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更新:2023年6月15日 
 事例

AがBに賃貸した建物を,Aの承諾を得てBがCに転貸した後,AB間の賃貸借が合意解除により終了した場合,AはCに対し明け渡し請求できるか。

 解説

1.転貸借の要件
民法612条1項では,「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と規定されています。

従って,賃借人が第三者に賃借物件を転貸したり,賃借権を譲渡する場合には,原則として賃貸人の承諾が必要になります。

なお,賃貸人の承諾を得ないで勝手に転貸した場合は,無断転貸となり,原則として契約解除事由となります。

【民法612条】
1 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

2.転貸承諾の方法
転貸につき賃貸人から承諾を受ける方法としては,一旦賃貸借契約を締結したあと,転貸の必要性が生じた段階で事後的に承諾を受けるというケースはあまり多くありません。

より典型的なのは,賃貸人(オーナー)と賃貸借契約を締結する時点で,転貸することを前提に賃貸借契約を締結するというケースです。

例えば,個人のオーナーAがアパートを建築・所有し,それを不動産賃貸事業者Bが一棟丸ごと一括借り上げし,Bが当該アパートの各部屋をエンドユーザーC等に転貸するというケースです。

この場合,AB間の賃貸借契約書には,「Bは本件建物を転貸目的で借り受けるものであり,Bが転貸することをAは承諾する」という承諾条項があらかじめ規定され,Aは包括的に転貸を承諾したものとみなされますので,Bは,転貸の都度Aの承諾を得なくても,物件を適法に転貸することができます。

もちろん,「但し,反社会的勢力に転貸してはならない」とか「転借人が居住目的の場合に限る」という条件付承諾の場合は,その条件の範囲内でのみBは転貸が可能となります。

3.承諾転貸の効果
賃貸人の承諾を得て適法に転貸された場合には,転借人は,賃貸人に対し,賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として,転貸借契約に基づく義務を直接負うことになります(民法613条1項,2項)。

例えば,賃貸人Aが賃借人(兼転貸人)Bに月額家賃10万円で賃貸し,これをBが転借人Cに月額家賃15万円で転貸したというケースですと,転借人Cは,賃貸人Aに対し,月額家賃「10万円」の債務を直接負担します。

上記の例で,転借人Cが賃貸人Aに直接責任を負うのは,あくまで賃借人Bの債務の範囲が限度となり,AB間の賃貸借契約よりも加重されたBC間の転貸借契約の賃料額(「15万円」)等について直接義務を負うことはありません(【東京地裁平成26年8月26日判決】参照)。

そして,この場合,転借人Cは賃料の「前払」をもって,賃貸人Aに対抗できません(民法613条1項後段)。

上記「前払」か否かは,AB間の賃貸借契約に基づく賃料支払期限ではなく,BC間の転貸借契約に基づく転借料支払期限が基準になると解されています(【大審院昭和7年10月8日判決】)。

例えば,BC間の転貸借契約に基づく転借人Cの転貸人Bに対する転借料支払期限が前月末日とされているケースにおいて,AがCに対し,民法613条1項に基づき5月分の賃料を4月30日に直接請求した場合,すでにCがBに対し5月分の転借料を本来の支払期限である4月30日より前の4月15日に支払っていたとしても,CはAの請求を拒めない(二重払いの危険を負う)ことになります(【東京地裁平成27年7月6日判決】参照)。

これに対し,転借人Cが転借料の支払期限以降(上記の例でいえば4月30日以降)に転借料を転貸人Bに支払えば,賃貸人Aに対抗することができるため(613条1項後段反対解釈),転借人Cは,賃貸人Aからの5月分の直接請求を拒否することができます。

すなわち,民法613条1項に基づくAのCに対する賃料直接請求権と転貸借契約に基づくBのCに対する転借料請求権との間に優劣はなく「連帯債権類似の関係」にあると考えられており(【東京地裁平成14年12月27日判決】),連帯債権者の一人に対する弁済の効力は他の連帯債権者にも及ぶため(民法432条),Cとしては,転借料の支払期限以降にBに転借料を支払えば,その支払いの効力をAに主張してAからの直接請求を拒むことができます。

なお,私見ですが,上記の例で,4月29日(金祝),4月30日(土),5月1(日),5月2(月)という場合には,4月28日(木)にCがBに転借料を支払ったとしても「前払」には該当せず,Aに対抗できると解されます。

なぜなら,「前払」か否かの基準となる転貸借契約に基づく転借料支払期限は,契約に定められた期限をいうところ(【大審院昭和7年10月8日判決】),「毎月末日までに翌月分を銀行送金の方法で支払う」との約定があれば,「前月末日が土日祝祭日の場合は直前の銀行営業日まで」を期限とすることが(仮に契約書に明記されていなくても)黙示的に合意されている(黙示的に定められている)と解するのが当事者の合理的意思に合致するためです(もちろん,今後ネットバンキングが完全に浸透し土日も含め24時間365日振込手続できるのが当たり前の状況になれば,このような合理的意思の解釈も変わってくる可能性はありますが)。

また,転借人Cは,基本的には,賃借人(兼転貸人)Bの履行補助者あるいは履行代用者とみなされますので,仮に転借人Cの過失により建物を損傷させた場合には,当該損傷につき賃借人(兼転貸人)Bに過失が無くても,BはCと連帯して責任を負うと解されています(【大審院昭和4年6月19日判決】)。

もっとも,この場合,民法715条1項の使用者責任(会社の従業員が職務に付随して第三者に損害を与えた場合に会社が連帯責任を負うという報償責任の法理)と類似することから,同項但書の趣旨を類推し,転貸人が,転借人の選任・監督について相当の注意をした時は,連帯責任を免れると解する余地もあります(【東京地裁昭和40年9月25日判決】)。

従って,多湖・岩田・田村法律事務所では,オーナー側(賃貸人)から事前に相談を受けた際には,転貸を承諾する条件として,念のため次のような特約条項を付けておくよう助言しています。

【条項例】
転借人若しくはその代理人、使用人、請負人、訪問者その他の関係者(以下,併せて「転借人等」という。)の故意又は過失により、賃貸人又は賃貸物件に損害を与えた場合には、賃借人は、自己の過失の有無及び転借人等の選任・監督につき相当の注意をしたか否かを問わず,転借人等と連帯して,賃貸人に対し,損害賠償等一切の責任を負うものとする。

