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更新:2024年7月17日 
 事例

登記上の地目が「田」「畑」となっている土地(農地)の売買契約の締結に必要となる手続。

 解説

1.農地とは
不動産登記法上,土地の地目は,その主な用途により、、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地の,計23種類に区分されて登記されます(不動産登記法34条1項3号,不動産登記規則99条)。

登記実務上,上記のうち「」は「農耕地で用水を利用して耕作する土地」、「」は「農耕地で用水を利用しないで耕作する土地」と定義づけられています(不動産登記事務取扱手続準則68条1号及び2号)。

他方,農地法上,農地とは,「耕作の目的に供される土地」をいい(農地法2条1項),主観的使用目的や公簿上の地目ではなく,その土地の事実状態に基づいて客観的に判定されますが(【大阪地裁平成22年10月15日判決】),公簿上(登記上)の地目が「田」及び「畑」となっている土地は,原則として,農地法上の「農地」に該当すると事実上推認されます。

【不動産登記法34条1項】
土地の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 土地の所在する市、区、郡、町、村及び字

二 地番

三 地目

四 地積

【不動産登記規則99条】
地目は、土地の主な用途により、、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。

【不動産登記事務取扱手続準則68条】※平成17年2月25日法務省民二第456号通達(最終改正令和6年4月1日)
次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。

一 田 農耕地で用水を利用して耕作する土地

二 畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地

三 以下省略

【農地法2条1項】
この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。

【大阪地裁平成22年10月15日判決】
農地法上の「農地」とは,耕作の目的に供される土地をいう(農地法2条1項)。
そして,耕作とは土地に労資を加え,肥培管理を行なって作物を栽培することであり,ある土地が耕作の目的に供されているかどうかは,その主観的使用目的や公簿上の地目により決すべきではなく,その土地の事実状態に基づいて客観的に判定すべきである。

2.農地の売買の有効要件
農地を住宅建設用地や太陽光発電事業用地とするために売買するには,原則として,売買契約当事者から,当該土地の所在する市区町村の農業委員会に申請し,都道府県知事(農林水産大臣指定市町村の区域内にあっては市町村長)の許可(都市計画法7条1項の市街化区域内(同法23条1項の協議を要する場合は当該協議が調ったものに限る)の場合は届出)が必要になります(農地法5条1項)。

この許可(実務上「農地転用許可」「農転許可」といいます)を取得していない限り,売買契約に基づく所有権移転の効果は生じません(農地法3条6項,5条3項)。

また,市街化区域内の場合は「許可」ではなく「届出」(実務上「農地転用届」「農転届」といいます。)で足りるところ,この届出については,「許可」と違い届出をしない売買契約を無効とする農地法3条6項,5条3項のような直接的な明文規定はありませんが,許可と同様,所有権移転の効力発生要件と解されていますので(【千葉地裁昭和47年3月8日判決】),やはり届出をしない限り売買契約に基づく所有権移転の効果は生じません。

そして,「農地」の中でも,特に①集団農地(農地法施行令5条1号),②土地改良事業対象農地(同条2号),③生産性農地(同条3号)は,「良好な営農条件を備えている農地」として,「第1種農地」に分類され,原則として農地転用許可が認められません(農地法4条6項1号ロ柱書,農林水産省「農業振興地域制度、農地転用許可制度等について」【「農地法の運用について」の制定について】第2・1・(1)イ(イ)本文参照)。

例えば,表題登記欄に「土地改良法による換地処分」と記載された農地で,農業用用排水施設の新設又は変更、区画整理、農地の造成等,農地法施行令5条2号(農地法施行規則40条)の「特定土地改良事業等」の施行区域内にある農地は,「土地改良事業対象農地」として,「第1種農地」に分類されるため,原則として農地転用許可は認められません。

もっとも,農地法上の「農地」の判断は,現況主義が採られています(農地法3条1項の許可につき【最高裁昭和48年12月11日判決】,同法5条1項の許可又は届出につき【最高裁昭和50年11月28日判決】)。

