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不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
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 連帯保証人の責任の範囲
*以下は,多湖・岩田・田村法律事務所としての法的見解を簡略的に紹介したものです。個々の事案に応じて結論は様々ですので,当該事件の解決にとっていかなる方法が最も相応しいかについては,その都度,弁護士にご相談下さい。

【事 例】 連帯保証人の責任の範囲
AがBよりマンションを借り受けるにあたり,CがAの連帯保証人となった場合,C(連帯保証人)は,A(借主)の未払賃料のみならず原状回復費用や残置物撤去費用(明渡費用)についてもB(貸主)に対し責任を負うか。
【解 説】 <多湖・岩田・田村法律事務所/平成29年7月改訂版>
<1> 連帯保証人とは,主債務者(A)が契約上の義務を履行しなかった場合に,主債務者(A)に代わりに義務を履行しなければならない者のことをいい,「連帯」すなわち主債務者に弁済の資力があるか否かに関係なく(仮に主債務者に十分な資力があり且つ取立てが容易であっても)責任を負わされます(実務上は,「連帯保証」がほとんどで,主債務者に十分な資力があり且つ取立・執行が容易であることを立証すれば責任を免れる「単純保証」は極めて稀です)。
<2> そして,賃貸借契約における借主の連帯保証人も,借主が負う賃貸借契約上の義務を代わりに履行する義務を負っていますので,未払賃料や更新料はもちろん,契約終了後の明渡義務や原状回復義務についても責任を負いますし,例えば,借主が不適切な占有使用方法により,建物を著しく毀損した場合には,連帯保証人も借主とともに損害賠償義務を負うことになります(【東京地裁昭和51年7月16日判決】でも,「一般に不動産賃貸借契約における賃借人の保証人は,特段の定めがない限り,その賃貸借契約から生ずる賃借人の一切の債務を担保するものであって,延滞賃料については勿論のこと,契約解除後の賃借物返還義務の履行遅滞による損害賠償義務についても保証責任を負う」と判示されています)。

また,更新が原則とされる建物賃貸借契約においては,連帯保証人の責任は更新後も存続すると解されているため(【最高裁判所平成9年11月13日判決】),契約が更新される限り,連帯保証人の責任もいわば延々と継続するのが原則です。
<3> もっとも,前掲【東京地裁昭和51年7月16日判決】では,「賃貸借契約において賃借人に金額及び期間の定めのない保証人が付されている場合,賃借人が著しく賃料債務の履行を怠り,かつ保証の当時予見できなかった資産状態の悪化があって将来保証人の責任が著しく増大することが予想されるときは,保証人は将来に向かって当該保証契約を解除することができる」とされ,【東京地裁平成10年12月28日判決】でも,「賃貸借契約について連帯保証した者は,当事者間の信頼関係が著しく破壊される等の特段の事情があれば連帯保証契約を一方的に解除しうる」とされています(私見ですが,ここでいう「当事者間の信頼関係」とは,直接的には保証契約当事者間(貸主・連帯保証人間)を指すと解されますが,借主と連帯保証人との関係も「特段の事情」の一要素として加味されると思われます)。
<4> すなわち,一旦,借主の連帯保証人になったら,賃貸借契約が更新(法定更新・合意更新)される限りずっと責任を負わなければならないのかというと必ずしもそうではなく,「特段の事情」があれば,保証人は連帯保証契約を将来に向かって解除することができると解されています(これを実務上「解約告知権」と呼ぶこともあります)。
<5> そして,仮にこのような連帯保証契約の「解除」(解約告知権の行使)が認められない場合であっても,「賃貸借契約更新後に本件連帯保証契約に基づく責任を負わない特段の事情」があれば,連帯保証人は更新後に生じた債務については一定の範囲で責任を免れる余地があります。

前掲【東京地裁平成10年12月28日判決】でも,連帯保証人による連帯保証契約の「解除」(解約告知権の行使)は認めませんでしたが,主に以下の事情を考慮して,連帯保証人において「本件更新後は本件連帯保証責任を負わないと信じたのも無理からぬことであった」とした上,借主が本件更新後に負担した賃料等の債務については「連帯保証責任を負わない特段の事情があったものと解するのが相当である」と判示しました。
(1)本件賃貸借契約には賃料の支払を2か月怠ったときには,貸主は賃貸借契約を無催告解除しうる旨の特約も付されていたこと。

(2)更新前に,連帯保証人から保証契約解除の申し入れがあったこと。

(3)更新時には,借主の延滞額は200万円(6か月分以上)にも及んだが本件賃貸借契約は解除されず,貸主自身ですら賃貸借契約の更新に消極的であったにも拘わらずそのまま法定更新されたこと。

