【東京地裁平成19年8月10日判決】
自殺があった建物(部屋)を賃借して居住することは,一般的に,心理的に嫌悪感を感じる事柄であると認められるから,賃貸人が,そのような物件を賃貸しようとするときは,原則として,賃借希望者に対して,重要事項の説明として,当該物件において自殺事故があった旨を告知すべき義務があることは否定できない。
しかし,自殺事故による嫌悪感も,もともと時の経過により希釈する類のものであると考えられることに加え,一般的に,自殺事故の後に新たな賃借人が居住をすれば,当該賃借人が極短期間で退去したといった特段の事情がない限り,新たな居住者である当該賃借人が当該物件で一定期間生活をすること自体により,その前の賃借人が自殺したという心理的な嫌悪感の影響もかなりの程度薄れるものと考えられるほか,本件建物の所在地が東京都世田谷区という都市部であり,かつ,本件建物が2階建10室の主に単身者を対象とするワンルームの物件であると認められることからすれば,近所付き合いも相当程度希薄であると考えられ,また,Aの自殺事故について,世間の耳目を集めるような特段の事情があるとも認められないことに照らすと,本件では,原告には,Aが自殺した本件△号室を賃貸するに当たり,自殺事故の後の最初の賃借人には本件△号室内で自殺事故があったことを告知すべき義務があるというべきであるが,当該賃借人が極短期間で退去したといった特段の事情が生じない限り,当該賃借人が退去した後に本件△号室をさらに賃貸するに当たり,賃借希望者に対して本件△号室内で自殺事故があったことを告知する義務はないというべきである。
また,本件建物は2階建10室の賃貸用の建物であるが,自殺事故があった本件△号室に居住することと,その両隣の部屋や階下の部屋に居住することとの間には,常識的に考えて,感じる嫌悪感の程度にかなりの違いがあることは明らかであり,このことに加えて,上記で検討した諸事情を併せ考えると,本件では,原告には,Aが本件△号室内で自殺した後に,本件建物の他の部屋を新たに賃貸するに当たり,賃借希望者に対して本件△号室内で自殺事故があったことを告知する義務はないというべきである。
【東京地裁平成20年4月28日判決】
自殺事故による忌避感は,それ自体としては主観的要素に基づくものであるから,性質上,時間の経過により薄まっていくことは首肯し得るものの,本件売買契約当時,本件死亡事故からは未だ2年間を経過したにすぎないから,被告の告知,説明義務を消滅させるには至らない。
【東京地裁平成22年9月2日判決】
賃料額を低額にせざるを得ないのは物件内での自殺という事情に対し通常人が抱く心理的嫌悪感ないし嫌忌感に起因するものであるから、時間の経過とともに自ずと減少し、やがて消滅するものであることは明らかである。
また、本件物件は単身者向けのワンルームマンションであり、その立地は、付近を首都高速三号渋谷線及び国道二四六号線が通るとともに、東急田園都市線「池尻大橋」駅から徒歩二分とされ、都心に近く、交通の便もよい利便性の高い物件であることが窺われるところ、このような物件は賃貸物件としての流動性が比較的高いものと見られるから、上記心理的嫌悪感等の減少は他の物件に比して速く進行すると考えるのが合理的である。
上記事情を併せ考慮すると、本件における原告の逸失利益については、本件物件の相当賃料額を本件賃貸借と同額の一二万六〇〇〇円と見た上で、賃貸不能期間を一年とし、また、本件物件において通常であれば設定されるであろう賃貸借期間の一単位である二年を低額な賃料(本件賃貸借の賃料の半額)でなければ賃貸し得ない期間と捉えるのが相当と考える。
また、将来得べかりし賃料収入の喪失ないし減少を逸失利益と捉える以上、中間利息の控除も必要というべきである。
以上によれば、逸失利益については、二七七万八七五二円となる。
一年目:¥126,000*12か月*0.9524(ライプニッツ係数)=¥1,440,028
二年目:¥63,000*12か月*0.9070=¥685,692
三年目:¥63,000*12か月*0.8638=¥653,032
合計¥2,778,752
【東京地裁平成22年3月8日判決】