【民法432条】
債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる

【民法613条】
1 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない

2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。

3 省略

【民法715条1項】
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

【大審院昭和4年6月19日判決】
現実ニ物ヲ使用シツツアル者ハ転借人ソノ人ナルヲ以テ其ノ故意若ハ過失ニ依リ物ヲ滅失毀損シタルトキハ縦令転貸借ニ付賃貸人ノ承諾アリ又転貸人ソノ人ニ於テ何等責ムヘキ事情無キ場合ト雖転貸人トシテ其ノ責ニ任セサルヲ得ス

【大審院昭和7年10月8日判決】
民法第六百十三条第一項後段ニ転借人ハ借賃ノ前払ヲ以テ賃貸人ニ対抗スルコトヲ得サル旨ノ規定アル所以ハ賃借人カ賃貸人ノ承諾ヲ得テ適法ニ賃借物ヲ転貸シタル場合ニ於テ転貸人及転借人カ通謀シ転借人ニ於テ転貸借契約ニ於ケル賃料ヲ当該契約ノ趣旨ニ依ラスシテ転貸人ニ弁済シ之ニ因リ転借人ニ対スル賃貸人ノ賃料請求権ヲ消滅セシムルコトヲ防遏セムトスルノ主旨ニ外ナラサルカ故ニ右規定ニ所謂借賃ノ前払トハ転貸借契約ニ於ケル賃料ヲ其ノ契約ニ定メタル弁済期ヨリ前ニ支払フコトノ趣旨ナリト解スルヲ相当トス。

【東京地裁昭和40年9月25日判決】
家屋の賃借人が自らその家屋に居住せず、さらにこれを賃貸ないし使用貸により第三者をして、居住させ、しかもそのことにつき賃貸人の承諾を得ている場合に、その賃借物が右第三者(賃借人のいわば履行代用者)の責に帰すべき事由により焼失した場合には、賃借人としては右第三者の選任監督につき過失がある場合にのみ賃貸人に対し右賃借物の焼失による損害賠償の義務を負担するものと解すべきである(右履行代用者に故意あるいは重大な過失がある場合には、賃借人の選任あるいは少くともその監督に過失があるものとされる場合が多いであろう。なお、右賃借人が会社であり、履行代用者がその会社員である場合にも右と異る法理を用いなければならない理由は見当らない)。

【東京地裁平成14年12月27日判決】
民法六一三条一項は、転借人が賃貸人に対して直接に義務を負う旨を定めただけで、転貸人に対する義務に優先しあるいは先んじて賃貸人に対して義務を負う旨定めているものではないし、民法三六四条のように債権の優先・劣後の関係が生じる場合に準用される民法四六七条二項の規定も準用されていないから、文理上、賃貸人の転借人に対する賃料請求が転貸人の転借人に対する賃料請求に優先するものと解することはできない。
また、民法六一三条一項の趣旨が賃貸人を保護する点にあると認められるが、転借人が賃貸人に直接に義務を負うものとした点だけでも賃貸人を保護したものと認められる(たとえば、転貸人が行方不明になった場合でも、賃貸人は賃料の支払いを受け得ることになるし、賃貸人が転借人に対し保管義務違反による損害賠償請求や賃貸借契約終了による目的物返還請求など債権法上の請求をすることができることとなる。)のであるから、賃貸人を保護するというだけで直ちに、賃貸人の転借人に対する賃料請求が転貸人の転借人に対する賃料請求に優先するものと解すべきことにはならない。
さらに、仮に、賃貸人の転借人に対する賃料請求が転貸人の転借人に対する賃料請求に優先するものと解した場合、次のような不都合がある。
すなわち、転借人は賃貸人に対して少なくとも転貸人の賃貸人に対する賃料の範囲内で賃料を支払うべきこととなるが、そのような場合でも転貸人もまた賃貸人に賃料を支払うべき義務を負うものと解されるから、賃貸人に対し、転貸人と転借人の双方が賃料を弁済する可能性があるところ、転貸人が転借人に先んじて賃料を支払った場合、転借人の賃貸人に対する支払は有効な賃料の弁済とはならないから、転借人の転貸人に対する転貸賃料債務は消滅せず、転借人は転貸人に賃料を支払うべきこととなる。そして、転貸人が賃貸人に対して賃料を支払ったか否かは転借人において明確に認識し得るものではないから、常に二重払いの危険を負うこととなる。借地借家法が制定されるなど経済的弱者である賃借人を保護する現行法制の下でこのような解釈を採用することは困難である。
さらに、また、転借人の負担する義務は、転貸借の目的物の範囲内で転借人が転貸人に対して負担する義務を負担するものと解するのが相当であるが,本件のように数室を一括して賃貸したり建物を一棟貸ししたりする場合、転借人と賃貸人との間において、転借にかかる建物部分に相当する賃料額について争いが生じるおそれ(面積比によるのか階層などの効用も考慮するのか)があり、このような場合、転借人が二重払いの危険を負担することとなるし、転借賃料を転貸人と賃貸人に分割して支払わなければならないことになるなど、実際上の不都合もある。あるいは、転借人に対する賃貸人の賃料債権が優先する要件として賃貸人の請求があったことを要するものとする必要があろうが、賃貸人がいったん自己に支払うよう転借人に請求すれば以後賃貸人の請求権が優先するとするのは転貸人の地位をあまりに脆弱なものとすることとなるし、個別に請求する必要があると解したとしても将来の賃料について一括して請求することができるのでは同様の問題が生じてしまうなど、解釈上の不都合もある。
以上によれば、賃貸人の転借人に対する賃料請求が転貸人の転借人に対する賃料請求に優先するものと解することはできず、賃貸人の転借人に対する賃料請求権と転貸人の転借人に対する賃料請求権とは連帯債権類似の関係になるものと認められる。

【東京地裁平成26年8月26日判決】
民法613条1項は,契約関係のない転借人が賃貸人の所有物件を使用収益するため,賃貸人を保護するために,適法に成立した転貸借契約においては,転借人が賃貸人に対し直接の義務を負うことを定めるが,同条文の趣旨からすると,転借人が賃貸人に対し,直接の義務を負う範囲は,賃料支払義務,用法遵守義務違反,目的物返還義務などの賃貸借契約における本質的な義務を念頭に置いているというべきである。
かかる同条文の趣旨と,本件賃貸借契約における使用相当損害金の定め及び解除違約金の定めは,損害賠償額の予定であって,契約当事者間のみによって効力を有し,第三者を拘束しないことからすれば,仮に,本件転貸借契約における使用相当損害金及び解除違約金の定めが,本件賃貸借契約における当該定めよりも加重されていたとしても,賃貸人である原告が,転借人である被告に対し,民法613条1項に基づき,本件賃貸借契約における使用相当損害金の定め及び解除違約金の定めに従い,直接に請求することができるとまでは解することはできない。

