【解除通知】 |
まず,Xは,Yに対し,滞納家賃の支払を請求すると同時に,相当期間内に支払わないときは(相当期間が経過した時点で)賃貸借契約を解除する旨の通知(通常は内容証明郵便)を送付します。これにより,相当期間内にYから賃料の支払がないときは賃貸借契約は解除されます(なお,賃貸借契約は売買契約と違い,一定期間契約関係が持続することを前提とする「継続的契約」としての特殊性があるため,1〜2か月程度の家賃滞納では,契約解除は原則として認められません)。 |
【訴訟提起】 |
次に,Xは,管轄裁判所においてY対し「建物明渡請求訴訟」を提起します。この場合,滞納賃料の請求,遅延損害金の請求,契約解除以後の賃料相当損害金の請求も併せて訴訟提起するのが通常です。なお,建物明渡請求訴訟の貼用印紙代(訴訟提起時に訴状に添付して裁判所に納める税金)は,その建物(マンション)の固定資産評価額によって決まります。 |
【勝訴判決】 |
裁判の結果,Xが勝訴すれば,裁判所からYに対して,「被告(Y)は,原告(X)に対し,建物(301号室)を明け渡せ」という判決が下ります。 |
【強制執行申立】 |
勝訴判決後もYがマンションから退去せず居座った場合,前記勝訴判決がYに送達されたことを証明する「送達証明書」と,「執行文」の付与を受け,当該不動産の管轄裁判所執行担当部(執行係)に対し,「建物明渡執行」の申し立てを行います。なお,執行申立時に裁判所に納める費用(予納金)は,裁判所によって若干異なりますが,概ね6万5000円〜7万円程度です。 |
【催告】 |
強制執行申立後,概ね2週間以内(民事執行規則154条の3?)の日に,裁判所の執行官が現地(301号室)に行き,現況確認後,明渡期限等を定めた「公示書」を室内に掲示します(これとは別に「催告書」すなわち,Yが任意に退去するよう促す警告書をYに差し置きます)。 |
【断行】 |
催告日から,概ね2〜4週間後(原則として民事執行法168条の2?の定める1か月以内の日),執行官はもう一度現地(301号室)に行きます。当日は,家財道具等の室内残置物(「目的外動産」といいます)を,事前に手配した専門業者(執行補助者)が段ボールにまとめて搬出し,倉庫に保管します。この時の業者の費用や倉庫代(保管費用)は,最終的には,「執行費用」としてYに請求できるとはいえ(民事執行法42条?),一旦はXにおいて全額負担しなければなりません(部屋の広さや家財道具の分量によっては,この費用だけで100万円を超えることもありますので注意が必要です)。もっとも,事前もしくは事後に執行官宛に「現場保管の上申書」を提出すれば,現地(301号室内)で家財道具を保管することができることもあります(その場合には搬出費用や保管費用はかかりません)。
なお,断行日に合わせて鍵業者を手配しておき,その場で部屋の鍵も交換してしまうのが通常です。執行官には「立会人」が同行しますが,執行官及び立会人の出張費・交通費等は,<4>で納めた費用(予納金)の中から充当されます。 |
【残置物(動産)処分】 |
執行官は,残置物品あるいは倉庫に保管していた物品(目的外動産)の時価を査定し,(第三者の買い取り手がいない限り)原則としてこれをX自身が全て買い取ることになります(もっとも,査定価格は,よほど高価な美術品等がない限り数千円〜数万円程度のケースがほとんどですので,それほど心配する必要はありません)。買い取り後は,Xは,これを転売したり廃棄するなどして自由に処分することが可能となり,これにより301号室は晴れて空の状態となり,明け渡しは完了します。なお,執行目的建物の現況によっては(例えば,居住者が1年近く行方不明で,この間室内に立ち入った形跡がない場合など)執行官の判断により,【催告】の際に(あるいは催告をせずに)【断行】を同時に行ってしまうこともあります。 *執行の手順は裁判所や執行官により,また現場の状況により異なる場合があります。 |