本件土地は,住宅や共同住宅が立ち並ぶ住宅地であるところ,本件火災事故は,出火建物のみならず,近接した他の建物の一部を焼損するという小火にとどまらないものであり,その後4年近くを経過しても,原告が分譲を開始するや火災による死者があったことの情報がもたらされるなど,近隣住民の記憶になおとどめられた状態にある一方,被告としても,本件火災事故の事実を認識し,平成17年2月までに,出火建物を取り壊したが,その後,その跡地を雑草の生えた更地としており,これを有効に利用してはいなかったとの状況があることになる。
<中略>
本件売買契約の目的物は,土地であって,既に以前に取り壊された出火建物を含むものではなく,原告が行う分譲も分筆した本件土地及びその上の新築建物を目的とするものであるにしても,本件土地上にあった出火建物で焼死者が出たし,近隣住民には,このような事実の記憶がなお残っているのだから,これを買受ける者が皆無であるとはいえないにしても,買受けに抵抗感を抱く者が相当数あるであろうことは容易に推測しうるところである。
<中略>
売買の目的物に瑕疵があるというのは,その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであり,目的物に物理的欠陥がある場合だけではなく,目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥がある場合も含まれると解されるところ,上記事実関係のもとでは,本件土地あるいはこの上に新たに建築される建物が居住の用に適さないと考えることや,それを原因として購入を避けようとする者の行動を不合理なものと断じることはできず,本件土地上にあった建物内において焼死者が発生したことも,本件売買契約の目的物である土地にまつわる心理的欠陥であるというべきことになる。
本件土地で生じたのが殺人や自殺ではないことは,被告が主張するとおりであるが,焼死などの不慮の事故死は,一般に病死や老衰などの自然死とは異なって理解されるから,生じたのが事故死であるからといって,瑕疵の程度問題の考慮要素にとどまるものであり,従前争われたケースの多くが自殺又は他殺の類型であることも,上記判断を左右しない。
そうすると,本件売買契約の目的物である本件土地には,民法570条にいう「隠れた瑕疵」があると認められるし,これを認識していた売主には,信義則上,これを告知すべき義務があったことになるから,原告は,売主であり,上記事実を認識していた被告に対し,これに基づく損害賠償を請求しうることになる。
【福岡高裁平成23年3月8日判決】
売買の目的物に民法五七〇条にいう瑕疵があるというのは、その目的物が通常有すべき性質を欠いていることをいうのであり,その目的物が建物である場合には、建物として通常有すべき設備を有しないなど物理的な欠陥があるときのほか、建物を買った者がこれを使用することにより通常人として耐え難い程度の心理的負担を負うべき事情があり、これがその建物の財産的価値(取引価格)を減少させるときも、当該建物の価値と代金額とが対価的均衡を欠いていることから、同条にいう瑕疵があるものと解するのが相当である。
これを、本件についてみるに、本件居室の前入居者は、本件居室において実質的に性風俗特殊営業を営んでいた。
そこで、管理組合は、一審被告及び本件居室の前入居者に対して、本件居室において風俗営業又はこれに類似する営業を行っているため、本件マンションの住民に対して不安や不快感等を与えるほか、本件居室における上記営業が外部に知られると本件マンションの財産的価値が下落するなどとして、本件居室の明渡し等を請求する訴訟を提起した。
そして、同訴訟の第一審裁判所は管理組合の上記請求を全部認容し、前入居者は、同訴訟の控訴審における和解に基づいて本件居室を明け渡したというのである。
このような経緯からすれば、本件マンションの住民は本件居室で性風俗営業が行われていたことを認識していたものと推認され、現に、本件マンションの理事会や総会で目的外使用の防止が議論された際に、本件居室における風俗営業の事例が引き合いに出されていたものである。
