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更新:2022年12月10日 
 事例

A→B→Cと建物が,順次,賃貸されたが,B→Cが無断転貸の場合(Aの承諾を得ていない場合),AはCに対し明け渡し請求できるか。

 解説

1.賃貸人の承諾の要否
民法612条1項では,「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と規定されています。

従って,賃借人が第三者に賃借物件を転貸したり,賃借権を譲渡する場合には,原則として賃貸人の承諾が必要になります。

この場合の「賃貸人の承諾」の取得は法律上の義務ですので,契約書で特に「賃貸人の承諾を得ずに転貸してはならない」というような取り決めがなくても,転貸や賃借権の譲渡には,法律上当然に承諾が必要となりますが,逆に契約書で「賃貸人の承諾がなくても自由に転貸できる」というような特約があれば,賃貸人の承諾は不要となります。

もっとも,賃貸人の承諾が必要になるのは,「転貸」すなわち賃借人が第三者との間で法律上の賃貸借契約を締結する場合ですので,当該第三者との契約が実質的に業務委託契約に過ぎない場合には,「転貸」とはなりませんので,原則として賃貸人の承諾は不要となります(賃貸借契約と業務委託契約との区別については,業務委託契約との区別参照)。

また,もともと法人(会社)として賃借していて,株式・持分譲渡により株主・社員構成や代表取締役等の役員構成が変更されたに過ぎない場合も,法人格の同一性は失われるものではなく,民法612条1項にいう賃借権の譲渡には当たりませんので(【最高裁平成8年10月14日判決】【東京地裁平成27年10月13日判決】等),契約書で特に「賃貸人の承諾を得ずに役員や株主構成を変動させてはならない」というような取り決めがない限り賃貸人の承諾は不要となります。

また,複数人が共同で賃借しているいわゆる賃借権の準共有の場合に,当該準共有者の一人が,他の準共有者に賃借権の準共有持分を譲渡する場合も,賃貸人の承諾は不要と解されています(借地権の準共有の場合につき【最高裁昭和29年10月7日判決】)。

【民法612条】
1 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

【東京地裁昭和27年7月21日判決】(上告審である 【最高裁昭和29年10月7日判決】でも踏襲)。
※「賃借人が本件宅地賃借権を賃貸人の承諾を得ないで譲渡した場合は譲受人は契約を当然解除せられたことを承諾すること」との特約があった事案。

この特約の趣旨は借地権の譲渡により賃借人が交替し最初の賃借人と別個の者が土地の使用をするようになることは相互の信頼関係を破壊し賃貸人に不利益を与えるおそれがあるので賃貸人の承諾なしになされた場合は解除の原因とする趣旨であって本件におけるように借地権の共有者がその持分を他の共有者に譲渡しその結果当初四名の共同賃借人がその内の二名に減少したに過ぎないような場合はこれを含まない趣旨と解するのが相当であり、民法第六百十二条の法意もまた同様に解すべきである

【最高裁平成8年10月14日判決】
民法612条は、賃借人は賃貸人の承諾がなければ賃借権を譲渡することができず、賃借人がこれに反して賃借物を第三者に使用又は収益させたときは、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる旨を定めている。右にいう賃借権の譲渡が賃借人から第三者への賃借権の譲渡を意味することは同条の文理からも明らかであるところ,賃借人が法人である場合において、右法人の構成員や機関に変動が生じても、法人格の同一性が失われるものではないから、賃借権の譲渡には当たらないと解すべきである。
そして、右の理は、特定の個人が経営の実権を握り、社員や役員が右個人及びその家族、知人等によって占められているような小規模で閉鎖的な有限会社が賃借人である場合についても基本的に変わるところはないのであり、右のような小規模で閉鎖的な有限会社において、持分の譲渡及び役員の交代により実質的な経営者が交代しても、同条にいう賃借権の譲渡には当たらないと解するのが相当である。
賃借人に有限会社としての活動の実体がなく、その法人格が全く形骸化しているような場合はともかくとして、そのような事情が認められないのに右のような経営者の交代の事実をとらえて賃借権の譲渡に当たるとすることは、賃借人の法人格を無視するものであり、正当ではない。賃借人である有限会社の経営者の交代の事実が、賃貸借契約における賃貸人・賃借人間の信頼関係を悪化させるものと評価され、その他の事情と相まって賃貸借契約解除の事由となり得るかどうかは、右事実が賃借権の譲渡に当たるかどうかとは別の問題である。
賃貸人としては、有限会社の経営者である個人の資力、信用や同人との信頼関係を重視する場合には、右個人を相手方として賃貸借契約を締結し、あるいは、会社との間で賃貸借契約を締結する際に、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに役員や資本構成を変動させたときは契約を解除することができる旨の特約をするなどの措置を講ずることができるのであり、賃借権の譲渡の有無につき右のように解しても、賃貸人の利益を不当に損なうものとはいえない。