従って,現況がもはや「農地」とはいえない土地については,農地法に基づく農地転用許可や届出がなくても,売買契約自体は原則として有効となります。

ただし,この場合も,不動産登記実務上,売買契約に基づく所有権移転登記をするためには,登記上の地目を農地(「田」「畑」)以外に(例えば「雑種地」等に)変更する必要があり,当該地目変更申請の際には,事前に当該土地の所在する市区町村の農業委員会から「非農地証明書」の交付を受けてこれを添付する必要があります(なお,正規の農地転用許可に基づく転用により非農地化した土地に対する非農地の証明書を特に「現況証明書」といいますが,市区町村によっては両者の呼称を厳密に区別せず,事実上,「非農地証明書」=「現況証明書」と扱っている場合もあります)。

なお,登記実務上,所有権移転登記手続を命ずる裁判所の判決の理由中で非農地であることが認定されている場合には,当該判決正本に基づき所有権移転登記申請するに当たり非農地証明書を添付することは要しませんが,これに先だって地目変更の登記を要するとされています(平成6年1月17日民三第373号民事局第三課長回答)。

この非農地証明書の交付要件については,各市区町村で一定の厳格な基準が設けられています。

例えば,前記のように表題登記欄に「土地改良法による換地処分」と記載され「特定土地改良事業等」の施行区域内にある土地については,仮に現況が既に「農地」でなく,農地転用が不要な非農地であっても,「非農地証明書」の交付要件として,市区町村によって,「土地改良等の基盤整備事業の実施または計画のされていないもの」「土地改良事業等の農業に対する公共投資の対象となった農地内でないこと」等の要件が課されている場合には,交付を受けられない可能性があります(群馬県みどり市熊本県宇城市宮崎県日南市等)。

また,土地改良区(当該土地改良事業を行う目的で設立された法人)の受益地となっている場合には,別途,「土地改良区の意見書」等の添付が「非農地証明書」の交付要件とされていることがあります(茨城県鹿嶋市愛知県新城市等)。

従って,多湖・岩田・田村法律事務所では,登記上の地目が「田」「畑」になっている土地の売買については,仮に現況がすでに非農地化している土地であっても,念のため,「特定土地改良事業等」の施行区域に含まれていないか,土地改良区の受益地となっていないか等,事前に所轄の市区町村に必ず確認するよう助言しています。

また,現況主義である以上,逆に,登記上の地目が農地以外(「山林」等)となっていても,現況が「農地」(畑,田)として農地台帳に掲載されていれば,農地法の規制を受けることになりますので,多湖・岩田・田村法律事務所の経験上,特に登記上の地目が「山林」となっているものについては,固定資産課税証明書上の「現況地目」を確認するほか,農地法52条の3第1項に基づき公表が義務付けられている農地台帳に農地として掲載されていないか農林水産省「農地ナビ」等で確認しておく必要があります。

【農地法3条】
1 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。

一 以下省略

2~5 省略

6 第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない

【農地法4条1項】
農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

一~六 省略

七 市街化区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の市街化区域と定められた区域(同法第二十三条第一項の規定による協議を要する場合にあつては、当該協議が調つたものに限る。)をいう。)内にある農地を、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにする場合

八 省略

【農地法4条6項1号】
第一項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、第一号及び第二号に掲げる場合において、土地収用法第二十六条第一項の規定による告示(他の法律の規定による告示又は公告で同項の規定による告示とみなされるものを含む。次条第二項において同じ。)に係る事業の用に供するため農地を農地以外のものにしようとするとき、第一号イに掲げる農地を農業振興地域の整備に関する法律第八条第四項に規定する農用地利用計画(以下単に「農用地利用計画」という。)において指定された用途に供するため農地以外のものにしようとするときその他政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。

一 次に掲げる農地を農地以外のものにしようとする場合

イ 農用地区域(農業振興地域の整備に関する法律第八条第二項第一号に規定する農用地区域をいう。以下同じ。)内にある農地

ロ イに掲げる農地以外の農地で、集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地として政令で定めるもの(市街化調整区域(都市計画法第七条第一項の市街化調整区域をいう。以下同じ。)内にある政令で定める農地以外の農地にあつては、次に掲げる農地を除く。)