そして、将来においても、本件マンションの目的外使用に関して本件居室の事例が引き合いに出されることは容易に予測される。
以上によれば、本件居室が前入居者によって相当長期間にわたり性風俗特殊営業に使用されていたことは、本件居室を買った者がこれを使用することにより通常人として耐え難い程度の心理的負担を負うというべき事情に当たる(現に、一審原告の妻はこの事実を知ったことから心因反応となり、長期間にわたり心療内科の治療を受けたほか、一審原告及びその妻はいまだに本件居室が穢れているとの感覚を抱いている。)。
そして、住居としてマンションの一室を購入する一般人のうちには、このような物件を好んで購入しようとはしない者が少なからず存在するものと考えられるから(現に、一審原告が事実を知っていたら本件居室を購入しなかったものと考えられる。)、本件居室が前入居者によって相当長期間にわたり性風俗特殊営業に使用されていたことは、そのような事実がない場合に比して本件居室の売買代金を下落させる(財産的価値を減少させる)事情というべきである(現に、管理組合も上記訴訟において同旨の主張をしていたものである。)。
したがって、本件居室が前入居者によって相当長期間にわたり性風俗特殊営業に使用されていたことは、民法五七〇条にいう瑕疵に当たるというべきである。
【高松高裁平成26年6月19日判決】
被控訴人は、本件建物内での自殺等から四半世紀近くが過ぎ、自殺のあった本件建物も自殺の約一年後に取り壊され、本件売買当時は更地となっていたとの事実を指摘するが、これらの事実があったとしても、マイホーム建築目的で土地の取得を希望する者が、本件建物内での自殺の事実が近隣住民の記憶に残っている状況下において、他の物件があるにもかかわらずあえて本件土地を選択して取得を希望することは考えにくい以上、被控訴人が本件土地上で過去に自殺があったとの事実を認識していた場合には、これを控訴人らに説明する義務を負うものというべきである。
なお、この判断は、本件土地が活発に売買の対象となっており、売買価格に事件の影響が窺えなかったとしても左右されない。
【東京地裁平成27年9月1日判決】
建物賃貸借における建物の「隠れた瑕疵」(民法570条,559条)には,建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等を原因とする心理的瑕疵も含むと解するのが相当であるが,本件賃貸借契約が貸室を事務所として使用するための事業用賃貸借契約であり,その主たる目的が事業収益の獲得にあることに照らせば,本件事務所に心理的瑕疵があるといえるためには,賃借人において単に抽象的・観念的に本件事務所の使用継続に嫌悪感,不安感等があるというだけでは足りず,当該嫌悪感等が事業収益減少や信用毀損等の具体的危険性に基づくものであり,通常の事業者であれば本件建物の利用を差し控えると認められることが必要であると解するのが相当である。
【東京地裁平成29年4月14日判決】
本件事故のあった本件居室を賃貸する場合,原告は,賃借希望者に対し,本件事故につき事前に説明すべき義務があるといえるところ,一般に,本件事故の説明を受けた賃借希望者が,同居室を賃借して居住することに少なからず心理的な嫌悪感を抱くことは避けられない。
そうであれば,原告が,本件事故につき説明した上で,本件居室を賃貸する場合,一定期間,賃借人となる者が現れない可能性は高く,仮に同居室を賃借する者があるとしても,通常の賃料での賃貸は困難といわざるを得ない。
もっとも,上記嫌悪感は心理的な要因により生じるものであり,物理的瑕疵と異なって時間の経過により希釈化するものと考えられるし,また,本件事故後,新たな賃借人が本件居室を一定期間利用した場合などにも,同嫌悪感は薄れるものと考えられる。さらに,本件居室が西武池袋線A駅及び西武有楽町線B駅からいずれも徒歩5分という立地条件のよい場所に位置し,マンションの管理体制も良好であり,その需要は高いこと,本件事故に関する報道等がされたことを認めるに足りる証拠はないことなどに照らすと,本件事故に起因する嫌悪感が長期間にわたって継続すると解するのは相当でない。
