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一時使用目的(マンスリーマンション)Menu 

更新:2024年9月20日 
 事例

マンスリーマンションに借地借家法が適用されるか。

 解説

1.一時使用目的とは
建物賃貸借契約であっても,「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」(一時使用目的)には,借地借家法は適用されません(借地借家法40条)。

「一時使用」とは,賃貸借契約期間が「短期」という意味ではなく(ただし,「短期」であるという事情は一時使用目的を推認させる間接事実の一つにはなり得ます。【東京地裁平成24年5月18日判決】),一時使用目的の借家契約と認められるためには,契約締結の動機,目的建物の種類,構造,賃借人の賃借目的及び契約後の使用状況,賃料その他の対価の多寡,期間その他の契約条件等の事情を総合的に考慮し,通常の借家契約をしたものでないと認めるに足りる合理的な事情が客観的に認められることを要すると解されており(【最高裁昭和36年10月10日判決】【東京地裁令和4年2月18日判決】),また,借地借家法の規定を潜脱する目的に出たものではないか否かも考慮して判断されます(【東京地裁平成22年9月29日判決】参照)。

この「通常の借家契約をしたものでないと認めるに足りる合理的な事情」とは,例えば,期間を家主の転勤による不在の間に限る場合(【東京地裁平成28年12月26日判決】)や,契約当初から建物の老朽化に伴い貸主において建替えを具体的に検討していることを前提に建替えまでの期間に限定する場合(【東京地裁昭和49年6月25日判決】【東京地裁平成22年9月29判決】)等をいいます。

また,建物明渡請求事件においては,賃貸借契約解除後も,明渡期限を決めた上で,当該明渡期限までの期間に限り,明渡しを猶予する形で和解することがしばしばありますが(期限付合意解除(解除契約)の有効性参照),この場合,契約解除後から明渡期限までの間の賃貸借契約は,法的には一時使用目的であると考えられています(【最高裁昭和43年1月25日判決】【国税不服審判所平成11年6月21日裁決】参照)。

もっとも,かつては「一時使用目的」か否かが争われることがしばしばありましたが,平成12年3月1日に定期建物賃貸借(定期借家)の制度(借地借家法38条)が新設されて以降は,敢えて基準として不明確な「一時使用目的」の賃貸借を採用する必要性は乏しく,多湖・岩田・田村法律事務所でも,解釈をめぐって後々トラブルが生じることを避けるため,できる限り定期建物賃貸借を活用するよう助言しています。

【借地借家法40条】
この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。

【最高裁昭和36年10月10日判決】
借家法八条【※現借地借家法40条】にいわゆる一時使用のための賃貸借といえるためには必ずしもその期間の長短だけを標準として決せられるべきものではなく、賃貸借の目的、動機、その他諸般の事情から、該賃貸借契約を短期間内に限り存続させる趣旨のものであることが、客観的に判断される場合であればよいのであつて、その期間が一年未満の場合でなければならないものではない
※【 】内は筆者加筆。

