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投資用不動産の利回り・収益性に関する説明義務≪全画面 

更新:2025年10月11日 
 事例

投資用不動産の売買において,契約時にした将来の運用利益,収益性,値上がり等についての予測説明(シュミレーション)が外れた場合,損害賠償請求や消費者契約法に基づく売買契約の取消等ができるか。

 解説

1.断定的判断の提供とは
宅建業者は,不動産を販売する際,「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない」とされており(宅建業法47条の2第1項),これに違反した場合,刑事罰こそありませんが,1年以内の業務停止処分を課せられる可能性があります(宅建業法65条2項2号及び4項2号)。

また,買主が一般消費者であった場合には,売買契約の取消事由にもなります(消費者契約法4条1項2号)。

この点,宅建業法(47条の2第1項)では「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為」,消費者契約法(4条1項2号)では「将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」と規定されており,若干の文言の違いはあるものの,基本的には両者は共通する(宅建業法上の断定的判断の提供に該当するなら消費者契約法上の断定的判断の提供にも該当する)と考えて良いと思われます。

なお,宅建業者は,重要事項の説明義務も負い(宅建業法35条1項),当該重要事項につき「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」もしてはならないとされていますが,価格の値上がり等将来における変動が不確実な事項は,基本的には,重要事項の説明義務の問題というより断定的判断の提供の問題になると考えられますが(消費者契約法に関するものですが【最高裁平成22年3月30日判決】参照),例えば「将来の値下がりリスクを説明しなかった」等として重要事項の説明義務が問題とされることもあり得ます(【東京地裁平成24年3月27日判決】参照)。

この点,一般的な経済事情及び不動産市況を述べたに過ぎない場合や極めて抽象的に「将来売ることもできる」と発言しただけでは,断定的判断の提供とは通常は評価されません【東京地裁平成28年9月5日判決】【東京地裁令和3年7月20日判決】)。

また,「売却プラン」や「利回りシミュレーション」など,投資用物件の利回り等に関する説明は,予測の一応の根拠(データ)とこれに基づき合理的に予想される数値を述べる程度の説明は,「絶対」とか「必ず」というような文言を用いない限り,通常の判断能力を有する消費者であればこれを誤信(盲信)することはなく,「提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認」は生じないのが通常であるため,断定的判断の提供と評価される可能性は低いと思われます。

もっとも,将来予測を説明する際に交付する書面等には,一見して想定通りの収入が得られるものと誤信しやすい文言・デザインは避け,「あくまでも想定であり,確実に確保できることを保証するものではない」旨を明記して説明しておくべきであると考えられます(【東京地裁平成24年3月27日判決】【東京地裁平成28年4月28日判決】参照)。

【宅建業法47条の2第1項】
宅地建物取引業者又はその代理人、使用人その他の従業者(以下この条において「宅地建物取引業者等」という。)は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。

【消費者契約法4条1項】
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

【最高裁平成22年3月30日判決】
消費者契約法4条2項本文にいう「重要事項」とは,同条4項において,当該消費者契約の目的となるものの「質,用途その他の内容」又は「対価その他の取引条件」をいうものと定義されているのであって,同条1項2号では断定的判断の提供の対象となる事項につき「将来におけるその価額,将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項」と明示されているのとは異なり,同条2項,4項では商品先物取引の委託契約に係る将来における当該商品の価格など将来における変動が不確実な事項を含意するような文言は用いられていない。
そうすると,本件契約において,将来における金の価格は「重要事項」に当たらないと解するのが相当であって,上告人が,被上告人に対し,将来における金の価格が暴落する可能性を示す事実を告げなかったからといって,同条2項本文により本件契約の申込みの意思表示を取り消すことはできないというべきである。