そして,上記事情に加え,本件賃貸借契約の賃貸借期間が2年であること,賃料が月額5万3000円であることを併せ考えると,本件居室は本件事故から1年間は賃貸が困難であり,その後賃貸する場合でも2年間は通常の賃料の半額でしか賃貸できないものと考えるのが相当である。他方で3年を経過した後は,通常の賃料による賃貸が可能と考えられるから,本件事故に起因する賃料の逸失利益は,以下の計算のとおり合計116万8840円となる。
1年目 60万5726円(5万3000円×12か月×0.9524ライプニッツ係数)
2年目 28万8426円(2万6500円×12か月×0.9070ライプニッツ係数)
3年目 27万4688円(2万6500円×12か月×0.8638ライプニッツ係数)
【東京地裁平成29年5月25日判決】
本件自殺は,本件契約締結時(平成28年2月20日)から遡って10年余り前(平成17年6月18日頃)に発生したものであるが,①本件における心理的瑕疵が自殺という極めて重大な歴史的背景に起因するものであることのほか,②本件土地建物の現在の立地状況【※「JR東日本A駅の南方約400m,徒歩約5分の場所に位置し,周辺一帯は古くから居住する高齢者が多く,閉鎖的である」と認定】,③原告が本件自殺を知った経緯【※「隣地との境界を確認するためにA宅を訪ねたところ,同人の妻から,本件自殺があったことを告げられた」と認定】,④本件土地建物の近隣の住民の発言からは,上記期間が経過した後も本件自殺の記憶を容易に払しょくすることができないものとして,同人らが本件自殺を受けとめているものと考えられること,⑤本件建物が本件自殺後も建て替えられていないことも勘案すると,上記期間の経過によって自殺に対する嫌悪感が法的保護に値し得ないものとなったということはできない。
<中略>
本件契約は,契約の目的を達することができないとして解除されたものと認めるのが相当であり,この解除は適法である。
※【 】内は筆者加筆。
【東京地裁平成29年7月5日判決】
心理的瑕疵というには,単に買主において抽象的・観念的に当該不動産の居住等の使用に嫌悪感ないし不安感等があるというだけでは足りず,当該不動産の買主がこれを使用することにより一般の通常人として耐え難い程度の心理的負担を負う程度のものである必要があり,この心理的負担は,買主が当該不動産に居住することが実際上困難となるような事情により裏付けられると解される(福岡高裁平成22年(ネ)第996号同23年3月8日判決判タ1365号19頁参照)。
【東京地裁令和4年8月18日判決】
亡Aの死亡は、自然死ではあるが、本件遺体が初夏の梅雨入りの頃、1週間以上にわたり本件建物内に存した結果、腐敗が進んだ状態となり、清掃会社による消毒・清掃が行われたと認められ、国土交通省のガイドラインで定めた自然死でも宅地建物取引業者による告知が求められる場合に該当することを否定することは困難であると解され、発見当初警察官が臨場する事態となったことも併せ考慮すると、本件遺体の発見に至った経緯については、その発生から本件売買契約の締結までに約5年が経過したことを考慮しても、なお本件建物における居住の快適性を損なう事情に当たるといわざるを得ない。
そして、本件売買契約の際、被告から原告に交付された物件状況等報告書の事件・事故・トラブル等には亡Aの死亡に関する記載がなかったのであるから、本件遺体の発見に至った経緯は、本件建物の隠れた瑕疵に当たると認めるのが相当である。
【東京地裁令和4年10月14日判決】
賃貸借契約において、賃借人は、賃貸借の目的物を善良なる管理者の注意義務をもって使用収益する義務がある。
自殺があった建物に居住することに抵抗を感じる者が相当数存在することは公知の事実であり、賃貸人や仲介業者等は、通常、賃貸借契約の目的物である建物において過去に自殺があった場合は、新たに賃貸借契約を締結するに際して、概ね3年間はその旨の告知をすべきであると考えられ、弁論の全趣旨によれば、実際にそのような告知を行う実務が存在すると認められる。
したがって、かかる建物は、自殺の後一定期間にわたって、その交換価値や賃料相場が下落し、所有者や賃貸人に経済的損害が生じることがあり、賃借人は当然にこのような事情を予見することができるものであるから、賃借人は上記善管注意義務の一環として、賃貸借の目的物である不動産において自殺しない義務を負うというべきである。