【最高裁昭和43年1月25日判決】
家屋の賃貸借契約が借家法八条【※現借地借家法40条】にいわゆる一時使用の賃貸借といえるためには、必ずしもその期間の長短だけが標準とさるべきものではなく、賃貸借の目的、動機、その他諸般の事情から、該賃貸借契約を短期間内に限り存続させる趣旨のものであることが、客観的に判断される場合であればよいとすることは当裁判所の判例とするところである(昭和三六年一0月一0日第三小法廷判決、民集一五巻九号二二九四頁参照)。
したがって、その契約条項に、期間満了の際の明渡文言、更新しない旨の合意その他一時賃貸借とする旨の特別な理由が特に明記されていないからといって、その契約を一時使用のための賃貸借と解する妨げとならないことは論をまたない。
原審の確定した事実関係によれば,訴外Aは当初本件係争家屋の一部を無断転借してパチンコ営業をしていたところ、被上告人からもとの占有者に対して家屋明渡請求の訴訟が提起され、同人の敗訴が確定しそうになり、その結果自己の営業の継続が危ぶまれるに至ったため、被上告人に対し示談解決方を申入れ、折衝の結果五年に限って右営業のため本件係争建物を賃借する旨の裁判上の和解をしたというのであって、その動機、目的その他右和解成立の経緯および和解条項について原審の確定した諸般の事情を考慮すれば、右賃貸借契約は右期間に限ってこれを存続せしめることを目的としたものであって、これを一時使用のための賃貸借というを妨げない。
本件賃貸借期間が五年であって、右Aが被上告人に対し多額の損害金および敷金を支払った等本件家屋の使用について多額の投資をしたとしても、本件家屋の位置、形状および同所における前記営業目的に照らせば、右Aは利得の計算のうえにたって右契約を締結しているものと解されるから、かく解することによって、賃借人たる同人に特別の不利益を課するものとはいい難い。
その他、所論が本件和解による契約が一時使用の賃貸借とはいえないことの理由として掲げる事情も、すべて右判断を左右するものとはいえない。
されば、これと同旨の見解にたち、本件家屋に関する和解契約を一時使用のための賃貸借と解した原審の判断は正当である。
※【 】内は筆者加筆。

【東京地裁昭和49年6月25日判決】
建物賃貸借契約が一時使用であるか否かは、賃貸の目的、動機その他諸般の事情を総合して観察し客観的に判断されなければならないが、本件では、原告が鉄筋ビルを建築するため本件建物を取壊すまでの期間に限定して賃貸する趣旨であったことは、被告において十分承知していたこと、それを前提にして本件の賃貸借では賃料を低額にし敷金、権利金の授受をしない等借家法の適用を受け契約更新が予定されている通常の賃貸借とは別異な取扱いがなされていること、このような賃貸借関係は被告だけではなく被告と同じ頃に賃借した他の賃借人との間でも同様であったこと、本件建物の存する新宿駅西口地区ではビル化の要請は時代のすう勢として当然であり、木造二階建である本件建物を鉄筋ビル化することもこの流れにそうものとして理解でき、また、その実現も確実なものとして予定されていたこと、被告のような不動産仲介業の業態では本件建物所在地の有する場所的利益をそれ程大きく享受しているとは認められず、本件建物で営業しなければならない必然性を見出し難いこと等の事情によれば、本件の賃貸借を一時使用のものと認めるだけの客観的合理性は十分あるものと解せられ、他方そのように解したとしても、被告が著しい不利益を蒙るものと認むべき証拠もない。

【国税不服審判所平成11年6月21日裁決】
本件明渡猶予期間は、本件被相続人の本件建物の明渡請求が起こり、その解決方法として本件建物の明渡しを一時猶予する趣旨で裁判上の和解によって約定されたものである。
そうすると、本件和解によって約定された貸借は客観的に一定の期間に限定されたものというべきであるから、本件明渡猶予期間中の貸借は、一時使用目的のものと認めるのが相当である。

【東京地裁平成22年9月29日判決】
①原告は,本件建物が老朽化してきたため,平成12年から平成14年にかけて,本件建物の建替えについて具体的な検討をしていたこと,②原告は,被告から本件建物の賃借の申入れを受け,建替えの必要性があることから,数年間に限定して賃借することを承諾したこと,③被告もこれを承諾したこと,④賃借期間については,被告の要望によって,5年間とされたこと,⑤被告の使用目的が飲食店店舗としてであり,また,賃貸借期間が5年間と比較的長期であるにもかかわらず,敷金の約定はないこと,⑥原告はN弁護士に依頼して,契約書案を作成してもらい,当初案から,借主は,本件建物が老朽化しているため,貸主において建替えを予定していることを確認し,契約更新がない場合であることを予め了承する旨の条項が定められていたが,被告も弁護士に同契約書案の検討を依頼し,契約書案に対する要望を述べたが,上記契約更新をしない旨の条項には変更が加えられなかったこと,⑦原告から契約書案の作成依頼を受けたN弁護士は,原告自身が被告と交渉して本件契約を締結する予定であり,原告が法律には素人であったことから,要件の厳しい定期借家契約とした場合には,定期借家契約としての有効性が問題となり,かえって,5年後に明け渡すという約定の効力が確保できないおそれがあると考え,一時使用目的の賃貸借契約として,契約書案を作成したこと,以上の諸事情が認められ,これらの諸事情によれば,一時使用目的による賃貸借とする合理的な理由があり,借地借家法の規定を潜脱する目的に出たものではなく,原告と被告とが一時使用目的としての賃貸借契約を締結したことが明らかな場合であると認めるのが相当である。