【東京地裁平成24年3月27日判決】
「将来売却プラン」は,物件1及び2の価格の下落が10%程度が最大限であるかのように示され,20%以上の下落等については何ら記載されておらず,かつ,口頭によりそれらを説明して,物件1及び2についての投資の危険性を説明した形跡は見当たらない
また,原告が,同時期に示された書面は家賃収入が30年以上も同じ家賃を前提とし(確かに,※の中で家賃の変動があることを示唆しているが,同書面は一見して同じ家賃収入が得られるものと誤信しやすい内容になっているものと認める。),原告が関心を示していた毎月の支払が小遣い程度で収まるとの点においても同書面は原告に誤認させる要素を多分に含んでいるものと認められる。
したがって,原告の上記誤信は無理もないものであって,被告に重要な事項について原告に不利益となる事実を故意に告げなかったものと認める。
<中略>
本件契約1及び2の締結にあたり,投資物件の利回りよりも借入金の金利が低く,収益を挙げられることが絶対条件であり,投資物件の利回りよりも借入金の金利が高くなった場合には,多額の負債を抱え込むことを説明する必要があるところ,そのような説明がなされた形跡は見当たらないこと,投資マンションは,長期の住宅ローンを組むものであるから,自己の所有物になる時期は遠く,その支払が完了した場合にも経年劣化によりマンションの資産価値はほとんどないとの場合もあるため,単に生命保険の代わりとの説明では不十分であること,物件1及び2の入居者が居た場合であっても当該入居者が賃料を支払わない場合などの説明はなされていないことなど,被告は,原告に対し,本件契約1及び2の締結の際の説明が不十分である。 
被告は,原告に対し,多額の融資申込が拒否されないように登記費用などについて被告が負担することを秘すように指示し,他方,将来的に家賃収入が減ったり,入居者が見つからなかった場合に原告の小遣いではローンの返済ができなくなることについて十分説明をしていなかったものと認める。
以上の事実が認められる。とすると,被告は,原告に対し,本件契約1及び2の締結の際,重要事項である物件1及び2の客観的な市場価格を提示していないこと,家賃収入が30年以上に亘り一定であるなど非現実的なシュミレーションを提示し,原告に月々の返済が小遣い程度で賄えると誤信させたこと及びその他原告が物件1及び2についての不動産投資をするに当たっての不利益な事情を十分説明していなかったなど消費者契約法にいう重要事項について原告に不利益となる事実を故意に告げなかったため,原告はそのような事実が存在しないと誤認し,それによって原告は本件契約1及び2を締結したものであるから,同法4条2項による取消しが認められる。

【東京地裁平成28年4月28日判決】
被告が用いたチラシ及び資料等には「想定年間利回り:約5.02%」,「尚,上記年間収入はあくまでも想定であり,当社は予定賃料収入が確実に確保できることを保証するものではありません」,「この他にもプランをご用意しております 自宅併用賃貸プラン・3階建プラン等etc」,「※上記プランは一例です。プランはお客様がご自由に決定できます。※上記プランの場合,建物本体価格のほかに,地盤改良費等が必要になる場合がございます。」などとの記載があったのであり,上記記載を踏まえれば,これを読んだ原告が上記チラシ記載の金額の融資を受けた上で同記載の4階建建物を建築でき,その場合に空室等が生じることなく同チラシ記載の収益が確実に得られると認識するに至るということはおよそ考え難く,そのような誤信を生じていた旨をいう原告の主張,供述は採用の限りでない。
<中略>
被告が用いたチラシの記載内容は上記のとおりであり,本件土地上に建築する建物に関する融資金額の見込みや賃料収入の見込みという不確実な事項につき断定的な判断の提供がされたものと認めることはできない

【東京地裁平成28年9月5日判決】
本件不動産につき東京オリンピックの開催,資材の高騰により売却益を見込めること,山手線内に存するという立地条件から値下がりがしにくいこと,空室になっても被告らが借主を見付けてくる自信がある旨説明したことが認められる。
しかしながら,東京オリンピックの開催や資材の高騰,立地条件の優位性による値下がりリスクへの影響の有無,程度は一般的な経済事情,不動産市況に関わるものであり,原告が投資経験を有しておらず,不動産に関係する仕事をしていなかったとしても,東証一部上場企業の広報部に所属していたという原告の属性に照らせば,東京オリンピックの開催等による売却益等に係る説明が投資用不動産の売買を担当する営業担当者としての見込みを述べたものにすぎないことは原告において容易に認識し得るものであったというべきであり,原告に対して説明された一般的なリスクの存在を確定的に否定するものと認めることはできない。
<中略>
本件売買契約の際の説明は,仮に原告に損失が生じる場合についての具体的なシミュレーションを示していないとしても,断定的判断とは評価できない

【東京地裁令和3年7月20日判決】
原告が主張する「必要なくなったら売ればいい。100万円で片付く。」との説明は,極めて抽象的な内容であって,そもそも消費者契約法4条1項2号に規定する「将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」に該当するものとはいい難い。

2.税務等の専門的事項に関する説明義務
住宅ローン金利変動や住宅ローン特別控除要件等税務に関する説明は,あえて販売業者自身が積極的に説明しなければならない「重要事項」とはいえず(【東京地裁平成28年1月22日判決】仲介業者の説明義務に関するものですが【東京地裁平成22年10月18日判決】参照),これを説明しなかったからといって原則として重要事項の不告知等には当たらないと考えられます。

もっとも,税務上有利であること等を積極的に示して勧誘し,買主もそれを主たる動機として購入を決断したと認められる場合には,当該税務上の調査。説明義務が肯定される場合があります(仲介業者の説明義務に関するものですが【大阪高裁平成12年8月31日判決】参照)。

