HOMENEWSアクセスEnglish
不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
電話 03-3265-9601
info@tago-law.com
概要 弁護士 取扱業務 依頼費用
多湖・岩田・田村法律事務所エントランス
時価基準
青田売り
瑕疵担保責任
区分所有
投資用不動産
賃貸相談

不動産(土地)の価格・時価算定基準
*本項は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。
【事例】不動産(土地)の価格・時価算定基準
土壌汚染や放射能汚染に伴う不動産(土地)の価格下落に対する損害賠償請求の金額を算定する基準となるものは何か。

【解説】多湖・岩田・田村法律事務所/令和元年5月版
【1】不動産の価格といっても,評価基準としては以下のように様々な価格があり,同一不動産であっても,その価格は大きく異なります。
■公示地価
・国土交通省が公表するもの⇒地価公示価格(標準地価=狭義の公示価格)
*当該年度の1月1日時点の価格であり毎年改定される(毎年3月ころ公表)。
・都道府県が公表するもの ⇒地価調査価格(基準地価)
*当該年度の7月1日時点の価格であり毎年改定される(毎年9月ころ公表)。
■路線価(国税庁が公表するもので,相続税及び贈与税の基準となるもの)
*公示地価×80%程度
*当該年度の1月1日時点の価格であり毎年改定される(毎年7月ころ公表)。
*路線価が定められていない地域の場合,固定資産評価額×何倍で代替する(いわゆる倍率地域)。
【国税庁財産評価基準書路線価図・評価倍率表】で直近7年分閲覧可能(所轄の各税務署窓口では直近10年分の閲覧が可能)。
■固定資産評価額(市町村長(東京都23区内の場合は都知事)が決定するもので,固定資産税や訴訟提起時の印紙代の基準となるもの)
*公示地価×70%程度
*当該年度の1月1日時点の価格であり原則3年毎に改定され(直近の評価替えは平成30年ですので,次回評価替えは令和3年となります),毎年4月1日から最新年度の評価証明書が取得可能となる(一般公表はされない)。
■査定価格(売却スタートから,約3か月以内に成約可能と思われる価格)
*査定業者により定義が多少異なる場合あり。
■売出価格(売却スタート時の価格)
*査定業者により定義が多少異なる場合あり。
■実勢価格(実際の売却価格で,いわゆる時価または市場価格のこと)
*流通性比率等により,都心部では,公示地価を大きく上回る場合もあるし,逆に地方では公示地価を下回ることもある。
【2】それでは,頭書事例のような場合,不動産価額の下落に対応する損害賠償金額の算定する際に,いかなる基準を用いるべきでしょうか。 この点につき【東京地裁平成16年9月27日判決】は以下のとおり判示しました。
(1)公示価格及び地価調査価格(公示価格等)について

土地の価格は,地域を異にする場合はもとより,同一の近隣地域に所在するものであっても,地積,形状,接面道路の状況のほか,人口,産業構造,団地の開発,道路・ガス等の整備,大型店舗の開店等個別の価格を形成する要因の違いに応じて異なるものであり,標準地の近隣に所在する土地であっても,公示価格等と均衡のとれた価格を算定するに当たっては,標準地と当該土地との個々の価格を形成する要因を十分比較する必要があり,適正な地価の算出は容易ではない。

公示価格については,地方では参考にする取引事例が都市部に比べ格段に少なく,実勢価格を反映していない,地方自治体や金融機関への配慮がある,安易な鑑定手法である等の問題点の推摘があり,特に,本件土地のような大規模開発地については,不確定な要素が多く,取引実績がないことから,公示価格等がそのまま妥当するものではない

しかし,公示価格の鑑定評価の基準は,近傍類地の取引価格から算定される推定の価格(比準価格),近傍類地の地代等から算定される推定の価格(収益価格)及び同等の効用を有する土地の造成に要する費用の額(積算価格)を勘案して,これを行なわれなければならないとされており(地価公示法四条),二人以上の不動産鑑定士等が,同一地点について,市場性(比準価格),収益性(収益価格)及び費用性(積算価格)から合理的に求め,その開差を調整して一つの鑑定評価額にまとめあげるものであり,一般の土地の取引価格に対する指標の提供(同法一条の二),不動産鑑定士等の鑑定評価の規準(同法八条),公共用地の取得価格の算定の規準(同法九系),収用委員会の補償金額の算定の規準(同法一〇条)などの役割があり,特殊な事情がない取引において成立すると認められる価格(正常な価格)を示すもので,近隣地域の標準的な画地の価格であるとされている。地価調査価格は,公示価格を補足する役割を担うものであるが,価格の信頼性・評価手法は公示価格に準じられているものである。