2.無断転貸の効果
転貸につき賃貸人の承諾を得ていなかった場合(すなわち無断転貸の場合)には,賃貸人は原則として契約解除が可能となります(民法612条2項)。

なお,この場合,賃貸人Aとの関係では当該BC間の転貸行為自体が無効となり,転借人Cは賃貸人Aとの関係では「不法占有者」となりますので,賃貸人Aは,AB間の賃貸借契約を(解除もできますが)解除するまでもなく,転借人Cに対し所有権に基づく明渡し請求をすることができます(【最高裁昭和44年2月18日判決】)。

【最高裁昭和44年2月18日判決】
物の賃貸人の承諾をえないで賃借権の譲渡または賃借物の転貸借が行なわれた場合には、右賃貸人は、民法612条2項によつて当該賃貸借契約を解除しなくても、原則として、右譲受人または転借人に対し、直接当該賃貸物について返還請求または明渡請求をすることができるものと解すべきである。

3.解除権の制限
もっとも,とりわけ賃貸借契約のような継続的契約においては,法律違反や契約違反があったからといって必ずしも即座に契約解除できるわけではありません(債務不履行解除の可否参照)。

無断転貸や無断賃借権譲渡の場合も,背信行為と認めるに足りない特段の事情があり契約当事者間の信頼関係が破壊される程度に至ったと認められない場合には,賃貸人の承諾がなかったとしても賃貸借契約の解除は認められません(【最高裁昭和28年9月25日判決】【最高裁昭和30年9月22日判決】)。

なお,この「背信行為と認めるに足りない特段の事情」については、転借人側・賃借権の譲受人側が立証責任を負います(前掲【最高裁昭和44年2月18日判決】)。

そこで,どのような事情が「背信行為と認めるに足りない特段の事情」となるのか問題となります。

この点,典型的には,例えば,個人として賃借したあと,その個人が会社を設立し,従業員や建物の使用状況も同一のままその設立した会社に転貸ないし賃借権譲渡したに過ぎない場合には,「背信行為と認めるに足りない特段の事情」があると解されています(【最高裁昭和39年11月19日判決】【最高裁昭和43年9月17日判決】等)。

もっとも,この場合でも,当該法人化後,第三者がその会社の全株式を取得し,経営権を掌握した場合には,その時点から背信性を有するとされます(【大阪高裁昭和42年3月30日判決】【東京地裁昭和50年8月7日判決】)。

したがって,単に個人の賃借人が法人化したに過ぎない場合には,賃貸人の承諾がなくても,転貸や賃借権の譲渡が認められ,契約解除は認められないと解されます。

なお,法人(会社)として賃借していて,株式・持分譲渡により株主・社員構成や代表取締役等の役員構成が変更されたに過ぎない場合は,そもそも賃借権の譲渡に当たらないことは上記1のとおりですが,仮に「賃貸人の承諾を得ずに役員や株主構成を変動させてはならない」というような取り決めがあった場合に,承諾を得ずにこれらの行為を行っても,用法に変動を来すような事情が認められず,株式譲渡により賃貸人に何の不利益も生じていない場合には,やはり背信行為と認めるに足りず,契約解除は認められないと解されます(【東京地裁平成27年10月13日判決】)。

【最高裁昭和28年9月25日判決】
元来民法六一二条は、賃貸借が当事者の個人的信頼を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ、賃借人は賃貸人の承諾がなければ第三者に賃借権を譲渡し又は転貸することを得ないものとすると同時に、賃借人がもし賃貸人の承諾なくして第三者をして賃借物の使用収益を為さしめたときは、賃貸借関係を継続するに堪えない背信的所為があつたものとして、賃貸人において一方的に賃貸借関係を終止せしめ得ることを規定したものと解すべきである。
したがつて、賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益を為さしめた場合においても、賃借人の当該行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては、同条の解除権は発生しないものと解するを相当とする。

【最高裁昭和30年9月22日判決】
民法612条2項が、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで賃借権の譲渡又は賃借物の転貸をした場合、賃貸人に解除権を認めたのは、そもそも賃貸借は信頼関係を基礎とするものであるところ、賃借人にその信頼を裏切るような行為があつたということを理由とするものである。
それ故、たとえ賃借人において賃貸人の承諾を得ないで上記の行為をした場合であつても、賃借人の右行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情のあるときは、賃貸人は同条同項による解除権を行使し得ないものと解するを相当とする。