(1) 市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地で政令で定めるもの

(2) (1)の区域に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地で政令で定めるもの

【農地法5条】
1 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

一~五 省略

六 前条第一項第七号に規定する市街化区域内にある農地又は採草放牧地につき、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地及び採草放牧地以外のものにするためこれらの権利を取得する場合

七 省略

2 省略

3 第三条第五項及び第六項並びに前条第二項から第五項までの規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、同条第四項中「申請書が」とあるのは「申請書が、農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。)にするためこれらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得する行為であつて、」と、「農地を農地以外のものにする行為」とあるのは「農地又はその農地と併せて採草放牧地についてこれらの権利を取得するもの」と読み替えるものとする。

4 以下省略

【農地法52条の3第1項】
農業委員会は、農地に関する情報の活用の促進を図るため、第五十二条の規定による農地に関する情報の提供の一環として、農地台帳に記録された事項(公表することにより個人の権利利益を害するものその他の公表することが適当でないものとして農林水産省令で定めるものを除く。)をインターネットの利用その他の方法により公表するものとする。

【農地法施行令5条】
法第四条第六項第一号ロの良好な営農条件を備えている農地として政令で定めるものは、次に掲げる農地とする。

一 おおむね十ヘクタール以上の規模の一団の農地の区域内にある農地

二 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業又はこれに準ずる事業で、農業用用排水施設の新設又は変更、区画整理、農地の造成その他の農林水産省令で定めるもの(以下「特定土地改良事業等」という。)の施行に係る区域内にある農地

三 傾斜、土性その他の自然的条件からみてその近傍の標準的な農地を超える生産をあげることができると認められる農地

【農地法施行規則40条】
令第五条第二号の農林水産省令で定める事業は、次に掲げる要件を満たしている事業とする。

一 次のいずれかに該当する事業(主として農地又は採草放牧地の災害を防止することを目的とするものを除く。)であること。

イ 農業用用排水施設の新設又は変更

ロ 区画整理

ハ 農地又は採草放牧地の造成(昭和三十五年度以前の年度にその工事に着手した開墾建設工事を除く。)

ニ 埋立て又は干拓

ホ 客土、暗きよ排水その他の農地又は採草放牧地の改良又は保全のため必要な事業

二 次のいずれかに該当する事業であること。

イ 国又は地方公共団体が行う事業

ロ 国又は地方公共団体が直接又は間接に経費の全部又は一部につき補助その他の助成を行う事業

ハ 農業改良資金融通法(昭和三十一年法律第百二号)に基づき公庫から資金の貸付けを受けて行う事業

ニ 公庫から資金の貸付けを受けて行う事業(ハに掲げる事業を除く。)

【「農地法の運用について」の制定について】(最終改正令和6年3月28日付け5経営第3123号・5農振第3229号)第2・1(1)イ(イ)本文
第1種農地の転用は、原則として、許可をすることができない。

【千葉地裁昭和47年3月8日判決】
農地法五条一項三号【※現5条1項7号】所定の県知事への届出行為は、私人の公法行為というべきものであり、県知事の許可と異なり行政行為ではないから講学上のいわゆる補充行為とはいえないけれども、右届出をしないと県知事の許可を受けなければならない法律上の不利益を受けることになるのであるから、結局届出も許可と同様農地の所有権移転を目的とする法律行為そのものの効力発生要件であり、又当事者間に実体上所有権移転の合意がない以上は、形式的に県知事へ届出をなしても所有権移転の効果を生ずることはないものと解される。
※【 】内は筆者加筆。

【最高裁昭和48年12月11日判決】
農地の売買契約締結後に、右土地の現況が宅地となつた場合には、特段の事情のないかぎり、右売買契約は、知事の許可なしに効力を生ずる

【最高裁昭和50年11月28日判決】
農地の売買契約締結後に、その土地が市街化区域に属することになり、その現況が宅地となった場合には、特段の事情のない限り、右売買契約は知事に対する届出なしに効力を生ずる

