【受任通知】 |
まず,弁護士が各債権者(消費者金融等)に対し「受任通知書」を送付します。弁護士からの受任通知があると,貸金業法21条1項9号により,貸金業者は債務者(消費者)への直接の取立てが禁止されますので,これにより取立てがストップします。 |
【債権調査】 |
次に,各債権者より取引履歴(いついくら借りていくら返済したのか等の履歴)の開示を受け,いったいいくらの負債があるのか,利息を払い過ぎていないか,商事時効にかかっていないか,等を調査し,正確な(正規の)債権額を確定させます(この段階で,時効にかかっていたり,あるいは過払いの状態が判明するなどして,破産せずに済む場合もあります)。 なお,過払い金が20万円以上ある場合は,破産管財人が選任され,破産手続開始決定後に破産管財人の口座に全額回収され破産者の手元には残りませんので,特段の事情ない限り破産申立て前に過払い金の返還を受けておいたほうが無難でしょう。というのも,破産手続開始決定後,破産者は破産管財人に対し最低20万円の費用(引継予納金といいます)を支払わなければなりませんが,東京地裁では回収前の過払金が20万円あったとしても,これをもって引継予納金の20万円に充当することを認めていませんので(つまり,「消費者金融から返還される予定となっている過払い金が20万円あるのでこれを引継予納金の代わりにしたい」といっても認めてくれません),破産者は,引継予納金の20万円を破産管財人に支払った上で,さらに本来破産者に返還されるべきであった過払金も破産管財人の手元にいってしまうことになります。 他方で,過払い金の返還を受けたあと,それを現金で保管しておけば,99万円以内であれば破産者はこれをそのまま手元に残すことができます(これを「自由財産」といいます。)。 |
【手続選択】 |
債権調査の結果,家計の状況に照らし,概ね3年以内(36回の分割)で返済が困難であると判断される場合には通常は破産を勧めます。 もっとも,(1)官報公告に住所・名前・破産した旨が掲載されてしまう,(2)一度破産してしまうと原則として7年間は破産申立しても免責許可されない(一度破産すると,その後7年間の間に再度何らかの事情で負債を抱えたとしても自己破産を申し立てて借金をチャラにすることができなくなります),(3)養育費や税金,あるいは悪意の不法行為による損害賠償金等は免責されない(チャラにならない),(4)所有不動産(抵当権の付されたローン残高÷評価額=1.5倍以下のもの)や自動車(初年度登録から軽自動車は4年,普通乗用車は6年経過していないもの)等の換価し易い資産は破産管財人により強制的に売却されてしまう可能性が高い,等の自己破産のデメリットを考慮して,破産せずに任意整理(よほどの事情がない限り,通常の消費者金融は60回までの分割返済には応じてもらえます)を選択される方もいますので,この段階でしっかりと担当の弁護士とよく話し合って下さい。 |
【自己破産申立】 |
自己破産を決断された場合は,住民票(6か月以内),過去2年分の預金通帳の写し,直近2か月分の給与明細書,過去2か月分の家計全体の状況記載書面,等を揃えて弁護士が裁判所に持参提出します。 *管轄について
かつて東京地裁は,東京に限らず日本国内在住であれば,広く東京地裁での破産申立を受け付けていましたが,平成22年2月以降は,東京以外は「周辺3県」(千葉,埼玉,神奈川県)在住の方に限定して申立を受け付ける運用に変わりました。 さらに平成27年5月1日以降は,次のいずれかに該当する場合以外は,原則として東京地裁での破産申立を認めない運用に変わっておりますのでご注意下さい。 (1)住民票上の住所が東京にある場合(なお,「東京」であれば,立川支部管内でも東京地裁本庁(霞が関)で申立可) (2)大規模事件の場合(破産債権者の数が500人以上かつ東京高裁管内の場合や破産債権者の数が1000人以上の場合。破産法5条8項,9項) (3)関連事件の管轄がある場合(会社と代表者個人が同時に破産申立する場合に法人の所在地が東京にある場合等。破産法5条6項,7項) (4)経済生活の本拠が東京にある場合(実際の居住地や勤務先が東京の場合や債権者の半数以上が東京所在の場合) |
【即日面接】 |
東京地裁では,平日の午前9時15分〜11時30分,午後1時〜2時までの間に破産申立書を提出すれば,その場で裁判官と弁護士とで「即日面接」が行われ(破産者本人の出頭は不要),裁判官が,破産管財人を選任する必要がないと判断した場合,即日面接当日の午後5時付けで「破産手続廃止決定」をします。これを「同時廃止手続」といいます。 「破産管財人を選任する必要がない」か否かは,(1)20万円以上の資産がないか,(2)ギャンブルでの借金等の免責不許可事由がないか,(3)弁護士の受任通知前6か月以内に財産を無償譲渡していないか(無償行為否認対象行為がないか),(4)弁護士の受任通知後破産申立までの間に債権者に弁済していないか(偏ぱ行為否認対象行為がないか),(5)法人の代表者または個人事業者でないか,等を考慮して判断されます。
同時廃止手続の場合,破産管財人は選任されませんので引継予納金20万円は不要になります。そのため,破産者にとっては同時廃止手続の方が有利であることは間違いありませんが,東京地裁では,破産管財人を選任する手続(これを「管財手続」といいます。)を原則としているといわれており,特に最近は同時廃止手続は減少傾向にあるようです(東京地裁民事20部即日面接係令和4年2月18日発行「即日面接通信vol.28」)。 |
同時廃止手続の場合 【免責審尋】 |
同時廃止手続の場合,東京地裁では即日面接の概ね2か月後に「免責審尋」が行われます。これは,裁判所の法廷(東京地裁では626号法廷)の傍聴席に破産者を集め(日によって異なりますが概ね20〜30人程度でしょうか),順番に名前を呼ばれ法廷に入り,裁判官が各破産者に住所変更の有無,債権者からの異議の有無等を確認する手続のことです(免責審尋では破産者の出頭が必ず必要になります)。 免責審尋で特に何も問題がなければ,概ね1〜2週間程度で「免責許可決定」が出され,晴れて借金の返済義務がなくなり(養育費,税金等非免責債権は除きます),新しい生活が始まります。 |
破産管財手続の場合 【債権者集会】 |
即日面接の結果,裁判官が破産管財人を選任すべきと判断した場合,原則として翌週の水曜日の午後5時付けで「破産手続開始決定」が出され,同時に破産管財人が選任されます。これを実務上「管財手続」といいます。 管財手続では即日面接の概ね3か月後に「債権者集会」(東京地裁では,毎週木曜日及び金曜日に,庁舎5階の債権者集会場で5〜6件同時に開催されます)が行われますが,それまでの間に破産管財人が破産者の資産を調査します(例えば破産手続開始決定日から債権者集会までの間は,破産者宛の郵便物は全て破産管財人へ転送されます)。破産管財人の調査の結果,債権者に配当すべき財産がなければ債権者集会(債権者集会では破産者の出頭が必ず必要となります)の当日に「破産手続廃止決定」が出されます(これを「異時廃止決定」といいます。)。 そして,債権者集会の概ね1〜2週間後に「免責許可決定」が出され(管財手続では免責審尋は行われません),晴れて借金の返済義務がなくなり(養育費,税金等非免責債権は除きます),新しい生活が始まります。 他方,債権者に配当すべき財産があれば,配当手続が行われたのち,「破産手続終結決定」「免責許可決定」が出されます。 |