【最高裁昭和39年11月19日判決】
本件家屋の賃借当初から、階下約七坪の店舗で個人営業をしていたが、税金対策のため、会社組織にし、会社の株主は被上告人の家族、親族の名を借りたに過ぎず、実際の出資は凡て被上告人がしたものであり、右各会社の実権は凡て被上告人が掌握し、その営業は被上告人の個人企業時代と実質的に何らの変更がなく、その従業員、店舗の使用状況も同一であり、また、被上告人は会社から転借料の支払を受けたことなく、かえつて被上告人は本件家屋の賃料を同会社名義の小切手で支払つており、被上告人は同会社を自己と別個独立のものと意識していなかつたというのである。
されば、個人である被上告人が本件賃借家屋を個人企業と実質を同じくする会社に使用させたからといつて、賃貸人との間の信頼関係を破るものとはいえないから、背信行為と認めるに足りない特段の事情あるものとして、上告人らが主張するような民法612条2項による解除権は発生しない。

【大阪高裁昭和42年3月30日判決】
賃借人が個人として借入れた土地を同人が個人企業を会社組織に改め設立した会社に地上建物を所有させてこれに使用さすことは右賃借人が資本的にも人間的にも右会社の支配的地位を占め、会社経営の実権を掌握している限り、賃貸人との間の信頼関係を破るものとはいえないから、背信行為と認めるに足りない特段の事情あるものとして民法第612条2項による解除権は発生しないことに帰着するわけであるが,後に株式の移転、賃借人の役員辞任等によつて会社の実権が第三者に移行したような場合はおのづから事情が変更したものとして、そのときから民法第612条を適用して賃貸借契約を解除することができる

【最高裁昭和43年9月17日判決】
税金、従業員採用等の対策から個人企業を株式会社組織に改めることにし、被上告会社を設立した。
同会社においては、設立以来今日まで被上告人が代表取締役で、その他の役員は同被上告人の妻子および親族であり、株主中被上告人以外のものはすべて妻子および親族の名を借りたにすぎず、実際の出資は全部同被上告人がしたものである。
被上告会社はその設立後今日まで数回の増資をし、その増資資金はすべて被上告人がだしたものである。
右増資にともない、本件建物以外にも店舗が設けられ、従業員数も相当に増加するに至ったが、被上告会社の運営および実権は、なおも実質的に被上告人の個人企業の時代と同様の状態であり、上告人から本件土地を賃借するにあたっては、貸主側においても、借主側においても、借主が被上告会社では不都合で、被上告人個人でなければいけないというような事情はなかった。
被上告人は,被上告会社設立後も個人企業時代と同じく営業の全般を自ら掌握していたので、個人と会社とを区別して考えることなく両者のいずれの名義であれ本件土地を借りることができさえすればよいと考えて、同被上告人を借主とする右賃貸借を締結したものである。
右事実によれば、被上告人が本件土地を同被上告人の個人企業と実質を同じくする被上告会社に使用させたからといって、賃貸人との間の信頼関係を破るものとはいえないから、背信行為と認めるに足りない特段の事情があるものとして、上告人が主張するような民法612条2項による解除権は発生しない。

【東京地裁昭和50年8月7日判決】
被告会社の設立とともになされた賃借人より被告会社への本件賃借権の譲渡は、右会社が賃借人の従前より経営するカメラ、眼鏡店を法人化したいわゆる同族会社であった故に、賃貸人との間の信頼関係を破壊するものとは認められなかったけれども、被告会社の現代表者が被告会社の全株式を取得して、その経営権を掌握した後は、被告会社は賃借人との関係を一切清算してその実態を一変し、賃貸人の承諾が認められない以上、被告は賃貸人又はその承継人である原告に対し、本件賃借権をもって本件家屋に対する占有権原を対抗することができなくなったというべきである。

【東京地裁平成27年10月13日判決】
本件株式譲渡が被告の全株式を譲渡することを内容とするものであり,これに近接した時期に被告の役員が新株主の関係者に交代していることから,被告における株式及び支配の変動は大規模なものということができ,被告は本件各賃貸借契約上負っていた届出義務及び原告の書面による承諾を得る義務に違反してはいるものの,賃料支払義務の履行や目的物の用法に変動を来すような事情は認められず,他に本件株式譲渡により原告に何らかの不利益が生じたと認めることができないから,原告と被告の間の信頼関係が破壊されたということはできない。
したがって,原告は,被告に対し,本件株式譲渡を理由に賃貸借契約を解除することはできない。