【東京地裁平成24年5月18日判決】
賃貸借期間が約2か月と短期間であることに照らすと,本件賃貸借は,一時使用のために建物の賃貸借をしたものと認めることができ,借地借家法第3章の規定は適用されず(同法40条),本件賃貸借契約は,平成22年5月27日の経過によって終了している。

【東京地裁平成28年12月26日判決】
本件賃貸借契約における契約書の表題は,「家屋一時使用転貸借契約書」とのもので,前文において,原告がBから,Bの転勤中に限って借り受けた本件戸建てに関し,家屋一時使用転貸借契約を締結する旨をうたった上で,2条において「本物件は従来丙(B)が住居として使用したものであり,丙の転勤による丙または丙の家族が不在の間,本物件を借地借家法3章借家の適用を除外する一時使用の目的で甲(原告)が丙より賃借し乙(被告)に転貸することを甲・乙相互に確認する」旨が約されていることからすると,本件賃貸借契約は借地借家法3章の適用を除外する一時使用目的の賃貸借契約であると認められる。

【東京地裁令和4年2月18日判決】
一時使用目的の借家契約と認められるためには,契約締結の動機,目的建物の種類,構造,賃借人の賃借目的及び契約後の使用状況,賃料その他の対価の多寡,期間その他の契約条件等の事情を総合的に考慮し,通常の借家契約をしたものでないと認めるに足りる合理的な事情が客観的に認められることを要すると解するのが相当である。
以上に基づき検討すると,本件建物については,原告が敷地をいつでも自身又は原告経営会社において使用できるようにする旨の意図により,未登記の簡易なプレハブに留められたという経過がある。
また,本件各関連契約と本件賃貸借契約を通じて,契約書には一時使用目的である旨が明記され,特に平成23年契約については,借地借家法の適用による造作買取請求権(同法33条)を排除する趣旨と解される特約が盛り込まれた経過もうかがわれる。
しかしながら,他方で,本件各関連契約と本件賃貸借契約は,期間は1年ずつであるものの10年以上にわたって締結が繰り返されており,その間,本件飲食店の経営が続けられてきた経過がある。
そうすると,関連株式会社と被告合同会社を通じて代表者であった被告としては,本件飲食店の経営を相当期間継続する旨の意図により契約を繰り返してきたことが明らかであるし,本件建物の構造についても,少なくともそのように経営を継続することが不可能又は不合理であることが明らかというほどの事情はなかったことがうかがわれる。
また,原告は,賃料や敷金を低額なものとしていた旨主張し,それに沿う事情もうかがわれないではないものの,上記のとおり10年以上にわたって契約が継続していたことを考慮すれば,一時使用目的を直ちに認めるに足りるものとまでは言い難い。
以上を総合すれば,本件賃貸借契約につき,一時使用目的(同法40条)を認めることはできないと言うべきである。

2.マンスリーマンションの法的性質
マンスリーマンションは,これを字義通り解し,期間1か月単位の賃貸借契約というだけの意味に捉えると,期間1か月であっても,借地借家法が適用され,法定更新される可能性があります。

