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不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
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仲介業者の責任と説明義務
*本項は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。
【事例】仲介業者の責任と説明義務
XはY(宅建業者)の媒介によりすでにBが入居中(賃借中)の中古マンションをAから買い受けた。Xは,マンションを買い受けるにあたり,Yから,「Bがすでに入居中(賃借中)である」との説明は受けていたが,売買契約締結及び代金支払後,Bが暴力団関係者であることが判明した。
この場合,Xは仲介業者Yに対し,債務不履行(調査確認義務違反)を理由に,売買代金相当額及び慰謝料等の損害賠償を請求できるか。

【解説】多湖・岩田・田村法律事務所/平成29年1月改訂版
【1】頭書事例において,【東京地裁平成9年10月20日判決】は,以下のように判示しました。
(1)宅地建物取引業法上,Yは,本件売買契約の媒介において,本件売買契約における重要事項について調査し,委任者であるXに告知すべき義務がある。本件委任契約の内容は,賃貸中の建物売買の媒介であるから,賃貸借関係における重要事項としては,主に賃料支払状況,用方違反の有無,賃借人自身の居住(占有)があげられよう。

(2)賃借人がどのような人物であるかはそれ自体,買主に主観的に関心があっても,賃貸借中の建物売買を媒介する宅地建物取引業者としては,客観的に,通常買主が重視し,関心を寄せる右各重要事項について調査すべきであるが,賃借人の属性については,賃貸借関係を将来継続し難くなる事情に関してのみ重要な事項として調査対象となると考えられる。

(3)その調査の方法,程度については,賃借人の思想・信条・職業・私生活等プライバシーの保護の観点や権利の移転の媒介という契約の内容,事実上の制約という観点からして自ずから制限され,原則としてその物件の所有者または当該賃貸借契約を管理している管理会社に対し賃借人が提出した入居申込書に記載された身元・職業を確認することのほか,当該物件の外観から通常の用方がなされているかを確認し,その結果を依頼者に報告すれば足り,当該物件を内見したり,直接賃借人から事情を聴取することまでの調査義務を負うことはないというべきである。ただし,右調査において,正常な賃貸借契約関係が継続していないことが窺われる場合には,その点につき適当な方法で自ら調査し,または,その旨を依頼者に報告して注意を促す義務を有するものと考えるのが相当である。

(4)これを本件についてみると,Bは暴力団員であり,本件建物の応接室に神棚,組の看板,入れ墨姿の写真を飾っているものの,本件建物の表札は名前だけであり,他に暴力団関係者や組事務所として使用している外観を表示するものを設置するなどしておらず,組員が出入りしている事情も窺えず,そして,賃料の支払いは本件訴え提起まで大方順調であり,賃貸人や管理人,他の本件マンション住人と紛争を起こしたり,苦情を寄せられたことはなかったのであるから,右事実関係のもとでは,Bが暴力団員であることをもって,賃借人の属性として,賃貸借関係を将来継続し難くなる事情に関して重要な事項となるとは直ちに言えないものと考えられる。他方,Yは,資料を収集し,かつAから事情を聞いたうえで,本件マンションの玄関ポストについても確認しているところ,特にBの申告した事項に疑問があり,ひいては正常な賃貸借契約関係が継続していないことが窺われる事情は見あたらない。従って,Yに調査義務違反は認められない
【2】すなわち,上記判例でも判示されているとおり,仲介業者としては入居者の素性を調査するにしても,プライバシー保護等の観点から事実上限界があります。例えば,実際に室内に立ち入って使用状況を確認するとか,部屋の前に張り込んで出入りする人物の人相を確認する等の行為は,かえって,入居者のプライバシーの侵害(民法上の不法行為)となりかねません。従って仲介業者としては,一定の調査・報告義務があるとしても,それは入居者が自ら記入した職業欄の記載や表札の確認をし,不審な点があれば(例えば表札に暴力団を連想させる表記がしてある等)これを報告するという程度でも十分と考えられます。
【3】また,当事者の資力に関しても,仲介業者にはそれほど積極的な調査義務は要求されていません。

この点,いずれも売買の事案ですが,【東京地裁平成24年2月21日判決】では,「宅地建物取引業者は,取引の関係者に対し,信義を旨とし,誠実にその業務を行わなければならず(31条1項),また,宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,宅地若しくは建物の売買の契約の締結について勧誘するに際し,取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって,宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすことになる事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為をしてはならないものと定めているが(47条1号ニ),それ以上に,宅地建物取引業者が自らの依頼者の資力・信用に関して積極的に事実を確かめることまでは義務づけていない」とされております。
【4】また,【東京地裁平成28年3月11日判決】でも,「不動産仲介業者は,直接の委託関係はなくても,これら業者の介入に信頼して取引をなすに至った第三者一般に対しても,信義誠実を旨とし,格別に注意する等の業務上の一般的注意義務があると解されるところ,仲介者が負うべき義務は,宅地建物取引業法第35条に定める事項はもちろん,信義則上,買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重大な事項について調査し,知り得た事実について説明すべきであるが,宅地建物取引業者は,高度の専門知識や鑑定能力を有するものとは限らないことからすると,売買契約当時,その目的物に瑕疵が存在することを疑わせるような特段の事情がない限りは,瑕疵の存否について積極的に調査するまでの義務はない」と判示されています。
【5】この理は,賃貸の仲介の場合でも基本的には同様といえるでしょう。

【東京地裁平成19年8月10日判決】も,「賃借希望者の身元,職業等の調査報告義務について考えるに,不動産賃貸の仲介者は,原則として賃借希望者自らの申し出た身元,職業等の事項を委任者である賃貸人に伝えるをもつて足り,右以上に右事項につき独自に調査し,賃貸人に報告する義務はないものと解され,このことは仲介者が宅地建物取引業法の適用を受ける仲介業者であつても同様であるが,仲介者は善良なる管理者の注意をもつて当事者間の媒介をする義務を負うものであるから(民法六四四条),仲介業者としての通常の注意を払うことにより賃借希望者の申し出た事項に疑問があり,ひいては正常な賃貸借関係の形成を望み得ない事情の存することが窺われる場合には,その点につき適当な方法で自ら調査し,又は,その旨を委任者である賃貸人に伝えて注意を促す義務があるものと解すべきである」と判示しており,仲介業者は,賃借希望者が自ら申し出た身元職業等の情報を賃貸人に報告すれば足りると解されています。
【結論】
以上より,頭書事例の場合,Yが入居者Bの素性を知っていた場合は,これをXに報告する義務はありますが,それ以上に,入居者Bの素性を積極的に調査する義務はなく,XはYに損害賠償請求することはできません。
売買・賃貸における仲介業者の調査義務は,客観的に通常買主・借主が重視し関心を寄せる事項について調査する義務があり,かつ,通常の調査の結果,何らかの疑問・不信を抱いた場合には,これを報告する義務がありますが,その調査義務の程度としては,判例上,総じてそれほど高いものは要求されていないといって良いでしょう。


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