【東京地裁平成27年7月6日判決】
※転貸借契約上「毎月末日までに翌月分を銀行送金の方法で支払う」との約定があった事案。

転借人は,賃貸人に対し,直接,転借料又は賃料のうち金額の少ない方を支払う義務を負うところ(民法613条1項前段),転貸人に対する転借料の前払をもって賃貸人に対抗できない(民法613条1項後段)から,被告は,転借料の弁済の抗弁を主張するためには,支払った転借料がどの月の分のものであったかを明らかにした上,支払われた時期が当該賃料の応答月の前月の末日以降であったことを主張しなければならないが(民法613条1項後段の「前払」にあたるか否かは,本件転貸借契約において定められた支払期が基準とされるべきであるが(大審院昭和7年(オ)第200号同年10月8日第4民事部判決・民集11巻1901頁),被告は,その主張をしていない。
したがって,被告の抗弁は,主張自体失当でもある。

4.賃貸借終了後の転貸借の効果
賃貸人Aの承諾を得てBが適法にCに転貸した後で,AB間の賃貸借契約が終了した場合,BC間の転貸借契約に及ぼす効果は,AB間の賃貸借契約の終了原因ごとに異なります。

(1) 期間満了(期間の定めある場合)
AB間の賃貸借契約が期間満了により終了した場合(当事者のいずれかが借地借家法26条1項本文の更新拒絶通知をした場合),原則として,賃貸人Aが転借人Cに対しその旨を通知後6か月経過すれば,賃貸人Aは転借人Cに対し明渡請求することができます(借地借家法34条参照。また,賃貸人からの更新拒絶による期間満了の場合につき『判例タイムズ1429号(244頁)』「賃貸人からの更新拒絶の場合において,正当事由(その判断にあっては,借地借家法28条が明文で転借人の事情も考慮すべきとしている。)があると認められるときは,賃貸人の正当な権利行使という意味で債務不履行解除と共通することから,当事者の恣意による終了とまではいえない」参照,賃借人からの更新拒絶による期間満了の場合につき【東京高裁平成11年6月29日判決】【東京地裁平成22年6月25日判決】)。

なお,借地借家法34条に基づく6か月前通知は,賃貸人Aから転借人Cに対しする必要があり,賃借人(転貸人)Bからの通知では,同条の通知としての効力はありません(稻本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法(第4版)』〔日本評論社 2019年〕291頁)。

【借地借家法34条】
1 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。

2 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。

【東京高裁平成11年6月29日判決】
借地借家法34条は、1項で「建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了…によって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。」と定め、2項で「建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。」と規定する。
右の規定は、当該転貸借が賃貸人の承諾を得た転貸借である(賃貸人の承諾を得ない建物の転借人は、同条の規定をまつまでもなく、そもそも賃貸人に対抗することができない。なお、民法612条参照。)こと及び賃貸借が期間の満了によって終了するときは転貸借も履行不能となって終了することを前提にしながら、建物の転貸借に限ってその転借人に不測の損害を与えないように、賃貸人の通知義務及び転貸借の終了時期を定めたものと解される。
そうとすると、建物の賃貸人は、賃借権の放棄(民法398条参照)、賃貸借の合意解除(民法538条、545条1項但書)など信義則上建物の転貸借関係を終了させるのを相当としない特段の事情がない限り、賃貸人は、建物の賃貸借の終了をもってその転借人に対抗することができると解される。

⇒但し,上告審である【最高裁平成14年3月28日判決】では,「(賃貸人が)転貸借を承諾したにとどまらず,転貸借の締結に加功し,転貸部分の占有の原因を作出した」という事情を考慮し,「更新拒絶の通知をして賃貸借が期間満了により終了しても,信義則上,賃貸借の終了をもって転借人に対抗することはできない」とし,結論として転借人に対する明渡請求を認めなかった。

【東京地裁平成22年6月25日判決】
建物の賃貸借において適法な転借人が存在する場合,賃貸人が賃貸借契約の更新を拒絶するには,賃借人及び転借人との関係で借地借家法28条所定の正当の事由が認められることを要する。
これに対し,同条は,その文言からして,賃貸人による更新拒絶等に関する規定であるから,賃借人が賃貸借契約の更新を拒絶した場合においては,上記正当の事由が問題となることはなく,賃貸借の終了を転借人に対抗することが信義則上相当でないというべき事情がない限り,同法34条所定の通知をすることによって,これを転借人に対抗することができると解するのが相当である。
被告は,転貸人(賃借人)が,転貸借契約の更新を拒絶し得る正当事由がないにもかかわらず,本来更新することのできる原賃貸借について敢えて更新の権利を放棄することは,転借人に対する義務違反である旨を主張するが,賃借人が賃貸借契約の更新を拒絶することが転借人に対する転貸借契約上の債務不履行となり得るとしても,そのことと賃貸人が賃貸借契約の終了を転借人に対抗できるか否かは別の問題というべきであるから,上記判断を何ら左右するものではない。

(2) 解約申入(期間の定めない場合)
期間の定めなき賃貸借契約が解約申入れにより終了した場合(借地借家法27条1項),原則として,賃貸人Aが転借人Cに対しその旨を通知後6か月経過すれば,賃貸人Aは転借人Cに対し明渡請求することができます(借地借家法34条参照。また,賃貸人からの解約申入れ又は賃借人からの解約申入れいずれの場合も【東京地裁平成30年5月30日判決】参照)。

【東京地裁平成30年5月30日判決】
借地借家法34条の規定は,建物の転貸借契約が賃貸人の承諾を得たものであること及び当該賃貸借契約が期間満了又は解約申入れにより終了するときは転貸借契約も履行不能となって終了することを前提にしつつ,転借人に不測の損害を与えないように,賃貸人の通知義務及び転貸借の終了時期を定めたものと解される。
そして,借地借家法34条は,賃貸人による解約申入れと賃借人による解約申入れとを特段区別せずに,賃貸人から転借人に対する通知から6か月が経過することによって転貸借契約が終了すると定めていることからすれば,賃借権の放棄や合意解除と認められる場合など,信義則上建物の転貸借関係を終了させるのを相当としない特段の事情がない限り,賃貸人は賃借人の解約申入れによる賃貸借契約の終了をもって,その転借人に対抗することができると解される。