4.解除が認められない場合の効果
「背信行為と認めるに足りない特段の事情」が認められると,BC間の転貸借契約は賃貸人Aとの関係でも有効となり,転借人は承諾を得た場合と同様に右転借権をもって賃貸人に対抗することができるようになりますので(【最高裁昭和62年3月24日判決】),賃貸人Aは,転借人Cに対し,明け渡しの請求もできなくなります。

そして,その後の法律関係は場合は,通常の転貸借(サブリース)と同様の規律となります。

【最高裁昭和62年3月24日判決】
土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなく右土地を他に転貸しても、転貸について賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が民法612条2項により賃貸借を解除することができない場合において、賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、これが賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において法定解除権の行使ができるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず、したがって、転借人に対して賃貸土地の明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。
けだし、賃貸人は、賃借人と賃貸借を合意解除しても、特段の事情のない限り、転貸借について承諾を与えた転借人に対しては右合意解除の効果を対抗することはできないものであるところ、賃貸人の承諾を得ないでされた転貸であっても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため、賃貸人が右無断転貸を理由として賃貸借を解除することができない場合には、転借人は承諾を得た場合と同様に右転借権をもって賃貸人に対抗することができるのであり、したがって、賃貸人が賃借人との間でした賃貸借の合意解除との関係において、賃貸人の承諾を得た転貸借と賃貸人の承諾はないものの賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある転貸借とを別異に取り扱うべき理由はないからである。

 結論

以上より,頭書事例では,原則として賃貸人Aは転借人Cに対し明け渡しを請求することができますが,賃借人(兼転貸人)Bと転借人Cが実質的に同一会社であるなど「背信行為と認めるに足りない特段の事情」を賃借人(兼転貸人)Bあるいは転借人C側で立証したときは,BC間の転貸借契約はAとの関係でも有効となり,AはCに対し明け渡しを請求することはできません。

 実務上の注意点

5.一部転貸の場合
「背信行為と認めるに足りない特段の事情」が認められない場合には,たとえ,無断転貸しているのが,賃貸目的物の一部分であっても,以下の判例に照らし,原則として賃貸借契約の解除が認めら得ると解されます。

【最高裁昭和28年1月30日判決】
家屋の一部の無断転貸を理由として家屋全部の賃貸借を解除しても、右解除権の行使を目して権利濫用とはいえない。

【最高裁昭和32年11月12日判決】
一個の賃貸借契約によつて二棟の建物を賃貸した場合には、その賃貸借により賃貸人、賃借人間に生ずる信頼関係は、単一不可分であるこというまでもないから、賃借人が一棟の建物を賃貸人の承諾を得ないで転貸する等民法612条1項に違反した場合には、その賃貸借関係全体の信任は裏切られたものとみるべきである。
従つて、賃貸人は契約の全部を解除して賃借人との間の賃貸借関係を終了させその関係を絶つことができるものと解すべきである。

【最高裁昭和34年7月17日判決】
※無断転貸部分の土地が全体の10分の1弱だった事案。

それぞれ建物敷地として占有使用させている部分の面積は合計三〇坪であるというのであるから、割合にして僅か十分の一弱にすぎないことは所論のとおりである。
しかし、原審は、なお、本件土地は道路に沿つた海岸の波打ぎわに存する砂地で、前記三〇坪及び上告人所有建物の敷地一二坪を除いた残余の部分はとり立てていう程の用途に使用されているものでない事実をも認定しているのであって、このような事実関係のもとでは、たとえ占有使用させている部分の面積が本件土地の総面積に比し僅かであつても、右占有使用につき賃貸人たる被上告人の承諾がない以上、被上告人は本件土地全部につき上告人との間の賃貸借契約を解除し得るものと解すべく、右解除権の行使をもつて権利乱用というのはあたらない。

6.転貸解消した場合
通説的には,一旦解除権が発生しても,解除の意思表示が債務者に到達するより前に,遅滞していた債務が弁済され,債務不履行状態が解消された場合には,債権者の解除権は消滅すると解されています(谷口知平ほか編『新版注釈民法(13)(補訂版)』〔有斐閣 2006年〕833頁)。

この点,【東京地裁昭和39年8月15日】でも,「催告期間後の弁済の提供につき債権者においてその受領を拒絶してすでに発した解除の意思表示の到達を待ち得るのにあえてその挙に出ず、異議なく催告にかかる本来の弁済提供を受領したときは、もはや解除権は消滅し、すでに発せられた解除の意思表示はその効力を生じ得ないと解するのが信義上妥当であり、このことは賃貸借のような継続的契約の解除においても同様に解してさしつかえない」と判示されています。