(4)借主は一旦延滞賃料を支払ったものの,更新直後から賃料の延滞が再開し,最終的に延滞賃料が400万円(1年分以上)を超えるまでになったこと。

(5)このような事態が,本件連帯保証契約が締結された当時,契約当事者間において予想されていたものであったとはいい難いこと。
<6> また,【広島地裁福山支部平成20年2月21日判決】は,公営住宅の賃貸借(月額賃料は3万円程度)の事案ですが,10年分の滞納賃料(及び賃料相当損害金)の支払いを連帯保証人に対し請求した事案で,「公営住宅の賃貸借契約に基づく賃料等の滞納があった場合の明渡等請求訴訟の提起に関して,その行政実務において,滞納額とこれについての賃借人の対応の誠実さなどを考慮して慎重に処理すること自体は相当且つ適切な処置であるとしても,そのことによって滞納賃料等の額が拡大した場合に,その損害の負担を安易に連帯保証人に転嫁することは許されず,明渡等請求訴訟の提起を猶予する等の処置をするに際しては,連帯保証人からの要望があった場合等の特段の事情のない限り,滞納額の増加の状況を連帯保証人に適宜通知して連帯保証人の負担が増えることの了解を求めるなど,連帯保証人に対しても相応の措置を講ずべきものである」とした上,次のように認定しています。
「賃借人である訴外Aが,平成6年夏頃から,納付誓約書に記載された約束どおりの納付を滞るようになり,その後,新たな滞納分も加わって,平成11年8月25日現在の滞納額は53万7700円,平成12年8月14日現在の滞納額は59万4100円,平成13年9月3日現在の滞納額は99万0800円,平成14年8月7日現在の滞納額は129万3000円,平成15年8月20日現在の滞納額は172万3400円,平成16年12月20日現在の滞納額は226万7000円,平成17年11月17日現在の滞納額は265万3400円と増加した」にも拘わらず,訴外A(借主)に対しては,再三にわたって催告書を送付し,訪問等により本人と接触し納付指導を行うなどしていたものの,被告(連帯保証人)に対しては,「平成5年12月20日に催告書を送付したのを最後に,平成18年10月11日に至るまで,催告書を全く送付することなく,また,訴外Aの賃料滞納の状況についても一切知らせずに放置していたものであり,原告には内部的な事務引継上の過失又は怠慢が存在するにもかかわらず,その責任を棚上げにする一方,民法上,連帯保証における責任範囲に限定のないことや,連帯債務における請求に絶対効が認められることなどから,被告に対する請求権が形骸的に存続していることを奇貨として,敢えて本件訴訟提起に及んでいるものであり,本件請求における請求額に対する被告の連帯保証人としての責任範囲等を検討するまでもなく,本件請求は権利の濫用として許されないものというべきである」。
<7> なお,最近でも【東京地裁平成27年3月25日判決】が,「(賃貸人が)滞納賃料額が増大していくことを漫然と放置したにも等しいものと評価」できる場合には,「未払賃料及び賃料相当損害金に係る保証債務の履行請求をすることは,(そのような請求権が発生・存続していたとしても)信義誠実の原則に反し許されない」と判示しています。
【結 論】
以上より,頭書事例では,原則としてCはBに対し,未払い賃料等一切の債務をAに代わり弁済する義務を負いますが,借主Aにおいて恒常的な著しい賃料の滞納があるにも拘わらず,BがAに催告するのみで当該事実を連帯保証人に対しては何ら通知せず,滞納賃料が相当額に達しているにも拘らず延々と賃貸借契約を更新した挙句,滞納賃料をまとめて連帯保証人に対し請求するというような場合は,「特段の事情」があるとして更新後の滞納賃料についてはCは責任を負わないか,または,Bの請求が権利濫用(民法1条3項)として棄却される可能性が高いといえます。
従って,貸主としては,賃料の滞納等があった場合には,適宜,保証人に対しても催告書を送付しておく必要があると考えられます。

逆に連帯保証人の立場からすれば,保証契約締結当時予見し得なかった著しい賃料の滞納が生じているにも拘らず,貸主が賃貸借契約の解除及び滞納賃料の実効的な取立てを怠るなどこれを漫然放置し,将来的にさらに滞納賃料(負担)が増大することが予想されるときは,連帯保証契約の解除通知を貸主に対し送付すれば,将来に向かって保証債務を免れる可能性があり,仮に解除としては認められない場合であっても,少なくとも更新後の滞納賃料についての責任を免れるための「特段の事情」の一事情として考慮されると思われますので,いずれにしても,このような場合に解除通知を送付しておくことは非常に有益的と考えられます。
【改正民法】
*公布:平成29年6月2日官報号外第116号(平成32年6月2日までに施行予定)
<458条の2>
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

<465条の2>
1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 民法第446条第2項及び第3項の規定は,個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

<465条の10>
1 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
一 財産及び収支の状況
二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

2  主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

3 前2項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。

<多湖・岩田・田村法律事務所コメント>
賃貸人(債権者)は,連帯保証人から,賃借人(主たる債務者)の滞納状況等の確認を求められた場合にはこれに関する情報を提供しなければならず(458条の2),また,個人が連帯保証人になる場合には,予め連帯保証人が負うこととなる限度額(=極度額)を定めておかなければ連帯保証契約は無効となり(465条の2),さらに契約締結時に賃借人(債務者)の資産状況等につき事実と異なる情報提供があったことを賃貸人(債権者)が知り得た場合には連帯保証契約の取消事由となります(465条の10)。


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