⇒但し,結論として,賃借人からの解約申入れにつき「実質的には合意解除に近い」として「特段の事情」を認め,解約申入れによる終了をもって転借人に対抗することができないとし,その結果,賃貸人は,「転貸人としての地位を引き継ぐ」と判示。

(3) 債務不履行解除
AB間の賃貸借契約について,Bの賃料滞納等を理由にAが債務不履行解除した場合,原則として,賃貸人Aが転借人Cに対し明渡請求した時点で転貸借契約が履行不能により終了し,賃貸人Aは転借人Cに対し明渡請求することができます(民法613条3項但書。【最高裁平成9年2月25日判決】)。

なお,借地借家法34条は,「期間の満了又は解約の申入れによって終了するとき」の規定であり,AB間の賃貸借契約が債務不履行解除により終了する場合には適用されませんので,転借人に対する6か月前の通知は不要となります(【最高裁昭和39年3月31日判決】)。

【民法613条3項】
賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない

【最高裁昭和39年3月31日判決】
基本たる建物賃貸借が過怠約款に従い賃借人の債務不履行によつて解除に帰したときは、借家法四条(現借地借家法34条)を適用する余地なく、同法条の適用あることを前提とする上告人の主張は採用できないとした原判決の判断は、正当として肯認できる。

【最高裁平成9年2月25日判決】
賃貸人の承諾のある転貸借においては、転借人が目的物の使用収益につき賃貸人に対抗し得る権原(転借権)を有することが重要であり、転貸人が、自らの債務不履行により賃貸借契約を解除され、転借人が転借権を賃貸人に対抗し得ない事態を招くことは、転借人に対して目的物を使用収益させる債務の履行を怠るものにほかならない。
そして、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合において、賃貸人が転借人に対して直接目的物の返還を請求したときは、転借人は賃貸人に対し、目的物の返還義務を負うとともに、遅くとも右返還請求を受けた時点から返還義務を履行するまでの間の目的物の使用収益について、不法行為による損害賠償義務又は不当利得返還義務を免れないこととなる。
他方、賃貸人が転借人に直接目的物の返還を請求するに至った以上、転貸人が賃貸人との間で再び賃貸借契約を締結するなどして、転借人が賃貸人に転借権を対抗し得る状態を回復することは、もはや期待し得ないものというほかはなく、転貸人の転借人に対する債務は、社会通念及び取引観念に照らして履行不能というべきである。
したがって、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了すると解するのが相当である。

(4) 合意解除
AB間の賃貸借契約が合意解除(AB間の任意の合意で解除すること)された場合,原則として,賃貸人Aは転借人Cに対し明渡請求することはできません(民法613条3項本文。【最高裁昭和37年2月1日判決】)。

もっとも,債務不履行解除が可能な状態で敢えて合意解除の形式をとったに過ぎない場合は,前述(3)の債務不履行解除の場合と同様,賃貸人Aは転借人Cに対し明渡請求することができます(民法613条3項但書。【最高裁昭和62年3月24日判決】)。

また,賃借人Bの退去が近く予想されたことから,賃貸人Aが,当該予想された賃借人B退去までの期間に限り特に転貸を承諾し,転借人Cもこれを了承していたという事情が認められる場合には,合意解除であっても,賃貸人Aは転借人Cに対し明渡請求することができると考えられます(【最高裁昭和31年4月5日判決】)。

例えば,賃貸人Aが賃借人Bから転借人Cへの転貸を承諾する時点で,すでに近い将来AB間の契約が終了しBが退去することが予定されており,かつ転借人Cがそのことを知った上で「AB間の賃貸借契約が終了した場合には,その終了原因を問わず(合意解除による場合であっても),BC間の転貸借契約も当然に終了し,直ちに建物を明け渡す」旨の承諾書を差し入れていた(あるいはBC間の転貸借契約で特約されていた)という場合には,合意解除を転借人Cに対抗できる(明渡請求できる)余地があると思われます。

【最高裁昭和31年4月5日判決】
近く予想せられたB【※賃借人】の本件家屋退去に至るまでの間を限って、その家屋の一部の転借につき、上告人の代理人に対し承諾を与えたものであつて、上告人側も当初より右事実関係を了承していたものであることがうかがえるから、上告人の転借権が、被上告人とB【※賃借人】との賃貸借の終了により消滅するとした原判決には、所論のような経験則違背はなく、また民法一条違反も認められない。
※【 】内は筆者加筆。

【最高裁昭和37年2月1日判決】
賃借人が賃借家屋を第三者に転貸し、賃貸人がこれを承諾した場合には、転借人に不信な行為があるなどして賃貸人と賃借人との間で賃貸借を合意解除することが信義、誠実の原則に反しないような特段の事由がある場合のほか賃貸人と賃借人とが賃貸借解除の合意をしてもそのため転借人の権利は消滅しない旨の原判決の見解は、これを正当として是認する。

【最高裁昭和62年3月24日判決】
賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、これが賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において法定解除権の行使ができるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず、したがって、転借人に対して賃貸土地の明渡を請求することはできないものと解するのが相当である。

(5) 約定解除(中途解約)
中途解約条項に基づく賃借人からの約定解除(予め契約書で「契約期間中であっても賃借人は3か月前に通知することで賃貸借契約を解除できる」等と定められている場合の解除)の場合,実質的には,賃借権の放棄に近く,賃借人が自由に(恣意的に)操作できる事情による契約終了という意味で合意解除とも共通するため,転借人には対抗できない(賃貸人Aは転借人Cに明渡請求できない)と解されます(民法398条趣旨類推。なお,賃借権の放棄につき田山輝明ほか編『新基本法コンメンタール 借地借家法』〔日本評論社 2014年〕215頁)。

【民法398条】
地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。

(6) 倒産解除
賃借人(転貸人)Bが破産手続開始決定を受けBの破産管財人が破産法53条1項により賃貸人Aとの間の賃貸借契約を解除した場合または賃借人(転貸人)Bが民事再生手続開始決定を受け再生債務者として民事再生法49条1項に基づきAとの間の賃貸借契約を解除した場合も,(あくまで私見ではありますが)賃借人の意思と無関係に強制的に解除されてしまう債務不履行解除の場合と異なり,賃借人(破産管財人または再生債務者)には解除するかどうかの選択権を与えられているにも関わらず敢えて解除を選択したという意味で,賃借権の放棄や合意解除と同視することができますので,やはり転借人Cには対抗できないと解されます。