本件は、本件賃貸借契約の目的物である本件建物室内の自殺ではなく、本件建物からの飛び降り自殺の事案であり、ガイドラインで明確な告知義務が定められているものではないが、過去に自殺があった建物であるという評価がされることについては変わりがなく、賃貸人や仲介業者等は、賃借人からの責任追及を避けるためには、賃貸借契約の目的物である建物からの飛び降り自殺があったことも同様に説明をせざるを得ないといえるから、このことは上記結論を左右するものではない。
【東京地裁令和5年3月23日判決】
瑕疵とは、その目的物が通常有すべき品質・性能を欠いていることをいい、一般に目的物に物質的又は法律的な欠陥がある場合のみのならず、目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的瑕疵がある場合も含むと解される。
そして、日時場所を問わず、日常的に人の死は発生しているから、賃貸借契約の対象となる不動産において人の死が発生したことをもって、必ずしも心理的瑕疵に該当するとは解されない。
もっとも、本件のように、バルコニーからの転落により死亡事故が発生するということは、必ずしも日常的とはいえず、その原因も不明であって、通常人が不安感ないし嫌悪感を生じることは否定できない。
そうすると、本件事故は、心理的瑕疵に該当するというべきである。
なお、被告は、本件事故は本件貸室内あるいは共用スペースで死亡したものではなく、契約対象物件について心理的瑕疵は発生していないと主張する。
確かに、被告の妻が死亡していたのは、本件貸室を含むマンション前の公道上であるが、本件貸室のバルコニーから同公道上に転落した可能性が高いというべきであり、このような場合、通常人は、本件貸室のバルコニーに何らかの問題点があると考え、本件貸室について不安感ないし嫌悪感を抱くものと考えられるから、本件貸室について心理的瑕疵が発生していると解すべきである。
したがって、契約対象物件について心理的瑕疵は発生していない旨の被告の主張は採用できない。
また、被告は、本件事故が、告知義務の対象となるような心理的瑕疵には該当しない旨主張する。
この点、宅地建物取引業法47条1号ニは、宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、その業務に関し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものについて、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはならないと規定しているところ、心理的瑕疵も相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものに該当すると解される。
【東京地裁令和6年10月18日判決】
一般に、過去に自殺があった建物に居住することについて、抵抗感を有する者は相当数存在するというべきである。
実際に、本件物件の居住者は、過去に自殺があったことを理由に退去した。
そのため、不動産取引においては、過去に自殺があった建物にはいわゆる心理的瑕疵があるとして、自殺があったことの告知義務が問題とされる。
また、このような建物は、自殺があった後、一定期間にわたり売却価格や賃料が相場より下落し、買主に経済的損害が生ずるおそれがあるといえる。
令和元年11月19日の本件事件の発生から、令和3年6月24日の本件売買契約の締結まで、約1年7か月が経過したにとどまる。
このような経過期間の短さに照らせば、本件物件について、過去に自殺が発生していない居住用物件と同程度まで、上記の心理的瑕疵が希釈化されたであるとか、上記のおそれが低下したなどとはいえない。
したがって、本件事件が発生していた本件物件は、本件売買契約の目的物の品質として契約内容に適合しないものであると認められる。
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