これに対し,一般的ないわゆる「マンスリーマンション」は,①利用期間を基本1か月間とすることのほか,②居室を住所としての住民票の取得はできないこと,③居室を利用するためのカードキーを1か月ごとに発行すること,④期間経過後は当該発行手続を経なければカードキーの利用ができなくなることを前提とし,賃貸人が1か月毎にカードキーの発行という形で了承しなければ継続し得ないことが外形的にも明らかなものをいいます。

このようなマンスリーマンションは,一時使用目的に該当し,借地借家法は適用されません(【東京地裁平成31年1月17日判決】)。

なお,「マンスリーマンション」は,家具付きの場合も多いと思われますが,家具付きかどうかは,一時使用目的の判断に必ずしも影響しないと考えられます。

【東京地裁平成31年1月17日判決】
賃貸借契約では,本件申込書ないし本件約款により,利用形態が一時使用を目的とすること,利用期間を基本1か月間とすること,居住利用ができないこと,本件建物又は本件居室を住所としての住民票の取得はできないことが合意されている。
<中略>
契約期間が1か月間という短期間で区切られていることや,居住が予定されていないことからすれば,本件賃貸借契約は,一時使用目的であることが形式的に合意されているのみならず,実質的な利用形態としても短期的な利用が予定された契約であるといえる。
そして,本件居室の管理,利用方法をみても,本件居室を利用するためのカードキーを1か月ごとに発行するという運用が一貫してとられていたことからすれば,本件賃貸借契約は,月単位の契約であることが外形的にも明らかにされていたといえるのであり,かかる運用のもとにおいては,本件賃貸借契約は,各月ごとに,原告が,その継続をカードキーの発行という形で了承しなければ,存続し得ないことが前提とされているというべきである。
被告は,本件居室を15年間の長期間に渡って利用してきたこと自体や,その間明示的な契約締結や契約更新の契約書がほとんど作成されていないことをもって,本件賃貸借契約は,従前の賃貸人の時代から継続して自動更新されてきており,これをもって一時使用目的ではないことが明白であると主張するようである。
しかしながら,本件賃貸借契約の期間が1か月ごとであることや,本件居室の管理,運用方法からして,原告が,賃貸借契約の継続をカードキーの発行という形で了承しなければ,契約は存続し得ないことが前提とされているといえることは前記認定のとおりであって,結局,本件賃貸借契約は,毎月のカードキーの発行により合意更新されてきたと評価するのが相当であるから,長期間存続したとしても,合意更新が積み重ねられた結果に過ぎないというべきであり,その性質が変容したと認めることはできない。
また,被告は,カードキーへの印字は,単に入金事実を確認し,その金額でのカードキー自体の有効期間を示すためのものに過ぎないから,カードキー発行の事実は一時使用目的を推認させるものではないと主張するが,前記のとおり,カードキー自体に1か月ごとの有効期間が存在し,期間経過後には発行手続きを経なければカードキーの利用ができなくなるという仕組みがとられていること自体が,被告による本件居室の利用が1か月単位でのみしか継続し得ないことを端的に示しているというべきであり,被告の主張は当を得ない。
<中略>
以上で指摘した,本件賃貸借契約の内容として認められる同契約の目的の合意,契約上予定されている本件居室の利用方法,実際の管理,運用状況等諸般の事情に照らせば,本件賃貸借契約は,一時使用目的のものであると認められる。

 結論

以上より,一般的なマンスリーマンションの賃貸借契約は,一時使用目的であることが客観的に明らかであり,借地借家法は適用されません。

 実務上の注意点

3.民泊の場合
住宅宿泊事業法に基づく,いわゆる民泊については,ホテル等と同様,旅館業の一種又は「宿泊」でありそもそも賃貸借契約ではないとも考えられますが,仮に賃貸借契約と解される場合であっても「マンスリーマンション」と同様に,一時使用目的の賃貸借契約として借地借家法の適用はない考えられます。

【住宅宿泊事業法2条】
1 この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。

一 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。

二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること。

2 この法律において「宿泊」とは、寝具を使用して施設を利用することをいう。

3 この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。

4 以下省略

※本頁は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。


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