なお,この場合,賃借人(転貸人)Bの破産管財人や再生債務者たるBは,転貸人としての立場でCとの間の転貸借契約のほうを破産法53条1項あるいは民事再生法49条1項により解除することも通常できません(破産法56条1項,民事再生法51条,借地借家法31条)。

また,賃貸借契約においていわゆる倒産解除特約(賃借人が破産申立をしたとき又は破産手続開始決定を受けたときは賃貸人は賃貸借契約を解除できるとする契約条項)も,裁判実務の大勢は概ねこれを無効と解しています(破産の事案につき賃貸借契約の解除特約の効力を否定した【最高裁昭和43年11月21日判決】【東京地裁平成21年1月16日判決】【東京地裁平成23年7月27日判決】,会社更生の事案につき所有権留保付売買契約の解除特約の効力を否定した【最高裁昭和57年3月30日判決】,民事再生の事案につきリース契約の解除特約の効力を否定した【最高裁平成20年12月16日判決】参照)。

従って,賃貸人Aは,賃借人Bが破産や民事再生の申立をしたことのみを理由として倒産解除特約に基づき賃借人Bとの間の賃貸借契約を解除して,転借人Cに対抗(明渡請求)することもできません。

もっとも,賃借人Bが破産や民事再生等の倒産手続の申立をした時点で,すでに賃料を相当額滞納している場合は,賃貸人Aは,賃借人Bとの間の賃貸借契約を上記(3)の債務不履行解除することで,転借人Cに対抗(明渡請求)することが可能です。

【破産法53条1項】
双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。

【破産法56条1項】
第五十三条第一項及び第二項の規定は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する契約について破産者の相手方が当該権利につき登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えている場合には、適用しない。

【民事再生法49条1項】
双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、再生債務者等は、契約の解除をし、又は再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。

【民事再生法51条】
破産法第五十六条、第五十八条及び第五十九条の規定は、再生手続が開始された場合について準用する。この場合において、同法第五十六条第一項中「第五十三条第一項及び第二項」とあるのは「民事再生法第四十九条第一項及び第二項」と、「破産者」とあるのは「再生債務者」と、同条第二項中「財団債権」とあるのは「共益債権」と、同法第五十八条第一項中「破産手続開始」とあるのは「再生手続開始」と、同条第三項において準用する同法第五十四条第一項中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同法第五十九条第一項中「破産手続」とあるのは「再生手続」と、同条第二項中「請求権は、破産者が有するときは破産財団に属し」とあるのは「請求権は」と、「破産債権」とあるのは「再生債権」と読み替えるものとする。

【借地借家法31条】
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

【最高裁昭和43年11月21日判決】
建物の賃借人が差押を受け、または破産宣告の申立を受けたときは、賃貸人は直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、賃貸人の解約を制限する借家法一条ノ二の規定の趣旨に反し、賃借人に不利なものであるから同法六条により無効と解すべきであるとした原審の判断は正当。

【最高裁昭和57年3月30日判決】
買主たる株式会社に更生手続開始の申立の原因となるべき事実が生じたことを売買契約解除の事由とする旨の特約は、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ窮境にある株式会社の事業の維持更生を図ろうとする会社更生手続の趣旨、目的(会社更生法一条参照)を害するものであるから、その効力を肯認しえないものといわなければならない。

【最高裁平成20年12月16日判決】
本件リース契約は,いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約であり,本件特約に定める解除事由には民事再生手続開始の申立てがあったことも含まれるというのであるが,少なくとも,本件特約のうち,民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする部分は,民事再生手続の趣旨,目的に反するものとして無効と解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。
民事再生手続は,経済的に窮境にある債務者について,その財産を一体として維持し,全債権者の多数の同意を得るなどして定められた再生計画に基づき,債務者と全債権者との間の民事上の権利関係を調整し,債務者の事業又は経済生活の再生を図るものであり(民事再生法1条参照),担保の目的物も民事再生手続の対象となる責任財産に含まれる。
ファイナンス・リース契約におけるリース物件は,リース料が支払われない場合には,リース業者においてリース契約を解除してリース物件の返還を求め,その交換価値によって未払リース料や規定損害金の弁済を受けるという担保としての意義を有するものであるが,同契約において,民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする特約による解除を認めることは,このような担保としての意義を有するにとどまるリース物件を,一債権者と債務者との間の事前の合意により,民事再生手続開始前に債務者の責任財産から逸出させ,民事再生手続の中で債務者の事業等におけるリース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせることを認めることにほかならないから,民事再生手続の趣旨,目的に反することは明らかというべきである

【東京地裁平成21年1月16日判決】
(「賃借人が解散,破産手続開始,その他の倒産手続の申立てがあったとき何等の催告なしに賃貸借契約を解除することができる」との条項につき)「平成16年法律第76号により当時の民法621条が削除された趣旨(賃借人の破産は、賃貸借契約の終了事由とならないものとすべきこと)及び破産法53条1項により破産管財人に未履行双務契約の履行・解除の選択権が与えられている趣旨に反するものとして無効というべきである」と判示。

【東京地裁平成23年7月27日判決】
(「賃借人が破産の申立てをしたときは、賃貸人は、通知催告なくして直ちに賃貸借契約を解除することができる」との条項につき)「借地借家法二八条の規定の趣旨に反して建物の賃借人に不利なものであるから、同法三〇条により無効と解すべきである」と判示。

5.転借人に賃貸借契約終了を対抗できる場合の効果
賃貸人が,賃貸借契約の終了を転借人に対抗できる場合,賃貸人は転借人に対し賃貸物件の明渡しを請求することができますが,あえて賃貸人が明渡請求をせずに転借人に対し引き続き賃借権(使用収益)を認めることは自由ですので,原則として,賃貸人が明渡請求をした時点で,転貸借契約も履行不能により終了します(【最高裁平成9年2月25日判決】)。

そして,転貸人は「転貸借契約に基づき転借人に物件を使用収益させる」という債務を負っていますので(民法601条),賃貸借契約が終了したことで転借人が賃貸人から明渡請求を受けた場合,転貸人に賃貸借契約の終了原因につき帰責事由があれば,転貸借契約の債務不履行として,転借人に対し損害賠償義務を負うことになります。

従って,転貸人(賃借人)の賃料滞納等の債務不履行により賃貸借契約が解除された場合はもちろんですが,合理的理由なくあえて転貸人(賃借人)の側から更新拒絶や解約申入をしたことにより賃貸借契約が終了したような場合も,賃借人として賃貸借契約を終了させる選択をしたこと自体が帰責事由となり,転貸人は,転借人に対し,債務不履行に基づく損害賠償義務を免れないと考えられます(【東京地裁平成23年12月20日判決】)。

