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不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
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法定更新時の更新料
*本項は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。
【事例】法定更新時の更新料請求の可否
「賃借人は契約更新時に賃料の1か月分の更新料を支払う」との約定がある場合,法定更新の場合でも,賃貸人は賃借人に対し更新料を請求することができるか。

【解説】多湖・岩田・田村法律事務所/平成29年2月改訂版
【1】更新料については,昨今,そもそも更新料特約自体の有効性について,地域の実情や金額により様々な判断がなされていたところですが,【最高裁平成23年7月15日判決】で,更新料の約定自体は,金額が賃料の額や賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り有効と判示されておりますので,一応の決着をしたといえます。
では,合意更新ではなく,法定更新の場合も,貸主は約定の更新料を借主に請求できるのでしょうか。
【2】この点,以下の最近の裁判例等にも鑑み,少なくとも借家については,法定更新の場合には,更新料特約(契約)で「法定更新の場合も含む」旨が明示されておらず,かつ重要事項説明書等他の資料からもその趣旨が明確に読み取れない限り,原則としてこれを請求することはできないというのが裁判実務の大勢といえます。
【東京地裁平成25年3月19日判決】

*「賃借人は,期間更新を欲する場合は,前項の期間満了の2か月前までに,賃貸人に申し込むことを要する。更新された場合,賃借人は,改定後賃料の1か月分を更新料としてに支払う」との条項があった事案。

法定更新の場合には,期間の定めのない賃貸借契約となる(借地借家法26条1項)から,合意更新の場合に比して,賃貸借期間の定めの点において,賃借人にとって不利益であることは明らかである上,賃貸借契約の締結に当たり,更新条項を含む賃貸条件を決めて賃貸借契約書を作成するのは通常賃貸人であって,本件賃貸借契約においても同様であったことが認められ(当事者間に争いない。),原告において,本件更新料条項に,「法定更新」を含むことを明記することも,更新時に新たな契約書が作成されない場合に備え,自動更新特約条項を入れることも,可能であったというべきであるから,本件賃貸借契約上,法定更新の場合に更新料の支払義務があるか否かについて明記されていない本件において,賃借人である被告に更新料の支払義務を認めることは,かえって賃貸人と賃借人間の公平を失するものと言わざるを得ない。
【東京地裁平成25年10月21日判決】

賃借人が賃貸人に対し,更新料の支払を約する条項は,賃貸借契約の要素を構成しない債務を特約により賃借人に負わせるという意味において,任意規定の適用による場合に比し,賃借人の義務を加重するものであること(最高裁判所平成23年7月15日第二小法廷判決民集65巻5号2269頁参照),契約書上,更新料に関する条項の文言は,「互いの合意があれば,本契約を更新出来るものとし,更新料として乙(被告)は新賃料の1ヵ月分を更新時に甲(原告)へ支払い,再契約を締結するものとする。」となっており,同文言の趣旨は,直接的には,被告の更新料支払義務が合意による更新の際に生じることを示すにとどまっているというべきであって,法定更新の場合にも被告に更新料の支払義務が発生することが一義的かつ具体的に記載されているとは言い難いこと、また,同じく同契約にかかる重要事項説明書上,更新料に関しては,「更新料」との欄に「新家賃の1ヶ月分相当額」との記載があるのみであって,合意更新と法定更新のいずれの場合にも更新料支払義務が発生するのか否かについて特に明示がされているとはいえないこと,その他に原被告間において,被告が原告に対し法定更新に際しても更新料支払義務を負うことが明確に合意されたことを示す客観的証拠はないことからすれば,一般的に,更新料の支払につき一定の経済的合理性がないとはいえないこと等の事情を考慮しても,原被告間の賃貸借契約上,法定更新の場合に被告が原告に対し更新料支払義務を負うことが合意されていると認めることはできないというべきである。
【東京地裁平成27年1月26判決】