もっとも,賃貸借契約は,1回限りで契約関係が終了する売買契約と違い,契約関係が一定期間継続する性質を有し,当事者間の信頼関係を基礎とするため,単なる賃料不払いのような場合ではなく,「無断転貸行為」により信頼関係破壊された場合(「背信行為と認めるに足りない特段の事情」が認められない場合)には,たとえ,賃貸借契約解除前に無断転貸状態が解消されたとしても信頼回復は困難であり,以下の判例に照らしても,なお賃貸借契約の解除が認められ得ると解されます。

【大審院昭和10年4月22日判決】
賃借人カ賃貸人ノ承諾ヲ得スシテ賃借物ヲ他人ニ転貸シタルトキハ賃借人ノ義務ニ違背シタルモノナレハ賃貸人ハ賃借人ニ対シ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得ルハ民法第六百十二条ノ規定スル所ニシテ其ノ解除ノ意思表示ヲ為スノ際既ニ転貸借契約終了シタリトスルモ右意思表示ノ効力ヲ阻却スヘキモノニ非ス

【東京地裁昭和31年6月25日判決】
無断転貸又は無断賃借権譲渡によって一旦賃貸人の賃借人に対する信頼が破られた場合には当該転貸借又は賃借権譲渡が既に終了した後であっても,再び信頼関係が回復されたと見られる特別の事情がない限り賃貸借契約を解除するのに何等支障はない

【最高裁昭和32年12月10日判決】
※「解除当時たまたま転貸が終了していても、それがため信頼関係が回復され将来の不安が去つたものと認めがたい」「本件解除当時における転貸終了の事実はなんら解除の効力を阻却しない」とした原審につき「正当」と判示した事案。

無断転貸が背信行為にあたるものとして解除権が発生した場合であるときは、その後その転貸が終了したからといつて、その一事のみにより、右転貸が回復し得ない程信頼関係を破壊したものではないとし、解除権の行使を許すべからざるものと断定しなければならぬものではない。

7.賃料受領した場合
賃貸人が無断転貸の事実を知りながら賃料を受領した場合あるいは解除権行使後に賃料を受領した場合であっても,以下の判例に照らし,当然には解除権の消滅あるいは解除の意思表示の撤回とはなりません。

【最高裁昭和38年12月10日判決】
無断転貸により賃貸借契約の解除権が発生した場合においても,解除権を行使するかどうか,また何時行使するかは賃貸人の任意であるから,賃貸人が無断転貸の事実を知りながら異議を述べずに賃借人から賃料を受取つたという一事のみにより,転貸についての黙示の承諾があつたものと認めなければならないものではない

【最高裁昭和39年4月10日判決】
契約解除の翌日以降の賃料として供託された金員の受領については、被上告人において右受領により本件家屋の賃貸借の解除の効果を消滅せしめもしくはそのときに新たな賃貸借契約を締結したものと認めるべき特別の事情でもあれば格別であるが、そのような事情は認められないばかりか、却つて、被上告人は右供託金受領の前後を通じて本件賃貸借契約が解除されたことを主張して上告人に対し本件家屋の明渡を求める本訴を維持しているのであるから、被上告人において本件家屋賃貸の対価として右供託金を受領する趣旨であつたとは到底解し得ないところであり、このような事情に照せば、被上告人が右供託金を本件賃貸借契約解除後の損害金の趣旨で受領したものとの原審の判断は,首肯するに足りるところである。
従つて被上告人が右供託金の受領により本件賃貸借契約解除の意思表示を撤回したとの上告人の主張を排斥した原判決には、所論の違法はなく、論旨は採用し得ない。 

8.会社分割による場合
会社分割とは,株式会社又は合同会社が、その事業に関して有する権利義務の全部また一部を、会社法に基づく分割手続により他の既存の会社(承継会社)又は分割により新設する会社(新設会社)に承継させることをいい,前者(既存の会社に承継させるもの)を「吸収分割」(会社法2条29号),後者(新設する会社に承継させるもの)を「新設分割」(同法2条30号)といいます。

会社分割の効果として,債権者たる賃貸人の同意がなくても賃貸借契約における賃借人の地位が承継会社又は新設会社に承継されるため(会社法759条1項,764条1項),これが賃借権の無断譲渡に該当しないか問題となります。

