも)予告期間を6か月(借地借家法27条1項)より短い期間(「3か月」)としている場合には,借地借家法27条に比し賃借人に不利な特約(同法30条)として無効と解すべきと思われます。


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