本件賃貸借契約に係る契約書においては,第一条において,賃貸借期間について「本件契約の賃貸借期間は満3年間とする。但し,期間満了に際し,必要があれば協議の上,本件契約を更新することができる。尚,更新料は新賃料の1.5ヶ月とする。」と定めている。この定めは,更新契約が締結された場合に更新料が発生することを前提として,これを新賃料の1.5か月分とするものと解することができるところ,上記契約書中には,同条以外に更新料に関する定めはなく,更新料に限らず法定更新の場合を想定した定めは存在しない。 そうすると,本件賃貸借契約が法定更新された場合に更新料を支払うことが合意されていたとは認められないのであり,本件賃貸借契約が法定更新により期間の定めのないものとなったこととの均衡を考慮しても,法定更新に伴う更新料の支払義務を負わない
【3】このように,上記裁判例では,法定更新の場合に更新料を支払う旨の明記がないケースで,いずれも借家の貸主による更新料の請求を棄却しています(逆にいえば,「法定更新の場合にも更新料の支払義務がある」旨が特約に明記されていれば,法定更新の場合でも更新料の支払義務が生じると解されます)。
【4】他方で,借地の場合は,法定更新の場合も期間の定めのない賃貸借契約とはならず,最初の更新時20年,その後の更新時10年の期間が自動的に設定されますので(借地借家法4条,5条1項。但し,旧借地法下の借地契約の場合,堅固な建物につき30年,その他の建物につき20年となる。旧借地法6条1項後段,5条1項),「合意更新の場合に比して,賃貸借期間の定めの点において,賃借人にとって不利益である」(前掲【東京地裁平成25年3月19日判決】)とはいえず,借家の場合と同列に考えることはできません。
【5】現に【東京地裁昭和49年1月28日判決】は,借地契約の法定更新において更新料の特約が一切存在していなかった事案で,「東京都区内においては,建物所有を目的とする土地賃貸借契約において,契約期間が満了して契約の更新が行われる際に,建物の存する場合,特別の事情のない限り,賃借人より賃貸人に対して更新料の名の下に相当額の金員を支払うという慣習が存在している。右の更新料は、更新の請求又は使用継続による法定更新(借地法4,6条)がなされていることを前提として単に更新料の支払のみが約定されることもあり,又,合意による更新(同法5条)の際にいわば更新の条件という形でその支払が約されることもある。形式としては,むしろ後者の場合が多いが,借地法に既に法定更新の規定がある現在では,更新の合意は賃貸人において法定更新に対して異議を述べないということを確認する以上の意味はなく、更新の効果を生ずるという点からみる限り法定更新と合意更新とを区別する実益はない。合意更新が成立するに至る実際の経過を見てみても,賃貸人は法定更新を前提として単に期間満了を契機として更新料の支払を請求し,賃借人とその額について合意が成立した場合,念のため賃貸借契約自体も合意によつて更新するという形をとるに過ぎない場合が殆んどである。(もし法定更新が成立しない場合であれば,その際の合意更新は実質的には新契約による借地権設定と同様であるから,賃貸人は通常の権利金相当額を要求する筈で、少額の更新料で満足する訳はない。)右に見たように,更新料は,法定更新の場合であると合意更新の場合であるとを問わず,要するに期間満了により更新するに際して更新自体を理由として支払われるものであるということができる。」として,借地権価格の3%をもって更新料と認定し支払いを命じました。
【6】また,【東京地裁平成25年2月22日判決】でも,「賃貸借契約をさらに合意更新するときは,協議により新たな更新料を定める」との条項の定めがあった事例で,「本件賃貸借契約が合意により更新されたと認めることはできない」が,「本件更新料条項は,期間の満了時に本件賃貸借契約の更新について賃貸人と被告との間で協議することを当然の前提とし,賃貸人が更新を拒絶し本件土地の明渡しを求めるような事態となり,それにもかかわらず法の規定により賃貸借が継続するといった場合はともかく,協議の結果,賃料の額等の賃貸借契約の内容の一部について合意に達することができなくても,賃貸借契約を存続させること自体について意思の不一致がないような場合には,更新料を支払うことを定めたものであると解するのが相当である」とし,「支払うべき更新料の額については,本件更新料条項は,協議が調わない場合には相当な額を支払うとの趣旨であると解するのが合理的であり,その場合の相当な額は,最終的には裁判手続により定めることが予定されていると解することができる」として,借地権価格の6パーセント程度に相当する金額の更新料の支払いを命じました。