 結論

以上より,登記上の地目が「田」「畑」となっている土地であっても,現況がもはや「農地」すなわち「耕作の目的に供される土地」と言えない場合には,農地転用許可は不要であり,売買契約は有効となります。

 実務上の注意点

3.農用地区域に該当する場合
前記のとおり,農地法上「農地」に該当するか否かは現況で判断されますが,現況が農地ではなく,農地法上の規制を受けない土地であっても,農業振興地域整備法(通称「農振法」)6条1項に基づき都道府県知事により農業振興地域に指定された区域で,かつ当該区域内の市町村により同法8条1項に基づき同条2項1号の農用地区域(農用地等として利用すべき土地の区域)に指定された区域内の土地の場合には,農振法の規制を受けることになります(このような規制を受ける農用地区域を,実務上「農振農用地」あるいは「青地地域」と呼びます)。

なお,農業振興地域内にない限り農用地区域に指定されることもないので(農振法8条1項「その区域内にある農業振興地域について」参照),例えば市街化区域(都市計画法7条1項)はそもそも農業振興地域に指定できないため(農振法6条3項),農用地区域にも指定できません。

また,農用地区域に指定されるのは,農業振興地域内の中でも特に「農用地等として利用すべき土地」(農振法8条2項1号)に該当する区域だけであり,農業振興地域内でも農用地区域に指定されなかった地域は,実務上「農振白地地域」と呼ばれます。

農地法上の農地には該当しなくても(よって農地転用許可は不要でも),農用地区域に指定された農振農用地(青地地域)内の土地で開発行為(宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更又は建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築)をする場合には,都道府県知事(農林水産大臣指定市町村の区域内にあっては市町村長)の許可が必要になります(農振法15条の2)。

もっとも,実務上,太陽光発電事業において発電設備建設等のため宅地造成をするケースなどでは,当該開発許可が不要となるようにするため,当該土地の所在する市区町村に対し,農振法13条1項に基づき農用地利用計画を変更するよう申出を行い,当該土地を農用地区域から除外する農用地区域の変更(これを実務上「農振除外」といいます)を働きかけるという手続を採っている事案も多く見受けられます。

ただし,農振除外の申出は,市区町村に対し職権による農用地利用計画の変更を促すものに過ぎず,仮に市区町村がこれを拒否して「計画変更しない(農振除外しない)」との回答をしたとしても,当該回答は行政処分に該当せず,取消訴訟等は提起できないと考えられていますので(【名古屋高裁平成29年8月9日判決】),農振除外を拒否された場合には,行政処分たる農地転用不許可処分や開発行為不許可処分の取消訴訟の中で,農振除外を拒否したことの違法性を主張するしかありません。

【農振法3条】
この法律において「農用地等」とは、次に掲げる土地をいう。

一 耕作の目的又は主として耕作若しくは養畜の業務のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供される土地(以下「農用地」という。)

二 木竹の生育に供され、併せて耕作又は養畜の業務のための採草又は家畜の放牧の目的に供される土地(農用地を除く。)

三 農用地又は前号に掲げる土地の保全又は利用上必要な施設の用に供される土地

四 耕作又は養畜の業務のために必要な農業用施設(前号の施設を除く。)で農林水産省令で定めるものの用に供される土地

【農振法6条】
1 都道府県知事は、農業振興地域整備基本方針に基づき、一定の地域を農業振興地域として指定するものとする。

2 省略

3 農業振興地域の指定は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の市街化区域と定められた区域(同法第二十三条第一項の規定による協議を要する場合にあつては、当該協議が調つたものに限る。)については、してはならない。

4 以下省略

【農振法8条】
1 都道府県知事の指定した一の農業振興地域の区域の全部又は一部がその区域内にある市町村は、政令で定めるところにより、その区域内にある農業振興地域について農業振興地域整備計画を定めなければならない。

2 農業振興地域整備計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 農用地等として利用すべき土地の区域(以下「農用地区域」という。)及びその区域内にある土地の農業上の用途区分