この点,会社分割は(吸収分割も新設分割も),そもそも契約相手方の同意なしに契約上の地位一切を承継させる会社法で認められている制度で,相続などと同様,いわゆる包括承継(特定の契約上の地位や個別の財産のみが承継されるものではなく,その事業に属する全ての契約上の地位が一括して移転するもの)の一種であり,いわば法人格自体の分割承継であるため,原則として,賃借権の譲渡には当たらないと考えられています(【東京地裁平成30年11月20日判決】。なお,吸収合併の事案につき【東京高裁昭和43年4月16日判決】参照)。

従って,単に「賃借権の譲渡を禁止する」という条項のみでは,会社分割は「賃借権の譲渡」には該当しないため,会社分割を理由に無断譲渡であると主張して契約解除することは原則としてできません。

もっとも,会社分割は,賃借人の地位が既存又は新設される他の会社に承継される会社組織自体の変更であって,これによる賃借人の人的・物的要素の変更の程度が重大といえる場合には,人的物的信用ないし信頼関係に変更があるものとして,実質的な契約主体の変更又は実質的な賃借権譲渡に該当する余地があります(吸収分割につき【仙台高裁平成29年3月17決定】,新設分割につき【東京地裁平成22年5月20日判決】)。

従って,「賃借権の譲渡(役員,資本構成等の変更による実質上の賃借権譲渡,契約主体の変更,合併及び会社分割等による包括承継も含む)を禁止する」というように,会社分割の場合も承諾を要する旨が明記されていれば,当該条項を根拠に,無断での会社分割を理由とする賃貸借契約の解除が認められる可能性があります。

ただし,その場合でも,背信行為と認めるに足りない特段の事情があり契約当事者間の信頼関係が破壊される程度に至ったと認められない場合には,賃貸借契約の解除が認められないことは,前掲【最高裁昭和28年9月25日判決】及び前掲【最高裁昭和30年9月22日判決】と同様です。

この点,【東京地裁令和2年12月9日判決】でも,上記のような「包括承継も含む」旨の約定があった事案で,「賃借人の信用状態が本件会社分割により大きく変化したともいえない」こと等を理由に,会社分割に伴う賃借人の地位の承継が「背信行為であると認めるに足りない特段の事情がある」として,契約解除を否定しています。

以上要するに,会社分割による賃借人の地位の承継は,原則として「賃借権の譲渡」に該当しないため賃貸人の承諾は不要と考えられますが,賃貸借契約書で「会社分割の場合も賃貸人の承諾を要する」旨の約定があれば,無断での会社分割は当該約定違反となるため,背信行為であると認めるに足りない特段の事情の有無次第で,無断での会社分割を理由とする契約解除が認められる可能性があります。

【会社法2条】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一~二十八 省略

二十九 吸収分割 株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。

三十 新設分割 一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。

三十一 以下省略

【会社法759条1項】
吸収分割承継株式会社は、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い、吸収分割会社の権利義務を承継する。

