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不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
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明渡遅延違約金
*本項は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。
【事例】明渡遅延違約金条項(明渡遅延損害金)の有効性
「賃貸借契約終了したにも拘らず明け渡しを遅滞した場合には,違約金として明け渡しまで1か月あたりの賃料の倍額を支払う」との条項の有効性。

【解説】多湖・岩田・田村法律事務所/平成24年10月版
【1】頭書事例の違約金条項は,明渡遅延に伴う貸主の損害につき,「損害賠償の額の予定」をしたもので,主として,賃借人に対し,賃貸借契約に伴う賃借人の義務(退去明け渡しの義務)の履行促進を目的とするものであるといえます。
【2】前提として,「更新拒絶又は解約申入れにより契約が終了する場合は,契約が終了するかどうかは正当事由の有無にかかっているが,正当事由の有無の判断は,当事者にとっては予測することが困難であって,結局は裁判所の判断をまつことになるものであり,更新拒絶又は解約申入れの時点で賃借人に正当事由の有無の判断を求めるとすれば,賃借人に困難を強いることになる。そこで,前記特約は,契約終了の原因が解除や合意解約による場合を想定したもので,更新拒絶又は解約申入れにより契約が終了する場合を除く趣旨である」とされ(【東京地裁平成7年10月16日判決】),賃貸人からの更新拒絶や解約申入による賃貸借契約終了の場合で,賃借人がいわゆる正当事由を主張している場合は,このような違約金条項(明渡遅延損害金)の適用は金額に拘わらず否定されると解して良いでしょう。したがって,明渡遅延損害金は,それ以外の原因による契約終了の場合に問題となります。
【3】まず,事業者間の取引では,明渡遅延に伴う損害金を賃料の2倍程度と約定することは判例実務ではほぼ問題なく認容されているといえます(【東京地裁平成24年3月1日判決】でも,賃料の2倍の明渡遅延違約金につき,「公営住宅法32条3項など,明渡しまで家賃の2倍に相当する額以下の徴収を認めており,立法として許容している例が存することにも鑑みると,公序良俗に反するというのは困難である」と判示しています)。
【4】他方で,消費者契約法が適用されるケース(借主が個人消費者の場合)においては,【大阪地裁平成21年3月31日判決】は,「賃貸借契約の終了に基づく目的物返還義務の履行遅滞を原因とする損害賠償における損害は,当該不動産の有する使用価値それ自体が侵害されたことによる積極的損害であると解されるところ,賃貸借契約においては当該不動産の使用価値をもって賃料とするのが通常であるから,賃料相当損害金の算定については,特段の事情がない限り,従前の賃料を基準として算定するのが相当と解される。そうすると,不動産賃貸借契約において,賃貸借契約の終了に基づく目的物返還義務の履行遅滞が生じた場合における『平均的な損害』(消費者契約法9条1号)は,原則として,従前の賃料を基準として算定される賃料相当損害金を指すものと解するのが相当である」として,月額賃料の1.5倍の違約金条項(明渡遅延損害金)を消費者契約法9条1号により無効と判示しました。
【5】もっとも,消費者契約法9条1号は,「消費者契約の解除に伴って事業者が消費者に対し高額な損害賠償等を請求することによって,消費者が不当な出えんを強いられることを防止することを目的とするもの」(【最高裁平成18年11月27日判決】)とされています。
すなわち,同号は,解除に伴う損害賠償や違約金条項に関する規定であって,解除後の明渡しの遅延に伴う損害賠償は,「解除したこと(されたこと)」自体で発生する(伴う)ものではなく,「遅延したこと」による損害賠償ですので,本来は同号が適用される場面ではありません。むしろ消費者契約法10条の問題として無効か否かを考えるべきでしょう(【東京地裁平成20年12月24日判決】も,明渡遅延損害金につき消費者契約法9条1号の適用を否定し,同法10条の問題として処理し,結論として賃料の2倍の明渡遅延違約金につき同法10条に反せず有効と判示しています。なお,前掲【大阪地裁平成21年3月31日判決】も,「このような規定は当該業種における業界の水準ないし慣行を示すものと解されるであって,同条項が民法1条2項に規定する信義誠実の原則に直ちに反するとまでは認められないから,消費者契約法10条に違反するとまではいえない」とし,消費者契約法10条には反しないと判示しています)。

したがって,消費者契約法9条1号が適用されないという前提に立てば,少なくとも月額賃料の1.5倍程度の違約金(明渡遅延損害金)は有効といえるでしょう。
【結論】
以上より,頭書事例の条項は,借主が会社の場合,概ね月額賃料の2倍以内であれば原則として有効ですが,借主が個人消費者で消費者契約法が適用される場合には,違約金額(明渡遅延損害金)は月額賃料の1.5倍以内に留めておけば安全圏(有効の可能性大)といえるでしょう(尚,いずれにしても,賃貸人からの更新拒絶や解約申入の場合は適用されません)。
尚,何をもって「明渡し」とするか,その意義については,明渡義務の完了時期をご参照下さい。
【補足】
消費者契約法は,貸主が「事業者」で,借主が「個人消費者」の場合に適用されるものですが,貸主が「個人」であっても,「消費者契約法上の『事業』とは,『社会生活上の地位に基づき一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行』であり,その事業のために契約の当事者となる場合における個人は消費者契約法上の『事業者』となる」とされ,継続的に賃貸する意思を有し不動産仲介業者を利用して賃借人を募集していた個人(貸主)につき「事業者」として消費者契約法の適用を認めています(【京都地裁平成22年9月16日判決】)。


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