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不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
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投資用不動産の利回り・収益性に関する説明義務
*本項は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。
【事例】マンションの利回り・将来の金額に関する説明義務
投資用不動産の売買において,契約時にした将来の運用利益,収益性についての予測説明(シュミレーション)が外れた場合,消費者契約法に基づくき売買契約を取り消すことができるか。

【解説】多湖・岩田・田村法律事務所/平成31年3月版
【1】消費者契約法4条1項2号では,「将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること」により顧客(消費者)に対し,「当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認」を与えた場合(いわゆる断定的判断の提供),契約を取り消すことができるとされています。要するに,「値上がり確実」との勧誘文句を信じてマンションを購入したにも関わらず,後日価格が暴落した場合には,マンション売買契約を取り消すことができるというものです。
【2】なお,消費者契約法4条2項では,「不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより,当該事実が存在しないとの誤認」をした場合(いわゆる重要事項の不告知)にも,契約を取り消せる旨が規定されています。
この点,「値上がり確実」と説明したということは裏を返せば,「値下がりのリスクを説明しなかった」ということになりますので,同法4条2項の問題とも思われますが,同条4条2項(及び同項の「重要事項」の定義規定である同条5項)では,「将来における当該商品の価格など将来における変動が不確実な事項を含意するような文言は用いられていない」ため,将来のマンションの価格に関する説明は,重要事項の不告知(同条2項)の問題ではなく,「断定的判断の提供」(同条1項2号)の問題となります(【最高裁平成22年3月30日判決】
【3】そして,居住用不動産と異なり投資用不動産であれば,顧客にとっては,眺望であるとか,周辺の住環境に関する事項より,収益物件(賃貸物件)であれば利回りや空室リスクが,転売物件であれば将来の値上がり等が,重要な関心事(購入動機)となります。
【4】もっとも,このような事情は,景気等将来の不確かな事情に左右されるため,確定的な予測はそもそも困難であり,当初の予測が外れたからといって全て説明義務違反として損害賠償請求をされたり,断定的判断の提供として契約取消をされるというのでは,不動産販売会社にとって非常に酷な結果となります(顧客としても,投資用不動産である以上,一定の投資リスクすなわち将来損をする可能性を十分に覚悟の上で購入しているはずですので,通常の判断能力を有する一般人であれば,仮に「値上がり確実」等の美辞麗句を言われても,それを鵜呑みにすることはないと考えられます)。
【5】この点,以下の裁判例に照らしても,単に将来予測が外れたというだけでは,説明義務違反や契約取消はまず認められないと考えられます。
【東京高裁平成11年2月23日判決】
予想売却価格はあくまでも将来の予測であり,予測の一応の根拠を示した上で予想される数値を述べているのであるから,これをもって説明として不十分であるということはできない。それ以上に,いかなる要因によって本件商品の将来の価格が形成されるのか,どのようなリスクが生じうるのかといったことは,将来の経済情勢等の動向によるのであって,それは,複雑で多岐にわたる要素と様々な錯綜した要因によるのであるから,そもそも確実な予測など不可能な事柄であって,これを説明することは困難なことといわざるをえない。
【東京地裁平成7年9月6日判決】
本件売買契約当時においては,所謂バブル経済が崩壊し,不動産市況は低迷期に入っていたものであり,購入した建物が三年後に一・五倍の価格になるということは一般的にも予想しがたかったものというべきであり,原告の学歴や社会的地位及び前記一のとおり本件売買契約については慎重な対応をしていたことに鑑みると,原告において右価格による転売ができると軽々に信じたとは認めがたい
【東京地裁平成28年1月22日判決】
人気が上がっていって,将来的な資産も上がっていくというような説明を受けたとする原告の供述を前提としても,原告の学歴や職歴に照らし,原告は,一般人と同様あるいは一般人以上の知識と判断力を有していることがうかがわれることを考慮すると,原告が,「本件不動産を所有していれば資産として損することはない」などと誤認したとは容易には認め難く,消費者契約法4条1項2号所定の取消事由があるとは認められない。
【6】他方で,【東京地裁平成24年3月27日判決】は,「不動産価格の下落が精々10%程度であると誤信させられ,予想できない急激な不動産価格の下落がない限りいつでも売却できるものと誤信したこと」,「新築マンションの場合,購入後中古マンション扱いとなるため,売却価格は分譲価格の6ないし7割となるところ,そのような説明をされておらず,いつでもローンの残債が処理できる価格で売却できると誤信したこと」,「客観的な市場価格を提示していないこと,家賃収入が30年以上に亘り一定であるなど非現実的なシュミレーションを提示し,原告に月々の返済が小遣い程度で賄えると誤信させたこと」などを理由に,消費者契約法4条2項による取り消しを認めました。もっとも,私見ですが,前掲【最高裁平成22年3月30日判決】に鑑みれば,将来の賃料シュミレーションなどは,消費者契約法4条2項(重要事項の不告知)というよりは,同条1項2号(断定的判断の提供)の問題であるとも思えます。
【結論】
以上より,「売却プラン」や「利回りシミュレーション」など,投資用不動産の利回り等収益性に関する説明は,将来予測の一応の根拠(データ)とこれに基づき合理的に予想される数値(シュミレーション)の説明をしただけでは,通常の判断能力を有する消費者であれば,当該売却プランあるいは利回りシュミレーションの内容が「確実であるとの誤認」は生じませんので,シュミレーション通りに行かなかったからといって,契約を取り消すことは原則としてできません。
これに対し,〔世蕕に不合理なデータに基づく非現実的なシュミレーションを断定的に示し,他方で,当該シュミレーションに影響するマイナス要因(賃料の下落や空室リスク)については敢えて一切説明せず,それにより当該シュミレーションが確実であると誤信させたような場合には,「重要事項の不告知」あるいは「断定的判断の提供」として,契約を取り消すことができると考えられます。


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