【会社法764条1項】
新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する。

【東京高裁昭和43年4月16日判決】
※吸収合併の事案。

法が賃借権の無断譲渡または転貸を賃貸借契約の解除事由としているのは、賃貸借が本来当事者間の信頼関係を基礎として成立する継続的な関係だからである。
すなわち、賃貸借は長期にわたり当事者を拘束する継続的な関係であるから、賃貸人には賃借人を選択するの自由を保持せしめる必要があり、したがって、その意に反して賃借人が交替しまたは実質上新たな賃借人の加入する結果を抑止しなければならないのである。
この意味において、法律上賃借権の譲渡と目される行為がありながら、その行為が信頼関係を裏切らない特別の事情があるとして賃貸人の解除権の行使を許容しないのは、本来筋道の通らない論であるというのほかはない。
けだし、無断譲渡または転貸自体には当然に賃借人の背信性が内在するものというべきだからからである。
しかし、法形式上賃借権の譲渡または転貸というのほかない場合であつても、その実質においては民法第六一二条にいわゆる賃借権の譲渡または転貸(無断譲渡または転貸禁止条項における譲渡または転貸も同じ)に該当しないと認むべき場合も存しうる。
たとえば、引揚者たる親族を一時借家に収容する場合、借家人が親族の学生を下宿代りに同居させる場合または法定の推定相続人に借地上の家屋を贈与する場合などこれに属する。
従来の実務例においては、これらの場合にあるいは賃借権の譲渡もしくは転貸の事実を否定し、または賃借権の譲渡または転貸の事実を認めながら賃貸借の解除を権利の濫用としてその効力を否定しているが、当裁判所の解するところによれば、これらの場合は原則として民法第六一二条にいわゆる賃借権の譲渡または転貸に当らないというべきものなのである。
しからば、会社の合併による賃借権の移転の場合はどうか。被控訴人らは、合併は相続と異り当事者の行為によるものであるから、賃借権が合併によつて移転する場合も民法第六一二条にいう賃借権の譲渡がある場合に該当すると主張する。一理ある論である。
しかし、合併はいわば人格の承継であつて個々の財産の移転ではないから、それが当事者会社の行為によつてなされるからといつて同条にいう賃借権の譲渡を伴うものと解することはできない
これを実質的にみるも、存続会社または吸収会社は合併の当事者会社または被吸収会社の権利義務を包括的に承継する意味においてこれと同一性を有し、いわば体内の一部にこれを包容している関係にあるから、賃貸人との関係では依然として賃借人である合併の当事者会社または被吸収会社が賃借人であると解して差し支えなく、その間に信頼関係を裏切る賃借権の譲渡の存在を認むべき理由はない。
合併により企業規模が拡大し、賃貸物件の使用の態様に影響を与えるおそれがあることは、個人企業を共同経営とした場合と異なるところがなく、これを無制限に放任しては賃貸人の利益を害するとも考えられないことはないが、賃借物件の使用の態様に変化を生じうることは賃借人が存続会社または吸収会社である場合にも想像しうることであつて、かかる使用態様の変化はそれが用法違反とならない限り賃貸人として認容せざるをえず、これを理由として人格の承継である合併による賃借権の移転を前記法条にいわゆる賃借権の譲渡と解することはできないのである。

【東京地裁平成22年5月20日判決】
※「禁止事項 貸室の一部または全部を問わず,本契約に基づく賃借権を第三者へ譲渡(担保の提供または代表者,役員等の変更による実質上の賃借権譲渡及び合併を含む)し,または貸室を転貸(有償,無償を問わず,または共同使用及びこれに準ずる一切の行為を含む)すること」「変更通知 賃借人にその所在地,商号,代表者その他商業登記事項もしくは身分上重大な変更がある場合は,変更登記等終了後速やかに新登記事項記載の謄本を添付のうえ賃貸人に通知し,契約書等の変更手続を行わなければならない」との約定が設けられていたが,新設分割により新設された承継会社に賃借権が承継された事案。 

本件禁止事項の文言上,会社分割ないし株式譲渡は実質的な賃借権譲渡の事由として列挙されていないが,本件禁止事項の趣旨は,法人格の異なる第三者への賃借権の特定承継・移転に限らず,大幅な賃借人の人的・物的要素の変更があった場合にも,賃貸借契約の当事者間の信頼関係に重大な影響を与えうることから,実質的にみて賃借権を譲渡した場合と評価できるような大幅な人的・物的要素の変更も信頼関係を破壊する行為としてこれを禁止するところにあると解するのが相当であり,これによれば,本件禁止事項により列挙された禁止事由は例示列挙にすぎず,会社分割ないし株式譲渡も,これによる賃借人の人的・物的要素の変更の程度が重大といえる場合には実質的な賃借権譲渡に当たりうるものというべきである。
<中略>
本件各契約において,賃借人の商業登記事項等の重要な変更につき速やかに賃貸人に通知すべき義務を課した趣旨は,その情報を速やかに賃貸人に開示させて,当該変更が実質的な賃借人の変更や賃借権の譲渡に該当するか否かを判断し,もって賃貸借契約の当事者間に必要な信頼関係の維持に資することにあると解されるところ,被告らは,新設分割が成立してから約6か月もの間,原告に同事実を知らせないまま本件各建物の使用を継続していたことが認められ,これによれば,被告らの通知の遅滞は,通知義務に違反するものと認めるのが相当である。
<中略>
会社分割により現に賃借権の承継がなされた状態が生じた以上,その後に再度の組織変更等の可能性が想定されるとしても,ひとまず会社分割の事実を通知した上でその後の経過を逐一賃貸人に報告することが,賃貸人の混乱を避け,ひいては賃貸借契約の当事者間の信頼関係の維持に資するものというべきであり,被告らが主張する事情は約6か月間もの通知懈怠を正当化しうる理由とはならない。
<中略>
当事者間の信頼関係を破壊しないと評価しうる特段の事情が存するものとはにわかに認められない。
<中略>
本件各契約の無催告解除は有効と解するのが相当である。

