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不動産/借地借家/マンション賃貸トラブル相談|多湖・岩田・田村法律事務所
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所有者変更と賃借人の承諾の要否


 所有者変更と賃借人の承諾の要否
*以下は,多湖・岩田・田村法律事務所としての法的見解を簡略的に紹介したものです。個々の事案に応じて結論は様々ですので,当該事件の解決にとっていかなる方法が最も相応しいかについては,その都度,弁護士にご相談下さい。

【事 例】 所有者変更(オーナーチェンジ)
Aが建物をBに賃貸した状態で,Cに売却する場合(いわゆるオーナーチェンジの場合),賃借人たるBの承諾を要するか。
【解 説】 <多湖・岩田・田村法律事務所/平成30年5月改訂版>
<1> 頭書事例の場合,Bとしては,自らの預かり知らぬところで,契約相手が勝手に変更されてしまうことになりますので,賃借人保護の観点からは,賃借人の承諾を要するべきとも考えられます。

しかしながら,賃借人にとって,賃貸借契約の主たる目的は,建物を使用収益することにありますので,建物を使用収益できさえすれば,賃料等の賃貸条件が変わらない限り,所有者(賃貸人)が誰であるかによって,賃貸人の債務の履行方法が変わるわけではなく,賃借人が害されることは通常想定できません。
<2> そこで,所有権が移転し,新所有者名義の所有権移転登記が具備されれば,新所有者は,賃借人に対し,賃貸人の地位の移転すなわち自己が賃貸人であることを主張でき(賃貸人として賃料の請求等ができ),賃借人に対する通知や賃借人の承諾は不要とするのが,判例実務で確立されています(【大審院大正10年5月30日判決】【最高裁昭和33年9月18日判決】【最高裁昭和46年4月23日判決】【最高裁昭和49年3月19日判決】
<3> この場合には,賃貸人の地位とともに,旧所有者(旧賃貸人)が賃借人から預託を受けた敷金関係も新所有者(新賃貸人)に当然に承継されますが(【最高裁昭和44年7月17日判決】),旧所有者のもとで既に発生していた賃借人に対する未払賃料債権については,当然には承継されず,これも承継・請求するには,別途,旧所有者(旧賃貸人)・新所有者(新賃貸人)間で債権譲渡契約を締結し,旧所有者(旧賃貸人)から賃借人に債権譲渡通知(民法467条1項)をする必要があります(【大審院昭和12年5月7日判決(大民集16巻544頁)】)。
<4> 他方で,所有権移転登記が具備されていないうちは,賃借人にとって,誰が所有者(賃貸人)であるのかはっきりせず賃料二重払いの危険等がありますので,新所有者は,賃借人の承諾ない限り,自己が賃貸人であることを賃借人に主張できません。
【結 論】
以上より,頭書事例では,Cは,所有権移転登記を具備すれば,賃貸人の地位の承継を主張することができ,これに関し,Cの承諾は要りません。
【改正民法】
*公布:平成29年6月2日官報号外第116号(平成32年6月2日までに施行予定)
<605条の2>
1 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。

3 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

4 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

<多湖・岩田・田村法律事務所コメント>
本条1項及び3項は,所有権の移転に伴う賃貸人の地位の移転につき,賃借人の承諾が不要であるという上記判例法理を明文化したものです。

また,本条4項も,賃貸人の地位とともに,旧所有者(旧賃貸人)が賃借人から預託を受けた敷金関係も新所有者(新賃貸人)に当然に承継されるという上記判例法理を明文化したものです。

他方,本条2項は,旧所有者・新所有者間で,賃貸物件の所有権のみを移転させ,賃貸人の地位は留保する(移転させない)という合意をしても,これまでの判例法理では,必ずしも有効とは認められていませんでしたが(【最高裁平成11年3月25日判決】参照),今回の改正により,所有権移転後は新所有者(譲受人)が旧所有者(譲渡人)に物件を賃貸するという合意があれば,賃貸人の地位を留保する(移転させない)という合意も有効となります。



【事 例】 転貸人変更(サブリース会社チェンジ)
AがBに賃貸していた建物をBがCに適法に転貸(サブリース)していたケースで,サブリース会社をBからDに変更する場合,転借人Cの承諾を要するか。
【解 説】 <多湖・岩田・田村法律事務所/平成30年5月版>
<1> 前記事例のとおり,所有権の移転に伴う賃貸人の地位の移転の場合には,登記さえ具備すれば,賃借人の承諾は不要ですが,頭書事例のように,所有権を持たないサブリース会社が,転貸人の地位のみを移転する場合には,転借人の承諾の可否につきどのように解すれば良いのでしょうか。
<2> この点については,【最高裁昭和51年6月21日判決】が,「賃借権の譲渡(転貸人の地位の承継)を受けた者は,その譲渡人がそれを転借人に通知をせず、又は転借人が右譲渡を承諾しない以上、転借人に対し、その転貸人としての地位を主張し得ない」と判示しています。
<3> 上記判例が,「又は」としていることからすれば,譲渡人(旧転貸人)から,転借人に,転貸人の地位の移転を通知すれば(民法467条1項参照),転借人の承諾が無くても,転貸人の地位は移転し,新転貸人は,転借人に対し,これを主張できる(賃料請求できる)と解されます。なお,この場合,転借人への通知は,譲受人(新賃貸人)ではなく,必ず譲渡人(旧賃貸人)からする必要がありますので注意が必要です。
【結 論】
以上より,頭書事例では,BからCに対し,転貸人の地位の移転につき通知すれば,転借人であるCの承諾が無くても,新転貸人Dは,Cに対し,転貸人の地位に基づき賃料等の請求をすることができます。なお,転貸人の地位の移転は,賃貸人Aから見れば賃借人であるBによるDに対する賃借権の譲渡となるため,当然,Aの承諾が必要になります(民法612条)。


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