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更新:2024年3月23日 
 事例

マンション管理組合規約の改正に必要な手続及び区分所有者の承諾が必要となる「特別の影響」とは何か。

 解説

1.改正に必要な集会決議の要件
規約を改正するためには,管理組合の集会(実務上「総会」ともいいます)を開催し,区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議が必要となります(区分所有法31条1項本文)。

【区分所有法14条】
1 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。

3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。

4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

【区分所有法30条】
1 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。

3 前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。

4 第一項及び第二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。

5 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。

【区分所有法31条】
1 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

【区分所有法34条】
1 集会は、管理者が招集する。

2 管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。

3 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

4 前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。

5 管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

【区分所有法35条】
1 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。

2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。

3 第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。

4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。

5 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

【区分所有法36条】
集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。

【区分所有法37条】
1 集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。

2 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。

3 前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。

【区分所有法38条】
各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。

2.特別の影響とは
一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならないとされています(区分所有法31条1項但書)。

上記「特別の影響」とは,規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいいます(【最高裁平成10年10月30日判決(民集52巻7号1604頁)】)。

もっとも,その判断は容易ではなく,具体的にどのような場合に「区分所有者の受忍すべき限度を超える」といえるのか,しばしば問題となります。

【最高裁平成10年10月30日判決(民集52巻7号1604頁)】 ※シャルマンコーポ博多事件
法三一条一項後段は、区分所有者間の利害を調整するため、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定めているところ、右の「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される。
これを使用料の増額についていえば、使用料の増額は一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすものであるが、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべきであり、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではないというべきである。
また、増額された使用料がそのままでは社会通念上相当な額とは認められない場合であっても、その範囲内の一定額をもって社会通念上相当な額と認めることができるときは、特段の事情がない限り、その限度で、規約の設定、変更等は、専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではなく、専用使用権者の承諾を得ていなくとも有効なものであると解するのが相当である。
そして、増額された使用料が社会通念上相当なものか否かは、当該区分所有関係における諸事情、例えば、(1)当初の専用使用権分譲における対価の額、その額とマンション本体の価格との関係、(2)分譲当時の近隣における類似の駐車場の使用料、その現在までの推移、(3)この間のマンション駐車場の敷地の価格及び公租公課の変動、(4)専用使用権者がマンション駐車場を使用してきた期間、(5)マンション駐車場の維持・管理に要する費用等を総合的に考慮して判断すべきものである。
さらに、本件のように、直接に規約の設定、変更等によることなく、規約の定めに基づき、集会決議により管理費等に関する細則の制定をもって使用料が増額された場合においては、法三一条一項後段の規定を類推適用して区分所有者間の利害の調整を図るのが相当である。
しかるに、原審は、使用料増額に関する前記集会決議が上告人らの専用使用権に「特別の影響」を及ぼすものではないとする理由として、区分所有者相互間における駐車場利用の公平化・適正化と増設駐車場の使用料額との均衡を図るために使用料が増額されたことを挙げるのみであって、前記のような観点から、月額七〇〇円から月額四〇〇〇円等への増額が社会通念上相当なものか否か、さらには、もし月額四〇〇〇円等が相当な額と認められない場合には幾らへの増額であれば相当といえるかについて、所要の審理判断を尽くしていないといわなければならない。
<中略>
管理組合は、規約の設定、変更等又は規約の定めに基づく集会決議をもって使用料を増額することができ、これが専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものでない限り、専用使用権者は増額された使用料の支払義務を負うことになる。
しかし、この「特別の影響」の有無、殊に、増額された使用料が社会通念上相当なものか否かは、裁判所の最終的な判断を待たなければ明らかにならない場合が少なくない。
したがって、専用使用権者が訴訟において使用料増額の効力を争っているような場合には、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、その専用使用権を失わせることは、契約の解除を相当とするに足りる特段の事情がない限り、許されないものと解するのが相当である。

 結論

以上より,規約を改正するためには,区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議が必要となり,これにより「特別の影響」すなわち受忍すべき限度を超える区分所有者がいるときは,その承諾も必要となります。

 実務上の注意点

3.特別の影響を主張する区分所有者の承諾を得ずに規約変更の決議がされた場合の対応
区分所有者が,訴訟において集会決議の効力(特別の影響の有無)を争っている場合には、裁判所の判断を待つことなく、当該区分所有者に対し管理組合が当該集会決議に従った行為(費用の徴収等)をすることは原則として認められないと考えられます(前掲【最高裁平成10年10月30日判決(民集52巻7号1604頁)】)。

※本頁は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。


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