二 以下省略

3 以下省略

【農振法10条3項】
市町村の定める農業振興地域整備計画のうち農用地利用計画は、当該農業振興地域内にある農用地等及び農用地等とすることが適当な土地であつて、次に掲げるものにつき、当該農業振興地域における農業生産の基盤の保全、整備及び開発の見地から必要な限度において農林水産省令で定める基準に従い区分する農業上の用途を指定して、定めるものでなければならない。

一 集団的に存在する農用地で政令で定める規模以上のもの

二 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業又はこれに準ずる事業で、農業用用排水施設の新設又は変更、区画整理、農用地の造成その他の農林水産省令で定めるものの施行に係る区域内にある土地

三 前二号に掲げる土地の保全又は利用上必要な施設の用に供される土地

四 第三条第四号に掲げる土地で、政令で定める規模以上のもの又は第一号及び第二号に掲げる土地に隣接するもの

五 前各号に掲げるもののほか、果樹又は野菜の生産団地の形成その他の当該農業振興地域における地域の特性に即した農業の振興を図るためその土地の農業上の利用を確保することが必要であると認められる土地

【農振法13条】
1 都道府県又は市町村は、農業振興地域整備基本方針の変更若しくは農業振興地域の区域の変更により、前条第一項の規定による基礎調査の結果により又は経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、政令で定めるところにより、遅滞なく、農業振興地域整備計画を変更しなければならない。市町村の定めた農業振興地域整備計画が第九条第一項の規定による農業振興地域整備計画の決定により変更を必要とするに至つたときも、同様とする。

2 前項の規定による農業振興地域整備計画の変更のうち、農用地等以外の用途に供することを目的として農用地区域内の土地を農用地区域から除外するために行う農用地区域の変更は、次に掲げる要件の全てを満たす場合に限り、することができる。

一 当該農業振興地域における農用地区域以外の区域内の土地利用の状況からみて、当該変更に係る土地を農用地等以外の用途に供することが必要かつ適当であつて、農用地区域以外の区域内の土地をもつて代えることが困難であると認められること。

二 当該変更により、農用地区域内における農業経営基盤強化促進法(昭和五十五年法律第六十五号)第十九条第一項に規定する地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められること。

三 前号に掲げるもののほか、当該変更により、農用地区域内における農用地の集団化、農作業の効率化その他土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないと認められること。

四 当該変更により、農用地区域内における効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないと認められること。

五 当該変更により、農用地区域内の第三条第三号の施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないと認められること。

六 当該変更に係る土地が第十条第三項第二号に掲げる土地に該当する場合にあつては、当該土地が、農業に関する公共投資により得られる効用の確保を図る観点から政令で定める基準に適合していること。

3 以下省略

【農振法15条の2第1項】
農用地区域内において開発行為(宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更又は建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築をいう。以下同じ。)をしようとする者は、あらかじめ、農林水産省令で定めるところにより、都道府県知事(農用地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下この条において「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する行為については、この限りでない。

一 以下省略

【名古屋高裁平成29年8月9日判決】
本件要望に対する本件回答は,農用地区域内に所有地(本件土地)を有する控訴人が,被控訴人に対して,農業振興地域整備計画を一部変更し本件土地の農振除外することを求めた(本件要望)のに対して,このような計画変更をしない旨の回答であるところ,農業振興地域整備計画が策定されたことに伴い発生した制約は,上記のとおり国民の権利義務に直接変動をもたらすものではないから,農業振興地域整備計画が一部変更された,あるいは変更されなかったとしても,これにより国民の権利義務に変動をもたらすものではないことは明らかである。
また,適法に策定された農業振興地域整備計画が変更されないとしても,これにより新たな法律関係が生じるものではなく,従前の法律関係が継続するにとどまるものである。
したがって,本件回答により,控訴人が本件土地に関して有する権利義務あるいは法的地位について直接の影響を受けるとは認められないから,本件回答は,行政処分に当たるとはいえない

また,農地法上の農地に該当する場合の農地転用許可も,農用地区域(農振農用地)の場合は原則として許可されないので(農地法4条6項1号イ,【「農地法の運用について」の制定について】第2・1・(1)ア(イ)本文参照),この場合も,農地転用許可を受ける前提として,農振除外を受けておく必要があります。