また,これにつき積極的に説明をし,かつその説明内容に誤りがあった場合には,民法上(信義則上)の説明義務違反を問われる可能性があるため,多湖・岩田・田村法律事務所では,不動産の品質等に関すること以外の(いわば専門外の)事項については,「正確なところはご自身で銀行や税務署に確認して欲しい」等と回答するよう助言しています。

【大阪高裁平成12年8月31日判決】
不動産仲介業者が取引当事者の同一性、目的物の権利関係等にとどまらず、その仲介する不動産取引による課税の有無についても調査確認すべき業務上の注意義務を負うべきか否かは問題がある。
しかし、不動産仲介業者又はその従業員は、不動産取引の専門家として、不動産自体に関する知識だけでなく、その取引に必要な民法、税法その他の法律上の知識を有することが一般に期待されているものであることに鑑みると、少なくとも、仲介業者又はその従業員が課税上有利であることを示して不動産取引を勧め、委託者がそのことを主たる動機として仲介を委託したという事情がある場合には、仲介業者は、不動産取引による課税の有無あるいは課税額等につき調査確認してこれを委託者に説明し、同人に不測の損害を与えないよう配慮すべき業務上の注意義務を負うと解するのが相当である。

【東京地裁平成22年10月18日判決】
原告は,被告Aについても,原告に対し,源泉徴収義務があることを告知すべき義務があると主張するが,被告Aは,宅地建物取引業者として,原告との間で,不動産売買の媒介の契約を締結していたに過ぎないし,もともと宅地建物取引業者たる被告Aにおいて,その重要事項説明の内容として,原告が負担すべき税金の内容や金額,源泉徴収義務の存否等についてまで,これを調査,報告すべき義務を負うものではない

【東京地裁平成28年1月22日判決】
※交付された書面(本件書面)に「住宅ローン控除の代表的な適用要件」として「以下要件の全てを満たすことが必要です。」旨の記載があり,要件として,「取得する不動産(以下「購入物件」という。)が自己居住用であること」,「購入物件の引渡しから6ヶ月以内に入居し,適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること」等が記載されていた事案。

原告は,一般的には,自己居住用として不動産を購入する場合であっても,将来的に賃貸に出すことはよくあることであり,その場合に,金利が変動するか否かという情報は,その時点で不動産を購入すべきか否かを判断するために極めて重要な要素であり,買主から質問があるか否かにかかわらず,賃貸に出した場合に金利が変動する可能性があることは,法【※消費者契約法】4条2項所定の重要事項に該当するところ,Aは,重要事項について,原告に利益となる旨を告げ,かつ,不利益事実を故意に告げなかった旨主張する。
しかしながら,不動産の販売業者である被告とは別に,金融機関の担当者がローンについて原告に対する説明を行っていることなどに照らし,買主(原告)からの質問の有無にかかわらず,賃貸に出した場合に,ローンの金利が変更される可能性があることにつき,前記重要事項に該当するということはできない
<中略>
〔1〕Aにおいて,原告が,将来,本件不動産を賃貸することを検討していると明確に把握するような態様において,原告がこれに係る発言したとまでは認められないこと,及び,〔2〕本件書面の記載上,本件不動産を賃貸に出した場合には,同控除の適用が受けられないことは明確であることからして,Aが,口頭で,本件不動産を賃貸に出した場合に同控除の適用が受けられない旨を説明しなかったからといって,法【※消費者契約法】4条2項所定の故意による重要事項についての不利益事実の不告知に該当するということはできない。
※【 】は筆者加筆。

 結論

以上より,「売却プラン」や「利回りシミュレーション」など,投資用物件の利回り等に関する説明は,予測の一応の根拠(データ)とこれに基づき合理的に予想される数値を述べる程度の説明をすれば,「絶対」とか「必ず」というような文言を用いない限り,通常の判断能力を有する消費者であればこれを誤信(盲信)することはなく,「提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認」は生じないから,「断定的判断の提供」と評価される可能性は低いと考えられます。

不合理なデータに基づくシミュレーションや利益だけを強調しリスクを併記しない場合は,重要事項に関する不利益事実の不告知となる可能性があるので注意が必要です。

 実務上の注意点

3.宅建業者の守秘義務
宅建業者は,「正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない」とされており(宅建業法45条),また,宅建業法の適用のない取引であっても,多くの場合,契約上,秘密保持義務が定められているのが通常です。

現に賃貸中の投資用物件の場合は,これを購入した買主は,賃貸人の地位の移転により賃借人と直接契約関係に立たされることから,買主にとって,当該物件を購入するか否かを判断するにあたり,現在締結されている賃貸借契約の内容及び経過(賃料,契約期間,定期借家か否か,賃借人の身元,賃料滞納歴等)に関する情報は非常に重要となります。