【民法601条】
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

【最高裁平成9年2月25日判決】
賃貸人の承諾のある転貸借においては、転借人が目的物の使用収益につき賃貸人に対抗し得る権原(転借権)を有することが重要であり、転貸人が、自らの債務不履行により賃貸借契約を解除され、転借人が転借権を賃貸人に対抗し得ない事態を招くことは、転借人に対して目的物を使用収益させる債務の履行を怠るものにほかならない。
そして、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合において、賃貸人が転借人に対して直接目的物の返還を請求したときは、転借人は賃貸人に対し、目的物の返還義務を負うとともに、遅くとも右返還請求を受けた時点から返還義務を履行するまでの間の目的物の使用収益について、不法行為による損害賠償義務又は不当利得返還義務を免れないこととなる。
他方、賃貸人が転借人に直接目的物の返還を請求するに至った以上、転貸人が賃貸人との間で再び賃貸借契約を締結するなどして、転借人が賃貸人に転借権を対抗し得る状態を回復することは、もはや期待し得ないものというほかはなく、転貸人の転借人に対する債務は、社会通念及び取引観念に照らして履行不能というべきである。
したがって、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了すると解するのが相当である。

【東京地裁平成23年12月20日判決】
被告は,自らに帰責性が存在しないことの根拠として,賃貸借契約を更新するか否かは賃借人が自由に選択し得るものであり,これにより転貸借契約が終了するに至る事態は転借人において甘受すべきものであることを挙げる。
しかしながら,賃貸借契約の終了による転貸借契約の帰すうについては被告主張のとおりであるとしても,そのことが直ちに被告の転貸人としての債務不履行責任を否定し又は軽減させるものでないことは明らかであり,むしろ賃借人として賃貸借契約を終了させる選択をしたことが,転貸人としての債務不履行責任の根拠となる場合もあり得ることからすれば,被告の挙げる事由は,被告に帰責性が存在しないことの根拠となり得るものではない。

6.転借人に賃貸借契約終了を対抗できない場合の効果
賃貸人が賃貸借契約の終了を転借人に対抗できない場合,例えば合意解除した賃借人は転貸人の地位から離脱し,賃貸人がその地位(転貸人の地位)を承継します。

従って,転貸借契約の契約内容(賃料、存続期間等)がそのまま賃貸人と転借人との間の契約内容となります【東京高裁昭和38年4月19日判決】【東京高裁昭和58年1月31日判決】【東京地裁平成22年3月31日判決】前掲【東京地裁平成30年5月30日判決】【東京地裁令和2年2月6日判決】)。

なお,これに対し,【東京地裁平成28年2月22日判決】は,賃貸借契約の契約内容のほうが賃貸人と転借人との間の契約内容になるかのような判示をしておりますが,この事案は,賃料や存続期間等の条件が賃貸借契約と転貸借契約とで同一であったため,あまり深く吟味・考察されずに判示されたものと思われ,一般的な結論とはいえません。

【東京高裁昭和38年4月19日判決】
家屋の賃借人において該家屋の全部又は一部を賃貸人の承諾をえて他人に転貸したのち、右賃貸借が賃貸人と賃借人(転貸人)の合意によつて解除された場合には、他に特段の定めがない限り、賃貸人は右賃貸借の消滅を理由として転借人の該家屋に対する使用収益権を否定することができない反面、爾後転貸人(賃借人)と転借人間に存した転貸借関係は当然賃貸人と転借人間に移行し、賃借人であつたものは右転貸人たる地位から離脱し、賃貸人において右地位を承継することになるものと解するのが相当である。

【東京高裁昭和58年1月31日判決】
土地所有者が地上権者との間の地上権設定契約の合意解除の効果をその土地の賃借人に対抗し得ない場合における右三者間の法律関係については、土地所有者、地上権者間では当該地上権は消滅するが、賃借人に対する関係では賃借人のために地上権が従来どおり存続すると解すべきではなく、地上権者は右契約関係から離脱して、地上権者と賃借人との間の賃貸借関係は当然に土地所有者と賃借人との間に移行し、土地所有者において従前地上権者が占めていた賃貸人たる地位を承継するものと解するのが相当である。

けだし、土地所有者と地上権者は地上権を合意により消滅させたものであるから、賃借人のためにとはいえ、当該地上権がなおも存続すると解した上、右合意解除の当事者である当該地上権者が地上権関係及び賃貸借関係の両面の当事者として関与する結果となることを認めるのは、土地所有者と地上権者の意思に反することとなって妥当ではないというべきである。

また、賃貸借契約は当事者の信頼関係を基礎とするものであるところ、右のように解するときは、土地所有者とその土地の賃借人との法律関係が土地所有者と地上権者との間においてはその合意により既に消滅したものとされる地上権を介する間接的なものになると解することとなって相当でないし、じ後の三者間の法律関係をいたずらに複雑化するものであって妥当とはいい難い。

しかも、この場合には、地上権設定契約の合意解除の効果を賃借人に対抗し得ないとされるのであるから、賃借人の従来の地位に影響を与えることを認めるべきでないことは当然であるが、他方土地所有者としては、地上権を設定した以上地上権者が当該土地を他に賃貸することをあらかじめ承認していたものといわなければならないから、賃借人の権利を基礎づける自己と地上権者との間の契約関係を消滅させた以上は、じ後賃借人との間に直接の賃貸借関係が生ずることを受忍すべきものとするのが相当であると考えられるからである。

もっとも、このように解するときは、地上権の存続期間と賃借権の存続期間とが同一でなく、後者の存続期間が前者に比較して長期である場合に問題を生ずることがあることは否定し得ない。

しかし、土地所有者としては、地上権を設定した以上は、地上権者がその土地を他に賃貸する時期や賃貸借契約の内容によっては、そのような事態を生ずることも当然予想し得ることである上、当該賃借権が建物所有を目的とするものである場合には、地上権の存続期間が満了した場合であっても、賃借人がその土地の使用を継続し、しかも建物が存するときは、土地所有者において自らその土地を使用する必要があるなどの正当の事由に基づき遅滞なく異議を述べない限り、右地上権は前契約と同一条件で更新されることになる(借地法八条、六条)のであるし、実際上もいったん借地権が設定された以上は更新を重ねる例が多いのであるから、土地所有者が当該地上権の存続期間満了を機に賃借人の使用継続に対して異議を述べる機会を失うことになることを考慮にいれても、土地所有者の利益を不当に害するものとはいえない。