これに対し,農振農用地(青地地域)内であっても,農地法の「農地」に該当しない場合は,農地転用許可は不要ですが,前記のとおり,不動産登記実務上,売買契約に基づく所有権移転登記をするためには,登記上の地目を農地(「田」「畑」)以外に(例えば「雑種地」等に)変更する必要があり,当該地目変更申請の際には,事前に当該土地の所在する市区町村の農業委員会から「非農地証明書」又は「現況証明書」の交付を受けてこれを添付する必要があります。

そして,この「非農地証明書」又は「現況証明書」の交付要件については,各市区町村により運用が異なるものの,多くの市区町村では,「農用地区域に設定されていないこと」を交付の要件としていますので(北海道ニセコ町茨城県八千代町兵庫県加古川市徳島県徳島市大分県佐伯市茨城県筑西市等),農振農用地(青地地域)内の場合は,やはり農振除外を受けておく必要があります。

もっとも,特に最近は,【農業振興地域制度に関するガイドライン】第16・1(1)④イ(54頁)でも,「当該土地が農地に該当しないと判断されていることに鑑み、効率的かつ迅速に行うこと」等が記載されているとおり,すでに非農地化している土地についての農振除外は,比較的認められ易くなっている傾向にあります。

なお,農業振興地域外の農地や,農業振興地域内でも農用地区域に指定されていない農地(白地地域)の場合,農振除外の手続は不要ですが,この場合も,農地法上の「農地」に該当すれば,これを宅地等にする場合,農地転用許可が必要となります。

いずれにしても,多湖・岩田・田村法律事務所では,登記上の地目が「田」「畑」になっている土地の売買については,仮に現況がすでに非農地化している土地であっても,念のため,農振法上の農用地区域に含まれていないか等,事前に所轄の市区町村に必ず確認するよう助言しています。

【農地法4条6項1号】
第一項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、第一号及び第二号に掲げる場合において、土地収用法第二十六条第一項の規定による告示(他の法律の規定による告示又は公告で同項の規定による告示とみなされるものを含む。次条第二項において同じ。)に係る事業の用に供するため農地を農地以外のものにしようとするとき、第一号イに掲げる農地を農業振興地域の整備に関する法律第八条第四項に規定する農用地利用計画(以下単に「農用地利用計画」という。)において指定された用途に供するため農地以外のものにしようとするときその他政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。

一 次に掲げる農地を農地以外のものにしようとする場合

イ 農用地区域(農業振興地域の整備に関する法律第八条第二項第一号に規定する農用地区域をいう。以下同じ。)内にある農地

ロ 省略

【「農地法の運用について」の制定について】(最終改正令和6年3月28日付け5経営第3123号・5農振第3229号)第2・1(1)ア(イ)本文
農用地区域内にある農地の転用は、原則として、許可をすることができない。これは、市町村の定める農業振興地域整備計画において、農用地区域が農用地等として利用すべき土地の区域として位置付けられていることによる。

【農業振興地域制度に関するガイドライン】(最終改正令和5年12月31日付け5農振第2256号)第16・1(1)④イ(54頁)
既に山林原野化し、「「農地法の運用について」の制定について」」(平成21年12月11日付け21経営第4530号・21農振第1598号農林水産省経営局長・農村振興局長通知)第4の(3)に基づき、農地法第2条第1項に規定する「農地」に該当しないと判断された土地の農用地区域からの除外については、次によるものとする。

a 法第10条第3項各号に該当しない場合は、③の基礎調査を行わなくても「経済事情の変動その他情勢の推移」により農用地区域からの除外が可能であること。

b 法第10条第3項各号に該当する場合において、当該土地を農用地等以外の用途に供する目的で農用地区域から除外する場合は、法第13条第2項各号の要件を満たす必要があるが、当該要件の判断に当たっては、当該土地が農地に該当しないと判断されていることに鑑み、効率的かつ迅速に行うことが適当であること。

※本頁は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。


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