そこで,売主又は仲介たる宅建業者が,賃借人の承諾なく,買主候補者に対し,事前にこれらの賃貸借契約の内容及び経緯に関する情報を提供する行為が,宅建業法上又は契約上の守秘義務(秘密保持義務)に違反しないか問題になります。

この点,契約当事者において現に紛争が生じた場合には,各契約者が自らの権利保持のために必要な範囲で本件賃貸借契約の内容を第三者に開示することは許されると解されています(【東京地裁令和2年6月25日判決】)。

そして,現に紛争が生じていないとしても,紛争予防等のために予め弁護士等の専門家に情報開示して相談・助言を求めること等は一般的に行われることであって,仮に一切開示できないとすれば,自己の正当な権利行使が制限される不当な結果となります。

他方で,開示先が守秘義務を負う限り,開示された情報が伝播することも可及的に防止されます。

従って,賃貸物件の売却という正当な権利行使を実現するために必要な範囲で,弁護士等法令上の守秘義務を負う者もしくは秘密保持誓約書を差し入れる等契約上の守秘義務を負う者に対し,賃貸借契約の内容及び経緯に関する情報を提供する行為は,守秘義務には違反しないと考えられます。

もっとも,トラブルを避けるため,多湖・岩田・田村法律事務所では,予め賃貸借契約書に,次のような【条項例】を規定しておくよう助言しています。

【条項例】
当事者は,本件賃貸借契約の内容,経緯及び本件賃貸借契約に関連して相手方から提供を受けた情報について,相手方の承諾がない限り,第三者(ただし,次の各号の者で法令上若しくは契約上の守秘義務を負う者は除く。)に開示・漏洩してはならない。
① 法令に基づき開示請求した公的機関等
② 弁護士,税理士等法令上の守秘義務を負う専門業者
③ 当事者の子会社等資本関係を有する関係会社
④ 本件賃貸借契約が転貸借の場合の賃貸人又は本物件所有者
⑤ 本物件又は本件賃貸借契約の承継候補者
⑥ 前各号のほか当事者又は開示先において正当な理由がある開示先

また,宅建業者が買主側の場合で転売先もすでに決まっている場合,買主たる宅建業者として,売主に対し,転売先が決まっている旨や転売金額を伝える義務があるかについては,買主側の業者は売主に対し宅建業法35条の重要事項説明義務を負うものではないこと(岡本正治ほか『逐条解説 宅地建物取引業法(三訂版)』〔大成出版社 2020年〕457頁,458頁)及び転売先との間における守秘義務を根拠に一般的には否定されると解されます。

もっとも,売主が転売先への直接売却を希望していたのにこれを阻止するため「他に購入意思を示している者はいない」等積極的に虚偽の事実を告げたような場合は,消費者契約法4条1項「重要事項について事実と異なることを告げること」あるいは宅建業法47条の2第1項「断定的判断を提供する行為」に該当し(なお,宅建業法35条と異なり宅建業法47条の2第1項は売主に対する行為も含むことにつき岡本正治ほか『逐条解説 宅地建物取引業法(三訂版)』〔大成出版社 2020年〕821頁,842頁),不法行為(民法709条)が成立する可能性があります(【東京高裁令和元年10月31日判決】)。

【宅建業法45条】
宅地建物取引業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。宅地建物取引業を営まなくなつた後であつても、また同様とする。

【東京高裁令和元年10月31日判決】
被控訴人は,控訴人に対し,①Aが本件不動産を購入する意向があるのに,Aは買わないと告げ,②本件不動産の時価相当額は,少なくとも本件土地の固定資産評価額である約1454万円を下回ることはないと認められるにもかかわらず,本件不動産の適正価格は200万円程度にしかならないと告げたことによって,控訴人に対する欺罔行為を行い,その旨錯誤に陥った控訴人から本件不動産の売却を受けたと認められる。
したがって,被控訴人は,控訴人に対し,民法709条の不法行為責任を負う。

【東京地裁令和2年6月25日判決】
本件賃貸借契約の約款25条に定められた守秘義務については,契約条項の合理的意思解釈として,契約当事者において紛争が生じた場合には,各契約者が自らの権利保持のために必要な範囲で本件賃貸借契約の内容を第三者に開示することは許されると解するのが相当である。
これを本件についてみるに,原状回復工事の内容や費用の妥当性について,外部の専門家の意見を聞くことは賃借人として必要な行為であり,実質的にも秘密保持の合理性はなく,被告会社がA【※原状回復費の適正価格を見積もり主に賃借人側のコンサルタントとしてその減額のための助言をすることを主たる目的とする会社】に原状回復工事の範囲について相談するにあたって,本件賃貸借契約の内容を開示したことが本件賃貸借契約の守秘義務に違反するとは認め難い。
※【 】は筆者加筆。

※本頁は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。


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