更に、賃借人は、賃貸人が地上権者から土地所有者に変更されることによる影響を受けることとなるのであるが、このようなことは、賃借土地の所有者が交代することによって一般に生じ得る事態であるから、特に賃借人に対して実質的な不利益を与えるものとはいえない。

【東京地裁令和2年2月6日判決】
本件権利放棄は合意解約と趣旨を同じくするものであるから,原告らは被告らに対して賃貸借の終了をもって被告らに対抗できない。
そして,このような場合においては,自らの関与しない事柄により転借人の地位に変動を及ぼすのは相当でないため,特段の事情のない限り,転貸借が存続し,賃貸人が賃借人の地位を引き継ぐものと解するのが相当である。

 結論

以上より,頭書事例では,原則として,賃貸人Aは転借人Cに対し明渡請求することはできませんが,Bにおいて賃料滞納等がありAが債務不履行解除することも可能な状況において敢えて合意解除を選択したに過ぎない場合には,Cに対し明渡請求することができます。

 実務上の注意点

7.例外的事案
以上が,契約終了原因に応じた一応の原則的帰結となりますが,実務上は,事案によっては,原則通りにいかないこともあります。

例えば,仮にBC間の転貸がいわゆる一括借上型サブリースの場合(AB間の賃貸借契約が転貸を前提に締結されている場合)で,当該賃貸借契約が,各室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れ,賃借人(転貸人)から安定的に賃料収入を得る目的で,当初から転貸を予定して締結され,オーナーたる賃貸人が,単に転貸を承諾したにとどまらず,転貸借契約の締結に加功したといえる場合には,合意解除の場合はもちろん,AB間の契約が期間満了債務不履行解除により終了したとしても,信義則上,AはCに対し明け渡しを請求することはできないと解されます(賃借人からの更新拒絶による期間満了の場合につき,前掲【最高裁平成14年3月28日判決】【東京地裁平成28年2月22日判決】,賃貸人からの債務不履行解除の場合につき『ジュリスト平成14年重要判例解説』参照)。

また,賃貸人からの更新拒絶について,賃借人が正当事由を争わず漫然とこれを受け入れた場合には合意解除と同様に扱うべきとの見解(幾代通ほか編『新版注釈民法(15)』〔有斐閣 1996年〕737頁以下)や,賃借人からの更新拒絶について,転借人の立場を不利にするため実質的には合意解除と異ならず,合意解除に準じて扱うべきとの見解(幾代通ほか編『新版注釈民法(15)』〔有斐閣 1996年〕739頁)もあります。

この点,期間の定めのない賃貸借契約の賃借人からの解約申入れにつき,前掲【東京地裁平成30年5月30日判決】も,結論として,「解約申入れは,実質的には合意解除に近い」として転借人に対する明渡請求を認めませんでした。

そのため,多湖・岩田・田村法律事務所でも,転借人に対する6か月前通知で当然に明渡渡請求できるかどうか判断する際には,単に更新拒絶か解約申入れか等の形式的な契約終了原因のみではなく,契約終了に至った経緯等に鑑みて実質的に判断するよう助言しております。

8.リースバックの場合
令和2年4月1日施行の改正民法605条の2第2項では,いわゆるリースバックに関する規定が新たに設けられました。

リースバックとは,賃貸物件を売却してその所有権が移転しても,賃貸人の地位の移転はさせずに,新所有者が旧所有者から購入した物件を旧所有者に賃貸する旨合意し,それを旧所有者がエンドユーザーに転貸する形を採ることをいいます。

例えば,BがCに賃貸中の物件をAに売却した場合,本来的には,Bの賃貸人の地位はAに移転し,以後はAC間に賃貸借関係が生じますが,リースバックの場合は,BがAに物件を売却するのと同時にAがBに物件を賃貸するため,形式的には,A→B賃貸,B→C転貸という形になります。

この場合において,通常の転貸借契約の規律を当てはめてしまうと,仮にAB間の賃貸借契約がが債務不履行解除されると,CはAから明け渡しを請求される羽目になります。

しかしながら,通常の転貸借契約の場合は,A→B賃貸が先でB→C転貸が後という時系列になり,いわば転借人Cは転貸であることを承知の上で(AB間の賃貸が債務不履行解除されれば明け渡さなければならなくなることを覚悟の上で)転借しているといえるのに対し,リースバックの場合は,B→C転貸が先でA→Bが後という時系列になりますので,後から入ってきたAB間の事情によりBC間が終了してしまうとすると,Cにとっては,不測の損害を被ることになります。

そこで,リースバックの場合は,「賃貸借が終了したとき」は,その終了原因を問わず(合意解除でも債務不履行解除でも),AがBの転貸人としての地位を承継し,以後はAC間で賃貸借契約が継続する(AはCに明渡請求できない)こととされました。

【民法605条の2】
1 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。

9.借地上の建物賃借人の場合
借地上の建物の賃貸は,借地自体を賃貸しているのではなく,あくまで借地人所有の「建物」を賃貸しているに過ぎないため,借地の「転貸」とはなりません(【神戸地裁平成3年12月20日判決】)。

もっとも,建物賃借人の保護という観点からは,転貸借における転借人の保護と類似するため,原則として,転貸借と同様の規律が妥当し,土地賃貸人(土地所有者)は借地契約の合意解除による終了の効果を借地上の建物賃借人には対抗できないと解されています(【最高裁昭和38年2月21日判決】)。

また,土地賃貸人(土地所有者)が借地上の建物賃借人に,借地契約の終了を対抗できる場合でも,借地上の建物賃借人が,借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合には,裁判所は,当該建物賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲で,土地の明渡に相当の期限を許与することができます(借地借家法35条)。

【借地借家法35条】
1 借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

2 前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。

【最高裁昭和38年2月21日判決】
上告人(土地賃貸人)と訴外D(土地賃借人)との間で、右借地契約を合意解除し、これを消滅せしめても、特段の事情がない限りは、上告人は、右合意解除の効果を、被上告人(建物賃借人)に対抗し得ないものと解するのが相当である。
なぜなら,上告人と被上告人との間には直接に契約上の法律関係がないにもせよ、建物所有を目的とする土地の賃貸借においては、土地賃貸人は、土地賃借人が、その借地上に建物を建築所有して自らこれに居住することばかりでなく、反対の特約がないかぎりは、他にこれを賃貸し、建物賃借人をしてその敷地を占有使用せしめることをも当然に予想し、かつ認容しているものとみるべきであるから、建物賃借人は、当該建物の使用に必要な範囲において、その敷地の使用收益をなす権利を有するとともに、この権利を土地賃貸人に対し主張し得るものというべく、右権利は土地賃借人がその有する借地権を抛棄することによつて勝手に消滅せしめ得ないものと解するのを相当とするところ、土地賃貸人とその賃借人との合意をもつて賃貸借契約を解除した本件のような場合には賃借人において自らその借地権を抛棄したことになるのであるから、これをもつて第三者たる被上告人に対抗し得ないものと解すべきであり、このことは民法三九八条、五三八条の法理からも推論することができるし、信義誠実の原則に照しても当然のことだからである。