【仙台高裁平成29年3月17日決定】
※「賃借人は,本件契約に基づく賃借人の権利(敷金返還請求権を含む。)の全部又は一部を第三者に譲渡等をしたり、債権者の文書による承諾を得た場合を除き本件建物の全部又は一部を第三者に転貸等をしたりするなどしてはならない」との約定のほかに,「賃借人は、代表者、法人の名称、店名又は定款の変更があったとき、資本構成に重大な変更があったとき等には、遅滞なく文書をもって賃貸人に届けなければならず、この届出の内容が実質的に契約主体の変更となる場合には、賃貸人は本件契約を解除することができる」との約定が設けられていた事案。

一般に賃貸借契約は、当事者間の人的物的信用ないし信頼関係を基礎とする継続的契約であるところ、特に本件契約については、本件建物が本件事業のために少なくとも約6億円をかけて建設されたものであり、他の用途に転用することが困難であることを踏まえ、抗告人が本件建物に対する上記投下資本を確実に回収するために各種条項が設けられたものであることからすると、本件契約における賃借人の人的物的信用の位置付けは極めて高いということができるから、「実質的な契約主体の変更」に該当するか否かは、このような本件契約の特殊性も踏まえ、賃借人の人的物的信用ないし信頼関係に実質的な変更があったか否かにより判断すべきである。
そして,吸収分割により賃借人の地位が他へ承継される場合は、会社組織自体の変更であって、特段の事情がない限り、人的物的信用ないし信頼関係に変更があるものとして「実質的な契約主体の変更」に該当する

【東京地裁平成30年11月20日判決】
会社分割がされれば,新設分割計画の定めに従い,契約相手方の同意なしに契約上の地位も承継されるから,本件賃貸借契約の賃借人の地位の移転について,そもそも原告【※賃貸人】の承諾は不要である。
<中略>
賃借人の地位の移転は,会社分割に基づく包括承継によるものであるから譲渡に該当しない
※【 】内は筆者加筆。

【東京地裁令和2年12月9日判決】
※「乙【※賃借人】は甲【※賃貸人】の文書による承諾を得ないで,賃貸借物件の全部又は一部を転貸し又はその賃借権利を売買質入れ譲渡し又は名義の如何にかかわらず,第三者に使用させたり,その他乙以外の在室名義を表示してはならない。第三者が営業譲渡,合併その他による乙の包括承継者である場合も同様とする」との約定(本件賃貸借契約12条)が設けられていたが,新設分割により新設された承継会社に賃借権が承継された事案。

本件賃貸借契約12条においては,借主である被告分割会社は,原告の文書による承諾を得ないで,本件建物の賃借権を第三者に譲渡してはならないと定められており,当該第三者が営業譲渡,合併等による被告分割会社の包括承継者である場合も同様である旨明記されているところ,被告分割会社は,本件会社分割により,本件建物の賃借権を被告承継会社に承継させ,これについて原告は承諾しておらず,異議を述べているのであるから,被告承継会社への賃借権の承継が本件賃貸借契約12条に反するものであることは明らかである。
これに対し,被告らは,本件賃貸借契約12条は,本件建物の利用方法又は賃借人の信用状態に実質的な変化をもたらさない形式的な賃借人の変更を禁止するものではないと解釈すべきであると主張するものの,営業譲渡,合併等による包括承継者に対する譲渡についても原告の承諾が必要であることが同条項に明記されている以上,形式的な賃借人の変更を禁止の対象外とする趣旨であるとは認められない。
<中略>
本件賃貸借契約上の賃借人の地位の承継は,本件会社分割に伴って生じたものであるところ,本件会社分割は,被告らのグループ内の管理業務を効率化するための組織再編に伴うものであって,被告承継会社は,被告分割会社が本件建物において行っていた本件宅配ピザ事業をそのまま承継したものであるから,本件建物の利用方法には何ら変更がない上,被告分割会社の資産は,被告承継会社において本件宅配ピザ事業を行うため,概ね全て承継されたものと認められ,賃借人の信用状態が本件会社分割により大きく変化したともいえないから,被告分割会社による本件賃貸借契約に基づく債務に係る重畳的債務引受けの有無にかかわらず,本件会社分割に伴う賃借人の地位の承継が,原告に対する背信行為であると認めるに足りない特段の事情があるというべきである。
なお,本件賃貸借契約の解除通知後の事情ではあるものの,被告承継会社が,原告に対する賃料の支払を一度も怠ることなく継続していることは,本件会社分割に伴う賃借人の地位の承継が,原告に対する背信行為に当たらないことを裏付ける一事情といえる。
したがって,原告において,被告承継会社に対する賃借権の承継を理由として,本件賃貸借契約を解除することはできない。

※本頁は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。


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