【7】そして,この場合の更新料の支払期限については,「更新料支払債務は,本件賃貸借契約の期間の満了により直ちに遅滞に陥ると解することはできないところ,本件更新料条項が,更新料の額を協議により定めるとしていることを考慮すれば,更新料支払債務は,更新料の支払請求がされ,本件賃貸借期間の満了後,協議に要する合理的期間が経過したときに遅滞に陥ると解するのが相当である」「本件賃貸借契約の期間満了の前から,相当額の更新料の支払を求めていたと認められるところ,協議に要する合理的期間は2か月を超えることはないというべきである」としています。
【8】また,【東京地裁平成27年2月12日判決】では,契約書に更新料に関する規定がなかったものの,前回更新時(合意更新時)に借地権価格の10%相当額の更新料を支払っていたケースで,「更新料については,そもそも賃料の補充ないし異議権の放棄の対価の性質を有しており,合意の協議が整わないで法定更新された場合に賃借人が更新料の支払義務を免れるとすると,賃貸人との公平を害することになることに加え,本件では,賃貸人の承諾のもと本件土地上の建物が新築されて,今後も賃貸借関係が長く続くことが見込まれることが認められることも併せ考慮すると,法定更新の場合にも更新料の支払義務を免れないとすべきである」と判示しました。
【9】もっとも,【最高裁昭和51年10月1日判決】は,「宅地賃貸借契約における賃貸期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習が存在するものとは認めるに足りない」としていますので(最近では【東京地裁平成26年8月29日判決】も同判例を踏襲),契約書上,更新料に関する規定が(合意更新か法定更新かに拘わらず)そもそも一切定められておらず,かつ当事者間の契約の経緯等に鑑み黙示的な合意や慣例も認められないような場合には,借地においても,更新料の支払いを請求することはできないと解して良いでしょう。
【10】ただし,「更新料の支払は,借地契約上その支払義務が定めれれていない場合,もとより,借地人が地主に対して支払う義務はないものの,更新料の支払の有無自体は,更新拒絶の正当事由の判断の一要素となる」(【東京地裁平成28年12月28日決定】)と解されておりますので,賃借人側からすれば,合意更新か法定更新かに関わらず,念のため更新料を支払っておいたほうが,次回更新時に立ち退きを迫られるリスク(=更新拒絶の正当事由が認められるリスク)を多少なりとも軽減できるというメリットは期待できるでしょう。
【11】なお,借地契約の更新料の金額は,立地条件,土地の面積,形状,契約期間の長短,借地条件等によりケースバイケースですが,一般的には借地権価格の5〜10%とする例が多いとも言われていましたが(判例タイムズ第308号236頁),最近では,東京,横浜地区などでは,借地権価格の3〜5%で決められているのが「通常」とも言われています(『借地借家の法律相談<第1次改訂版>』 2011年 学陽書房)。
【結論】
以上より,頭書事例では,借家の場合は,「法定更新の場合でも更新料を支払う」旨の約定がない限り,原則として更新料を請求することはできません。
他方,借地の場合は,「更新時に更新料を支払う」旨の約定さえあれば,法定更新の場合でも5%程度の更新料を請求できる可能性はありますが,更新料についての約定がそもそも一切ない場合には,やはり更新料を請求することはできません。


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