【最高裁昭和41年5月19日判決】
土地賃貸借契約の債務不履行解除事由があった場合ににつき,「地主と借地人との間の)「合意解約を以て、地上建物の賃借人に対抗できる特別事情にあたる」と判示。

【神戸地裁平成3年12月20日判決】
賃貸借契約においては、「賃借人は賃貸人の承諾あるに非さればその権利を譲渡し又は転貸することを得ず」と民法に規定されているが、その場合における譲渡又は転貸とは、法形式にかかわらず第三者をして賃借物につき独立に使用収益する地位を得させ、又はそのための独自の占有を得さしめることと解される。
従って、勿論、土地の賃借人が借地上の建物自体を賃貸し、その付随的範囲において土地の利用を許容することは土地の転貸借とはならないことは明らかであるが、建物所有目的の土地賃貸借においては、賃借人は原則としてその所有する建物を介してその敷地たる土地を支配しているのであるから、第三者に当該建物自体の所有権を法的にではなくても事実上譲渡したと評価しうるときには、右民法所定の譲渡又は転貸に該当するものと言わなければならない。

10.賃貸管理業法の制定
実務上,承諾転貸の場合,頭書事例でいうAB間の賃貸借契約を「マスターリース」,BC間の転貸借契約を「サブリース」と呼びます。

個人で土地を所有するオーナーにサブリースを業とする不動産業者が,「あなたの土地にアパートを建てて,アパート経営しませんか?」と勧誘し,その際,「弊社が一括で借り上げするので,空室が生じたとしても,家賃は保証されます」などと説明したものの,数年後に,中途解約されたり,賃料減額請求を受けたりして,「保証される」と言われたはずの賃料が入ってこなくなるという事態が社会問題となりました。

そこで,令和2年12月15日,賃貸住宅管理業適正化法が一部施行され,サブリース業者に対し,誇大広告等の禁止(法28条),不当な勧誘等の禁止(法29条),特定賃貸借契約の締結前の書面の交付(法30条)等,マスターリース契約の適正化のため規制が設けられました(令和3年6月15日全面施行)。

また,賃貸住宅管理業を営む管理戸数200戸以上の事業者に国土交通大臣への登録が義務付けられるようになり,これに合わせて,国交省においてサブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン等が策定されています。  

11.転使用貸借の場合
A→B→Cと転貸された場合,A→BあるいはB→Cが賃貸借ではなく,無償すなわち使用貸借(民法593条)だった場合も,賃貸借と同様の規律になるのか問題となります。

まず,B→Cが使用貸借だった場合には,Cの転使用借権は,無償である以上,有償である賃借権と同等の保護を及ぼすべきではなく,A→Bが賃貸借か使用貸借かに関わらず,賃貸借と同様の規律は妥当しないと考えられます。

従って,A→Bが契約解除されれば,それが債務不履行解除であった場合はもちろん,合意解除であっても,Aは転使用借人であるCに対し,対抗できる(明渡しを請求できる)と解されます(【東京地裁昭和26年6月2日判決】【東京地裁令和2年11月27日判決】)。

これに対しB→Cが賃貸借だった場合には,たとえA→Bが使用貸借であったとしても,A→Bが賃貸借だった場合と同様の規律が妥当し,A→Bが債務不履行解除された場合は,Aは転借人であるCに対し,対抗できますが(明渡しを請求できますが),A→Bが合意解除された場合は,Aは転借人であるCに対し,対抗できない(明渡しを請求できない)と解されます。

なぜなら,このように解しないと,AがCに賃貸しようとする場合に,子会社や親族等の関係者Bを便宜上形式的に介在させることで,賃借人を保護する法律上の規律を潜脱することが容易に可能となってしまうからです。

したがって,B→Cが賃貸借契約である場合には,A→Bの使用貸借契約が合意解除されたとしても,民法613条3項本文の類推適用により,AはCに対し,対抗できない(明渡しを請求できない)と解されます。

【民法593条】
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

【民法613条3項】
賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。

【旧借家法4条】
1 賃貸借ノ期間満了又ハ解約申入ニ因リテ終了スヘキ転貸借アル場合ニ於テ賃貸借カ終了スヘキトキハ賃貸人ハ転借人ニ対シ其ノ旨ノ通知ヲ為スニ非サレハ其ノ終了ヲ以テ転借人ニ対抗スルコトヲ得ス

2 賃貸人カ前項ノ通知ヲ為シタルトキハ転貸借ハ其ノ通知ノ後六月ヲ経過スルニ因リテ終了ス

【東京地裁昭和26年6月2日判決】
被告Cの本件転借は、前認定によれば結局賃貸人の承諾のある適法のものと言えるが、被告等の転貸借が無償のものであることは、当事者間に争いがないから、右転貸借が有償のものであることを前提とする(借家法の根本理念から見て)同法第四条の適用は、本件の場合には、ないものと言えるから、原告より被告Cに対し被告Bに対する賃貸借終了の事実を通知したと否とを問わず被告Cも原告と被告Bとの間の賃貸借契約の終了により,これと同時に本件建物を使用する権原を失ったものと称すべきである。従つて被告等に対し本件建物の明渡しを求める原告のこの請求部分は正当である。

【東京地裁令和2年11月27日判決】
被告がBから本件車両の利用権限を付与されていた点を,期間の定めのない使用貸借契約とみる余地があるとしても,本件解除の時点では,保険会社として代車の提供を相当とする期間も既に経過し,Bは被告に対し本件車両の返還を求め得る地位にあったと認められるから,転使用借人である被告が,有償の転貸借の場合と同様に,本件契約の合意解除を対抗されないなどの保護を受ける地位にあったとは解し難い

※本頁は多湖・岩田・田村法律事務所の法的見解を簡略的に紹介したものです。事案に応じた適切な対応についてはその都度ご相談下さい。


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