したがって,公示価格等には前記のような難点・問題点があり,本件においては,東海村(茨城東海)の基準地が平成六年から平成一〇年までの間に二か所で変わっており,本件土地が大規模開発地であるという事情があるとしても,なお,本件臨界事故が本件土地の価格に与えた影響を推知するための重要な資料になると考えられる。

(2)当初設定価格と実際の売出価格

当初設定価格については,その価格であれば,完売あるいはそれに近いような売却が見込めるということを判断できるだけの客観的な資料が存在していたと認めることはできず,本件臨界事故がなかったとしたら,平成一三年三月には当初設定価格で,平成一四年三月には当初設定価格から土地の下落率三パーセントを控除した価格で本件土地が売却できたとの原告の主張については,これを認めることができない。

実際の売出価格についても,原告が実際の売出価格を一坪当たり平均二一万円とした際に考慮したのは,本件臨界事故後の東海村及びその周辺の不動産取引の実情,特に南台団地が一坪当たり一八万円から二〇万円程度で販売していることや,常葉台団地,さわ野杜団地等で実質的に売出価格から値引きして販売しているとの情報や,販売開始前(平成一三年六月)の現地説明会等の顧客の声,不動産鑑定士の意見であったのは,さきに認定したとおりであり,実際の売出価格についても,完売あるいはそれに近いような売却が見込める価格が一坪当たり平均二一万円であるという客観的な資料は存在しない(一坪当たり平均二一万円で売り出す場合と,二一万円より高い価格で売り出す場合とで売れ行きに差があるかどうかも分からない。)。

したがって,そもそも,当初設定価格と実際の売出価格との差額をもって損害とする原告の主張はこれを認めることはできない

(3)本件臨界事故と本件土地の価格の下落の因果関係について

本件臨界事故直後に本件土地を含む東海村の土地の価格が下落した理由には,本件臨界事故によって本件土地が放射能に汚染されているおそれがあるということや被告が再び同様の事故を起こすおそれがあるということもあったものと認められるが,それだけではなく,本件臨界事故によって,本件土地の近くに原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性が再認識されたということがあったものと認められる。

しかし,このような住民による一般的な危険性の再認識は,本件臨界事故の場合ほど顕著ではないにしても,平成九年三月に東海村に所在する核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団(平成一〇年に改組)のアスファルト固化処理施設で国際原子力事象評価尺度(NIES)でレベル三(重大な異常事象)と評価された火災爆発事故が発生した際にも,生じていたものと考えられる。

本件土地は,本件臨界事故時には既に売出しが予定されていたものであるから,本件臨界事故が,東海村の住民に本件土地の放射能汚染のおそれや,被告が再び同様の事故を起こすおそれを意識させ,その結果,本件土地の価格の下落が生じたのであれば,その下落は,本件臨界事故と相当因果関係のある損害につながるものということができるが,本件臨界事故が,原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性を再認識させ,それが本件土地の価格の下落の主たる原因であるとすると,原子力関連施設が存在すること自体から生じる危険性は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないから,被告が主張するとおり,本件臨界事故と本件土地の価格の下落との間に相当因果関係を認めることはできない(そのような一般的な危険性の再認識は,東海村だけに限られず,日本各地の原子力施設の存在する土地に同様に生じうる。)。

したがって,仮に本件土地の価格に本件臨界事故の影響が残っていたとしても,それは,原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性の再認識によって生じていたものと推認されるので,本件臨界事故と相当因果関係のある損害につながるものと認めることはできない
【結論】
以上より,種々の評価基準の中でとりわけ「公示地価」(「公示価格」及び「地価調査価格」)は,(完全な基準とはいえないまでも)裁判実務において,損害賠償の前提として不動産価額を算定する際の一応の基準とされています。したがって,頭書事例のようなケースで損害賠償請求訴訟を提起する場合には,事前に国土交通省の検索システム等で,公示地価をしっかりと調査しておく必要があります。

尚,余談ですが,不動産の明け渡し等の訴訟を提起する際に裁判所に納付する印紙代(税金)については,「固定資産評価額」を基準に算定することとされています。⇒建物明渡(強制執行)の費用


〒102-0083 東京都千代田区麹町4-3-4 宮ビル4階・5階
電話 03-3265-9601 FAX 03-3265-9602

Copyright © TAGO IWATA& TAMURA. All Rights Reserved.